表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

ミカミとハサミは使いよう

「そういえば、光先輩の信仰を使って、ミサキ先生が信仰を持っているのか調べることはできないんですか?」


 みのるの質問に、光は怪訝な表情をしたあと、納得したように頷いた。


「そうだ、説明してなかったね。他の信仰の影響下にある人は、相反する性質を持つ、別の信仰で上書きすることはできないんだよ。信仰が影響を与える条件から引き離して、影響が弱まるのを待ってから、というやり方では上書きできるけど」


「となると、ミサキ先生が信仰を持っているから耐性があるのかは、わからないということですか」


「そうだ。相反する信仰でなければ、上書きではなく『重ねがけ』が出来るんだが、光の信仰はそのあたりが難しいんだ。例えば、『死体への認識を阻害される』ことと『正義』は相反しない。


 だが、今回は『子どもの親にネグレクトさせてまで、自分に関心を向けさせられる』ことと『それに疑問を抱かない』という、『正義』に反するような内容だ。『重ねがけ』はできないから、調べるのには使えないな」


「そういうことでしたか」


 光の信仰は、良くも悪くも、与える影響が大きいのだ。

 他人を操れるようなポテンシャルがある一方で、『重ねがけ』には向いていない。三上の信仰と『重ねがけ』が起きたのは、三上の信仰が、『重ねがけ』に非常に向いている信仰だったからだ。


 みのるは塩飴をひとつ口に含んだ。甘みと塩気があいまって、脳の疲れを癒してくれる気がした。


「それじゃあ……隔離してしまいましょうか」


 何気なく、そう呟いた。


「……どういうことだ?」

「他人に影響を与えるタイプの信仰持ちから切り離せばいいんですよ。光先輩の信仰の影響下にある人、ミサキ先生に関する信仰の影響下にある人。それら全てから引き剥がして、まだまっさらな人のいる場所に連れて行きます。そこで、周囲の反応を見ればいいんです」


 みのるは紙を用意し、そこに書き込んでいく。


「影響の大きさと、間接的である度合いを指標にします」


 光先輩、三上先生、ミサキ先生(信仰持ち)、ミサキ先生(信仰持ちではない)。

 この四つを書き出す。


「影響の大きさにおいては、こうなります」


 光先輩、ミサキ先生、三上先生。


「光先輩の信仰の影響力はトップクラスでしょう。相手の価値観から行動から、変えてしまうんですから。次はミサキ先生。人を集めることに加えて、その状況をおかしいと思わせない、認識阻害も持ち合わせています。で、最後は認識阻害だけの三上先生」


 撫子が感心したように「ほう」と声を漏らした。


「次に、間接的な度合いを比べます。より直接的な方を前におくと、こうなります」


 光先輩=ミサキ先生(信仰持ち)、三上先生=ミサキ先生(信仰持ちではない)。


「自分の周囲の人間に影響を与えるタイプ、何かしらの条件を満たした人・物を引き金とするタイプですね。これを参考にして、条件の複雑さを比べます。より影響力があり、より間接的な信仰は、より条件が複雑になると捉えれば……」


 ミサキ先生(信仰持ちではない)≧光先輩>ミサキ先生(信仰持ち)≧三上先生。


「三上先生の、『死体を見せる』だけで影響を与える信仰。おそらく、これが一番条件の軽いものになります。そして、光先輩の『本人を見せ、かつ声を聞かせる』これが中間に位置するものになるかと。つまり、ミサキ先生(信仰持ち)の条件は、この中間程度の、比較的軽いものになるかと」


「いっそ、それだけ軽い条件になれば、本人もコントロールできずに影響を振りまきそうだね。そして、ミサキ先生(信仰持ちではない)になると、通りすがりの人全てに影響を与えるような、無差別な状況は起きづらいのかも」


 言葉に出しながら考えを整理する光に、みのるは重々しく頷いた。


「こう考えれば、シチュエーションを予め設定して、そこにミサキ先生を釣り出せば……」

「判断がつく、ということか」


 光と撫子の表情が明るくなった。


「でかしたぞ、みのる君!」


 常人には反応できない速度でにじり寄って、撫子はみのるの頭を抱きこんだ。

 一瞬ゴキリと鳴ってはいけない音がしたが、不死者には無関係。格闘家よりも強い力で弾力の中に吸い込まれ、顔を真っ赤にしてもがく。


「よしよし、わたしからも褒めてつかわそう」


 光がみのるの頭を撫でながら、双丘から逃れようとする口に塩飴を詰め込んだ。

 嬉しいんだか恥ずかしいんだか。そして甘いんだかしょっぱいんだか、わからない感覚の中で。

 それでもみのるの脳内では、どこか冷えた部分が次の策を練り続けていた。

少しばかり複雑になってしまい、すいません。

すっきり明快に書けるように精進します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ