The Secret of the Sleepless Forest★
迷路を抜けた先に広がるのは、薄暗くも美しい森だった。
木々の葉は淡く光り、風に揺れるたびに小さな光の粒が舞い上がる。
「眠らない森」と呼ばれるこの場所では、昼も夜も関係なく、世界が生きているようにざわめいていた。
「……すごい……」
アレンは息を呑む。
星のように光る葉の隙間から、ホワイトの金色の瞳が見つめ返してくる。
「君の目には、どう見える?」
「……夢みたい……」
ホワイトは微笑み、アレンの手を握った。
その温かさが、闇に包まれた森でも安心感をくれる。
でも、胸の奥は高鳴り、甘くて少し苦しい。
「ここには、不思議な住人たちが住んでいる」
ホワイトが指さす先には、小さな妖精のような生き物たちが光をまとい、ふわふわと飛んでいる。
「彼らは、この森を守ってる。……君をも、ね」
アレンは戸惑う。
この世界の“守られる”という感覚は、現実では味わえないものだった。
胸の奥のざわつきが、ますます強くなる。
「でも……なんで俺なんだ?」
「君は、特別だから。鍵だから」
ホワイトの声は低く、真剣で、耳に届くたびに胸が締め付けられる。
その瞬間、後ろからチェシャの声が響いた。
「おっと、二人だけで甘えてんじゃねぇよ」
振り返ると、紫色の瞳をしたチェシャが、木々の間からひょいと顔を出す。
「僕にも見せろよ、君の“鍵”としての力」
アレンの心臓がドキッと跳ねる。
手の温もりも、視線の鋭さも、どちらも逃したくない気持ちでいっぱいだ。
「……チェシャも……」
アレンはつい小さく呟く。
するとチェシャはにやりと笑い、両手を広げるようにして森の中を駆け回った。
ホワイトはアレンの手を軽く握り直す。
「焦らなくていい。君の心のままに、選べばいい」
アレンはその言葉に少し救われ、でも迷いも増す。
ホワイトのやさしさ、チェシャの刺激。
どちらも拒めず、でもどちらも欲しい――。
森の奥から、ふわりと光の道が伸びる。
その先には、森の秘密を知る住人が待っているらしい。
アレンは、ホワイトの腕の中で小さく頷いた。
「……行こう」
ふたりの前を、チェシャが軽やかに飛び越え、森の闇を照らす光の中へ走る。
夜はまだ深く、甘く、そして少し危うい。
ワンダーランドの不思議は、まだ始まったばかりだった――。




