「いきますからゆるしてください」
「はい……って、
さっきのが言うこと聞くじゃなかったんですか?」
「有心は〝言うこと聞く〟
じゃなかったら名前も呼ばせてくれないような子なの?」
からかうまでもなく
素のきょとん顔を向けられた有心に、
やはり反論の余地はなかった。
「……いいえ違います。
じゃあ早く、言うことってのを教えてくださ――」
有心が言い終えぬ間に、
腕を掴まれ強引に引かれる。
「有心への罰は、
ボクのお家に今から来ること、だよっ」
「え! え、いや、それはその……」
男女交際もしたことのない有心は
会って数日の異性の先輩の家に
上がり込むことは躊躇われた。
しかし……
「来ないなら、
詞ちゃんに
『胸当たっただけなのに、
有心に性的な目で見られた……』
って言いつけちゃおうかな~」
「そ、それはやめてください!
い、行きます、行きますからぁぁ……許してくださいぃぃ」
涙を潤ませて許しを乞う有心を見る
玉響の目付きは獲物を見るそれと同じだった。
「ふふふ……
〝いきますからゆるしてください〟
ってなんか受けみたいだね~可愛いよぉ、有心。
やっぱりあなたは最高の受けだよ!!」
玉響は顔に喜色満面をたたえている。
そのとき有心はふと思った、
彼女はいつからこうなのかと。
会って数日だから有心が知るのは
彼女の一面にしかすぎないにしても、
腐女子の顔しか見たことがないだろう。
もし彼女が腐女子じゃなかったら……
「ねえセンパイ、
センパイっていつから腐女子になったんですか?
ていうか、
どうして腐女子になっちゃったんですか?」




