「――っと見つけた……」
有心ははしゃぐあまり、
そこが教室であることも忘れて草薙に飛びつこうとした。
「おい、ひっつくなって。
また女子に変な噂されるだろ」
草薙はそういうと、心底辟易するような顔を見せ、
その手を振り払おうとする。
これには有心も焦りを覚えた。
大事な獲物(草薙)に
逃げられてしまっては溜まったものじゃない。
「あ、つい……ごめんなさい、
草薙先輩と喋りながらシルクエができると思ったらつい……」
有心は眉尻を下げ、肩を落とし、
主人に叱られた犬のような仕草を取って見せた。
そのしゅん…とした態度に
罪悪感が生じたのか草薙は、
「い、いやこっちこそ悪かった。
なんか逢坂には気兼ねしなくていいからさ、
俺の方も遠慮なくて。
なんていうか後輩ってより……」
頬をぽりぽりと掻いて
照れを誤魔化す仕草を取ってみせる。
有心はその一挙一動、
一言半句に全神経を研ぎ澄ませていた。
「後輩ってより……?
草薙先輩、続きはなんですか?」
しかしもう待ちきれないと自分から聞き返してしまう。
我に返って、
しまった焦りすぎたと思った有心であったが、
草薙の方はさして気にすることもなく
「あぁ、そうだな」と頷くだけである。
「逢坂は後輩ってより、なんつーか、こう……お――」
草薙が有心にとって決定的な一言を発しかけ、
有心がそれをギラギラした眼で
見つめていたときだった。
「――っと見つけた……」




