時雨 優奈の場合
※この回には【ダンジョンゲリラ戦闘配信】では入れていない双樹の呟きが入ります。
偶然見つけたソロ配信。
私の配信の様な基本スキルで探索と魔物討伐を行うのではなく、身体強化と便利道具初心者セットを利用して地形や斃した魔物の武器を利用して魔物を斃すソルジャースタイル。
中でも破片手榴弾を使用した戦闘や魔物を捕らえて囮にした地雷攻撃は衝撃の一言だった。
後ろ姿でも分かる。私を救出してくれた女の子だ。
視聴者が居れば賛否両論あるダンジョン攻略だった。
戦い方は魔物の武器を拾えば魔物の機動力を奪い、地面へと打ち斃して首の骨を折って瀕死にさせたり、壁に打ち付けて脳震盪を起こさせたり、多対一の立ち回りが巧みだった。
彼女の名前は双樹。
配信チャンネル名だから間違いない。
ソロ攻略。戦闘時間も早く終わる。それで得られる経験値とボーナスは計り知れない。
実際、彼女の動きはキレが増していた。
一層のボスの打撃戦は息を呑むほどの迫力と緊張感だった。
第五層のゴーレムに種を植え付けて成長させて中から破壊して斃すなんて想像を超えていた。
ゴーレムを斃した彼女が小さく、本当に小さく呟く。
『植物は土を岩をコンクリートを割り開いて芽を出すからゴーレムの弱点かと思った通り』
彼女の行ったのは五行相剋。
基本魔力属性は炎、水、雷、土、風、氷、光・聖、闇。木はそれを成長させる土魔法だ。
戦闘に――わざわざ種を用意して、ボスに種を植え付けて斃そうなんて思いつかない。
正しくはアタッカーやタンクは考えない。
魔法士は考えるかも知れないけれど、特に浅層レベルの魔法士がゴーレムの高速攻撃を掻い潜って罅を入れる攻撃をして、植え付けるなんて出来ない。
賛否両論ある彼女のスタイルはダンジョン探索ではなく攻略だった。
『……誰もが“探索資源回収、確保”って言って攻略から目を逸らしてるから、下層深層の魔力が淀んで変異体が産まれやすくて、下層深層に居場所が無くなった雑魚の変異体が中層浅層に顕れても不思議じゃない。下層深層は蠱毒状態……』
配信を終えた――と思ってマイクだけは切り忘れている彼女の考察はこの国の安定を根底から覆すものだった。
『多数出現のスタンピードも怖いけれど、レイドでも斃せない様な一体が出現する方が遥かに怖い』
それがどんな魔物かは分からない。分からないけれど変異体に私は敵わなかったし、救出と討伐が躊躇われる相手だ。それを遥かに超越した個体なんて現在の中層探索上位ランカーでは手も脚も出ないだろう。
ダンジョンから出てマイクが切れていない事に気付いたのかマイクが切られた。
翌日、この配信は停止になっていた。
配信停止は公式が行う為、彼女の呟きは不都合だったのだ。
彼女の言う蠱毒呪に浸った魔物……有り得るかも知れないと言う不安が胸の裡に広がる。
配信を見た人だけが気付く呟き、と言う風に双樹の台詞を追加しました。




