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ワンダーランド・ボーイ  作者: 櫻木サヱ
白兎に出逢う日

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9/31

The Secret of the Sleepless Forest★

迷路を抜けた先に広がるのは、薄暗くも美しい森だった。

木々の葉は淡く光り、風に揺れるたびに小さな光の粒が舞い上がる。

「眠らない森」と呼ばれるこの場所では、昼も夜も関係なく、世界が生きているようにざわめいていた。


「……すごい……」

アレンは息を呑む。

星のように光る葉の隙間から、ホワイトの金色の瞳が見つめ返してくる。


「君の目には、どう見える?」

「……夢みたい……」


ホワイトは微笑み、アレンの手を握った。

その温かさが、闇に包まれた森でも安心感をくれる。

でも、胸の奥は高鳴り、甘くて少し苦しい。


「ここには、不思議な住人たちが住んでいる」

ホワイトが指さす先には、小さな妖精のような生き物たちが光をまとい、ふわふわと飛んでいる。

「彼らは、この森を守ってる。……君をも、ね」


アレンは戸惑う。

この世界の“守られる”という感覚は、現実では味わえないものだった。

胸の奥のざわつきが、ますます強くなる。


「でも……なんで俺なんだ?」

「君は、特別だから。鍵だから」

ホワイトの声は低く、真剣で、耳に届くたびに胸が締め付けられる。


その瞬間、後ろからチェシャの声が響いた。

「おっと、二人だけで甘えてんじゃねぇよ」


振り返ると、紫色の瞳をしたチェシャが、木々の間からひょいと顔を出す。

「僕にも見せろよ、君の“鍵”としての力」


アレンの心臓がドキッと跳ねる。

手の温もりも、視線の鋭さも、どちらも逃したくない気持ちでいっぱいだ。


「……チェシャも……」

アレンはつい小さく呟く。

するとチェシャはにやりと笑い、両手を広げるようにして森の中を駆け回った。


ホワイトはアレンの手を軽く握り直す。

「焦らなくていい。君の心のままに、選べばいい」


アレンはその言葉に少し救われ、でも迷いも増す。

ホワイトのやさしさ、チェシャの刺激。

どちらも拒めず、でもどちらも欲しい――。


森の奥から、ふわりと光の道が伸びる。

その先には、森の秘密を知る住人が待っているらしい。

アレンは、ホワイトの腕の中で小さく頷いた。

「……行こう」


ふたりの前を、チェシャが軽やかに飛び越え、森の闇を照らす光の中へ走る。

夜はまだ深く、甘く、そして少し危うい。

ワンダーランドの不思議は、まだ始まったばかりだった――。


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