召集令状
二年ぶりに…
「どうしましょう…」
サフィーナは、一枚の紙切れを見つめて悩んでいた。先日、先触れもなくフィニアスが男爵領を訪れた時も戸惑ったが、今回の手紙は、さらに頭を悩ませるものだった。
先日、フィニアスが男爵領を訪れたから、この召集令状…もとい、お茶会のお誘いなんてものが、サフィーナのもとに届いたのだろうと、サフィーナは、思っている。
フィニアスの男爵領訪問は、まったくもって甘さの欠片さえ、見ることができなかったが、そんな事、この手紙の主には関係の無いことなのだろう。
「出なければならないであろう…」
サフィーナの困惑声に答えるように、父である男爵が呟く。父の隣に座って、手紙を見つめていた母も、暗い表情だ。
サフィーナは、あの婚約が決まったあの日…家に帰り、両親にフィニアスの境遇を話したのだった。もちろん、フィニアスの母が、他殺だったことは、ふれずに…。自分はフィニアスの仮初めの婚約者であり、両親にそれを話したら、後戻り出来なくなると思ったからだ。それに、両親を巻き込む事は、サフィーナにはどうしても出来なかった。だが、両親は、現王妃(元側妃)がフィニアスを虐げている事を、サフィーナの話から感ずいてしまったのだ。
「…そうですよね…。侍女と一緒に…とは書いてあるけど、アビーに行かせるのは酷だわ」
実は男爵家、本当に使用人が少ないのだ。だが、皆、男爵家に仕えたくないという訳ではない。男爵家で仕事をするよりも、男爵領を潤して男爵家を支える事に力を注いでいるのだ。それは、やはり、男爵家が男爵領の民の事を大切にしていることが皆、充分わかっているからだ。なので、通常の男爵家であるなら使用人は最低でも30人いるところを、わずか10人できりもりしているのだ。使用人の内訳は、執事、侍女長、料理長、料理人見習い二人、侍女見習い二人、下男三人だ。ルーベン家に支える者達は、ほとんどが身内だ。執事と侍女長が夫婦であるのは、もちろんの事、料理長は、侍女長の兄。見習い二人は、料理長の息子二人。侍女見習いは、執事の妹達の娘であった。下男も前男爵の友人三人で、すでに結婚して子供もいるが、その子供達は、成人し、すでに男爵領を離れ、別の領地で結婚し、下男として働いているのだ。
「セシルかソニアに、行ってもらうか…」
セシルとソニアは、侍女見習いで執事の妹達の子供、二人共12才だ。まだこの春支え始めたばかりで、侍女としての役割を果たしていない。二人は、男爵領で育ったため、一通りの教養はあるが、侍女としてまだまだである。先日、フィニアスが男爵領を訪れた時など、侍女見習いだというのに、仕事をほったらかして、フィニアスの後を追い回そうとしたのだ。もちろん、執事と侍女長がそんな事を許すはずもないが…。
「お言葉ですが、旦那様、まだあの子達には無理です」
「…やはり無理か…」
「はい」
小さな紙切れを5人で眺め、ため息をつく。
「…レム・フォード家の侍女の方をお借りするのは、流石にダメですよね?」
サフィーナがダメ元で両親に訪ねると、両親が驚いた。
「流石にそれは…無理だろう」
男爵の一言でサフィーナの案は、一瞬で消え去った。
「…私、一人でも大丈夫だと思いますが…。侍女を連れて行かないと失礼にあたりますかね?」
サフィーナがまた新しい案を出す。侍女を連れて行かないと言う選択肢は、男爵とて、考えなかったことではない。只、王宮の茶会…王妃の招待に侍女を連れて行かないとなると、蔑んでみられる事は、確実だ。
「失礼には…あたらないとおもうが、お前が蔑んでみられる事になるぞ」
サフィーナとて、それは承知の上だ。だが、そもそも行きたくもない茶会に行かなければいけない上に、侍女見習いの彼女達どちらかを連れて行くこと等、考えられない。アビーについてきてもらうのも、同様だ。
「それは…仕方ありません。ですが、私がそのような事を気にすると思いますか?」
サフィーナが男爵に問うと、意表をつかれた男爵がふと考えて、苦笑いした。
「いや…。思わないだろうな」
小さな紙切れを眺めてため息をついていた皆がつられて笑い出す。
サフィーナは、目立つ事は、イヤだが、細かいことは気にしない。今、一番の悩みは、茶会に参加しなければいけないことだ。
あの…フィニアスを追い込んだ元側妃に会わなければいけない事だった。
お久しぶりすぎて、更新欄からみにいらして下さった方に大感謝です…。
次…の投稿があるかは微妙…。この話もさげようか悩んでおります。
いま…新しいお話をつい書き始めてしまって…そのうえ、皆様もご存知のとおり、書くのが遅い私なのです。途中でやめたくなるかもですが…。
私がロム専門になりつつあったこの二年間に世の中が随分かわってしまいました。
コロナ禍でこの先どうなってしまうのか…。
次回更新(もしくは、新連載)する時には、コロナがおさまってるといいなと思いつつ




