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チートだったら神さまになれるって本当ですか?  作者: 上野史華
チートだったら生徒会長になれるって本当ですか?
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外の風

「これより、スイ・アマミの最終アビリティチェックを行います。」


機械的な声が鳴り響き、広い室内競技場は張り詰めた空気で満たされていた。

そこにはただ一人、銀髪の少女が佇み、瞳を閉じてその瞬間を待つ。

彼女の周りには50頭ほどの魔物が放たれ、奥には微動だにしない巨大な人型の機械が聳え立つ。機械的な声がはじまりを宣言する。

「それでは、アビリティチェックを開始します。」

合図とともに、少女は長いまつ毛をゆったりと持ち上げ、エメラルドグリーンの瞳を自らに駆けてくる魔物に向ける。


「開始。」


その瞳がゆらりと動く。

少女に襲い掛かろうとしていた魔物は、上空から降り注いだ透明な鋭利な物体に貫かれ、バタバタと倒れその活動を停止する。

魔物たちが倒れていくのを尻目に少女は巨大なロボットの頭上にいた。重力をそのまま体にうけ、髪を逆立てながら落ちていく。手に透き通るような刃を持ち、その機械を中心を貫き分断する。

ただの巨大な鉄の塊になったそれは重量に逆らうことなく音を立てて倒れる。

少女の周りには50体の魔物の死骸と真っ二つに壊れた機械が地面にひれ伏していた。


「スイ・アマミ実践測定終了。レベルアルファ。タイムは1分14秒です。」

機械的な声と共に室内の明かりがともる。

白衣を着た人々が画面を熱く見つめていた。画面の光によって彼らの存在が強調され、その光に当てられながら次々と言葉を発する。

「いつ見ても信じがたいアビリティだな…。」

「第二位を寄せ付けない記録であることに間違いはない。」

「あぁ、人類の進歩の象徴、ダブルアビリティを持つ限り彼女が他者に劣ることはないだろう。」

「だが、このところ成長は見込めない。やはり室長のいう通り次のプランを進めるしかないな。」

「そうだな。この神の贈り物を人類で成長させなければ。」


そう議論する白衣の人々を痩せ型の男性が見つめながらゆっくりと口を開く。

「…“いつだって人間とは先を見たいと、どこまで人類は成長できるのかと探究してしまう生き物“ですね。」

たどるように紡がれた言葉は誰に届くこともなく、ただ発したその男性の耳にだけ反響する。


白衣の人々は変わらず、画面を見ながら熱く話しているが、少女に近寄るものはいなかった。少女はただ一人その場を離れるように立ち去るだけだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

…何年振りの外だろう。薬品と機械がつまったこの建物からやっと外に出られる。


銀髪を短く切った中性的な少女と白衣を着た女性が殺風景な廊下を歩く。廊下には無駄なものがなく、彼女たちの足音だけがその廊下に生気を与える。


「久々の外だなぁ…」

無機質な廊下を白衣の女性につられられて、少女はつぶやく。

「…嬉しそうじゃないのね。」

「なんか、わからないんだよね。外ってどんな感じだったっけって。嬉しいはずなんだけど、ザワザワするって言うか…」

「緊張してるの?」

珍しいと白衣の女性がコロコロと喉を鳴らし、その様子に少女がムッとしたように言い返す。

「そりゃ緊張もするよ。外に出るのほんとに久々だから。いつから出てないのか覚えてないし…」

「6年よ、9歳の頃からここにいたんだから」

6年と伝えた白衣の女性は懐かしむような、後悔してるようなそんな目線を遠くに投げかける。

その姿を少女は悲しそうに見つめていた。

「6年…長かったなぁ」

少女は思い返すように虚空を見る。そのエメラルドの瞳には無機質な天井だけが映っていた。


「この扉を開けたら外よ。」

扉の前で立ち止まり白衣の女性が少女に伝える。少女が強張った表情でその扉を見つめ、小さく唾を飲む。


無骨な鉄のドアが威圧感を感じさせる。ドアノブに手を伸ばし、ひんやりと冷たい鉄が指先に触れる。


さっきから胸の中を動き回っているザワザワが強くなってきた。ああ、やっぱり緊張してるんだな。そんなこと思いながらドアを開いた。


「…っ」

最初に感じたのは風。

冷たくまだ誰にも触れていないようなそんな風が頬を撫で、朝日の白い光がまだ動き出してない街を優しく照らしている。


肌から胸に、目から胸に、鼻から胸に。

風が、光が、匂いが入ってくる。


与えられたたくさんの刺激に胸が埋め尽くされる。


「どう?外は」

「きれい…こんなにきれいだった…?」


ただただ街を見つめることしかできなかった。

白い優しい光が私を迎えいれてくれるような暖かな感触を肌で感じる。

ついさっきまで緊張でざわめいていた胸が生きていることを実感させるようにドクドクと大きく鼓動している。胸がはち切れそう。膨れ上がった感動が身体をめぐっていた。


あぁ、私はこの世界を嫌いになることはできないな。大きな鼓動に当てられてそんなことを考えた。

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