Echoes of the Heart ♡
迷宮の扉を抜けると、柔らかな月光に照らされた広間が広がっていた。
光と影が入り混じり、石畳に映るアレンの影は、まるで彼の心の動きを映すかのように揺れていた。
「……ここ、静かだ」
アレンは小さく呟きながら、周囲を見渡す。
ホワイトやマッド、チェシーたちはどこかに去り、今は自分一人――でも、名前を呼ぶ声や気配は、まだ迷宮のどこかに潜んでいるような不思議な感覚があった。
石畳を踏みしめるたび、月光が微かに揺れ、アレンの胸の奥にも小さなざわめきが広がる。
未知への好奇心、ほんの少しの恐怖、そして、まだ形にならない絆のようなもの――
それらが入り混じって、胸をじんわりと温める。
「……でも、進まなきゃ」
アレンは決意を胸に、ゆっくりと歩みを進める。
水晶のように澄んだ泉が広間の奥にあり、月光を反射して小さな光の波紋を作っていた。
その波紋は、アレンの名前を呼ぶ力のように、静かに広がり、心を少しずつ落ち着かせていく。
手を差し伸べてくれる誰かはいない――それでも、迷宮の中で感じる温かさは、確かに彼の心を守ってくれる。
アレンは一歩、また一歩と進むたび、自分の心の声と向き合い、名前を呼ぶ力の意味を深く実感する。
「……俺、ちゃんと前に進めてるんだな」
小さな笑みを浮かべ、アレンは泉の前で立ち止まった。
波紋に映る自分の姿を見つめ、迷いや不安も、自分の一部だと受け入れる。
広間を抜ける先に、次の扉が揺らめき、月光の反射が柔らかく差し込む。
名前を呼ぶ力と、心に宿る好奇心が、アレンを確かに導いていた。
迷宮の先に何が待っているかはまだ分からない――
それでも、胸の奥に小さな光を感じながら、アレンは歩みを進めるのだった。




