男に告白
「……あぁおはよう。逢坂くん」
一方それを受けた草薙は気怠そうでもなく、
かといって歓迎的にでもなく普通に応対した。
普通の黒髪に、特にこれと言って
手入れしている様子はないがほどほどに整っている髪型。
顔立ちも平凡そのもので骨格も平均的だった。
ブレザーの制服も着こなす高校生。
しかしその横顔には僅かな優しさが窺えた。
彼は手にしていた本から
少しだけ目を離して有心に挨拶を返すと、
また本へと視線を戻す。
若干というべきか、
大分痛い有心の言動も気にしていない様子だった。
しかしこれは、
有心のことを好いているからとかそういう意味では全くない。
それは有心も理解するところだ。
「やだなぁ、草薙センパイ。
名字呼びだなんてよそよそしいじゃないですか。
有心って、名前で呼んでくださいって、いつも言ってるのに」
しかし、有心は不屈の精神、
いやスライム精神で極めて明るく返答する。
まるでそれが自分の売りとでも言わんばかりに。
「まあ……それもそうか。
かれこれ一ヶ月……いやそれ以上になるもんな、
逢坂が急に俺のところへやってきて、
〝僕、草薙先輩に憧れてるんです!
傍にいさせてください!!〟
とかなんとか言ってきて。
あれはマジで驚かされたけど」
「えへへ……」
草薙の発言に有心は言葉を濁して苦笑いする他なかった。
「男に告白されたと思って初めは焦ったけど、
ちゃんと話してみたらそうじゃなかったし、
趣味も合うし……いい後輩だよ、逢坂は」