帰還
墜ちていく。
しかし途中から浮遊する様に降下していく感覚に変わる。
幾つもの薄膜を破る様な感覚。
【索敵】に感あり。
――底に着くから反応があった?
敵の反応の直ぐ側に今にも消えそうな弱々しい反応が一つ。離れていく反応が一つ。
離れていく方はどうでも良い。
――間に合う。間に合わせる。救わないと!
それなら先手必勝、見敵必殺。
千羽天剣流 落陽――
「――天雷」
女の人のお腹の中を弄り回していた鬼の脳天に踵落としを喰らわせ頭蓋を割り、頭を踏み抜き、地面へと叩き付け、顔面を潰し、女性に応急処置を施すと、顎を蹴り上げて、浮いた身体を蹴り抜く。
一命を取り留めた女性を背負いダンジョンを脱出。
医療スタッフに彼女を預けると、探索者ギルドのスタッフと名乗る女性――有川 那里香さんに声をかけられて私は驚いた。
探索者ギルド? 空震? それによって生じたダンジョン? 混乱する私に有川さんが、私について尋ねるので正直に話す。
名前。ダンジョンに顕れた理由、何故帰還出来たのか理由が不明なこと。
名前と保護者で身元確認は出来た。私が【COCOON】消失事件の被害者の一人であること。
有川さんは疑う事なく話を聞いてくれた。
そして現在の日本の事も。
降魔騒乱事変。
探索者養成学校クレイドル。
私の記憶にある日本からすっかり様変わりしてしまった日本。
タブレットに流れる10年間の日本の歩みと探索者の歩みを見ていると私の名を呼び飛び込んで来たのは母さんだった。
有川さんが部屋を出ていき、私は母さんに体験した事を全て話た。
その中には当然私の出自に関する事も含まれている。
それ以上は問わなかった。
問う必要も感じなかった。
探索者ギルドを後にする時、誰もが母さんを英雄として見ていた。
黒塗りの車に乗り、家まで送ってもらい、妹の涼風に抱きつかれて泣かれ、必死に慰めて、夕食を食べて姉妹揃って母さんと眠る。
涼風は学校へ、母さんは超自然現象対策課と言う所に出勤。
私は暇なので住んでいたマンションへ。
部屋に戻ると筐体が在った部屋は伽藍としていた。
当然か。
【COCOON】に戻ることなく帰還したのはゲームの世界ではなく、本当の異世界に居たから。
端末で検索する。
運営を斃せば帰還出来る。
運営の一人、小此見が斃されたと言うアナウンスがあったものの警察は未だに潜伏場所も遺体も発見に至っていない。
他の運営メンバーの潜伏先も同様に分かっていない。
そして様々な分野の人が囚われのプレイヤーを解放しようと日夜頭を悩ませているが解明には至らない。
トレンド。
謎の美少女
時雨 優奈
変異 オーガ
美脚 蹴り
脳天踵落とし
蹴撃 顎粉砕
蹴殺
etc...
私は見るのを止めてタブレットを置いた。
「誰が救出しようと一番大事なのは時雨さんが助かったと言うことでしょう。ならそれで良いんじゃない」
この際戻れた仕組みはどうでも良い。それより私がこの変わってしまった日本に戻って来れた理由はなんだろう。戻されるだけの理由があるはず。
これからどう動くべきか。
探索者養成学校クレイドルに通って学生する?
探索者ギルドに登録して配信者として探索する?
クレイドルではパーティーを組まなければならない。
ソロ探索者の方が楽。
そうと決まれば最寄りのギルドまで行こうと部屋を出た。




