5話目
あー疲れた!」
曇り空に向かって私は叫ぶ。結局、5時位までかかってしまった。
私と恵は校門に向かって歩き出す。グランドではまだ下級生が遊んでいる。
「いやー!今日も笹本先生は可愛かったね!」
またしても私の親友は恋する乙女の顔をしている。
「ほんと好きだね……」
「恋をするっていうのは理由なんてないの!」
まあ、本人がこうまで言っているんだから外野がとやかく言うのはおかしいだろう。
「でも、祥子も笹本先生のこと嫌いじゃないでしょう?」
「……まあね」
少し空気の読めないことはあるが、悪い人間ではない。腹が立つことも多いが。
恵がニコニコと笑っている。何がおかしいのだ。
「なんでもないよー」
……うっとおしい。話題を変えなければ。
その時、下駄箱から校門へ続く途中にある、トマトが植えてあるはずの畑が目に付いた。
「何あれ……?」
トマトが植えてあるはずの場所にはブルーシートが被せられていた。
「誰かの悪戯かな?」
いや、違う。
「いや、さっき委員長に会った時、あのブルーシートを持っていたから違うと思うよ」
そう、あのブルーシートには覚えがある。
「でも、何のためにあんなことをしているんだろうね」
「明日委員長に聞いてみたらいいんじゃない?」
きっとなにか理由があるのだろう。
「って、委員長に会ったんだ?」
うん、アルコールランプを取りにいくついでに、と恵に答えてやる。
「どんなこと話したの?」
「何って……普通の世間話?」
「へえ……」
少し恵の目が細くなる。一体どうしたのだろう。
「早く帰りましょ!今夜は大雨らしいし!」
しばらく考え込んでいるように見えた恵であったが、顔を上げると、笑ってそう言った。
……よく分からないが、恵がいいのなら別にいいのだろう。
いつものように帰り道に今日会ったことをを話して私たちは帰ったのだった。
次の日に起こる事件など何も知らずに。
次の日、私たち二人が教室に入ると、教室が大騒ぎになっていた。
「僕たちのトマトがああああああ!」
「誰だ盗んだ奴は!」
「これ発表どうするの……?」
話を聞いてみると、どうやらトマトの実が全て切り取られていたらしい。
朝一に畑に行った委員長が最初に見つけたらしく、すっかり放心状態で机に突っ伏している。
「これは……大変なことになったね……」
恵が耳元で囁く。確かに。トマトが無くなってしまったのは個人的には喜ぶべきことだが、楽しみにしていた者もいるようだし、
なにより、学年での発表する時に、トマトは最後には無くなってしまったとはとても言えない。
恵がなにやら考え込んでいる。そうこうしているうちに、チャイムが鳴り、担任が入ってくる。
「ねえ、祥子。後で相談したいことがあるの」
どうしたのか、と私が訪ねる前に恵は自分の席に帰っていった。




