◆episode.05 疑念と憎しみと崩壊◆
一体、いつまで俺はそうしていたのだろう…。
涙は枯れ果て、ただ虚空を見つめていた。
どうしてこうなった…?
一体、何が間違っていた…?
どうすれば…
『彼女を助けられた?』
返ってくることのない問いを…変わることのない現実を…
ただ、自分の中で虚しく響かせる。
ただ、彼女と一緒にいられればよかった…
ただ、彼女と笑い合って、過ごせればそれだけでよかったのに…。
どうしてそれさえも叶えてもらえない…?
神は…運命は…。
…ふと、頭の中に何か過ぎった気がした。
そう…そうだ。
彼女は…シアは…聖女で、全てを疑わずに信じて、
いつも神に祈りを捧げて…
それで…そのせいで…
消えて、なくなってしまったんだ…。
世界から…。
…俺の前から…。
神になんて祈らなければ…
聖女になんて、なっていなければ…。
神への祈りが、一体何を生んだ?
神への信仰が、一体何の役に立った?
ただ、彼女の体を蝕んだだけ…
彼女の魂を削っただけ…。
神は…
この世界は…
本当に『正しい』のか?
俺の最愛の人を奪った、『この世界』は…。
俺から最愛の彼女を奪った神が憎い…。
シアのことを見ていたはずなのに、何もしなかったやつらも、
この世界も全て…。
あぁ…あぁ…そうだ…。
悪いのは、全てあいつらだ…。
人が…
神が…
世界が…
俺から、大切な彼女を奪ったあいつらが…!!!!!
なぜ、あいつらだけがのうのうと生きている?
なぜ、シアだけが死ななければいけなかった?
ただただ、献身的に毎日、神たちに祈りを捧げ、
人々の役に立つならと、聖女の役割を全うし続けたシアが、
なぜ死ななければいけない?
あぁ…そうだな…。
おかしいのは…
『 こ の 世 界 だ 』
シアを死なせたこの世界…。
シアの魂を削り取ったあの神ども…。
なぁ…? なんでシアだけを犠牲にした?
なんでシアだけを死に追い込んだ?
おかしいだろ?
悪いのはお前らなのに。
なんでお前らだけが生き残るんだ?
こんなの…
公平じゃないよな?
そうだ…。
シアだけが死ぬなんて、公平じゃない。
シアを死へと追いやった神が、世界が、
まだここにあるなんて…
それこそあっちゃいけないことだ…。
あぁ…そうだ。
シアを否定したこんな世界なんて…
『 無 く な っ て し ま え ば い い ん だ 』
その瞬間、俺の世界から色が消えた。
赤黒いオーラと、とめどなく溢れる魔力だけが、周囲を満たす。
その鋭く鋭利なオーラが周囲を歪ませ、全てを吹き飛ばしていく。
目の前にあの分厚い魔導書がひとりでに出現し、
自動的にページが捲られてゆく。
巨大な魔法陣が幾十層も出現し、空を覆う。
「紅蓮の業火よ…全てのものに終わりの刻をもたらせろ…
これは俺の…お前たちへの『紅き報復』だ…」
静かに魔導書を天へと掲げる。
「全てを終わらせろ…」
『紅 き 終 焉 の 黙 示 録 (クリムゾン・アポカリプス)』
世界から音が消えた。
眩い閃光とともに、紅蓮の炎が、この世の全てを焼き尽くしていった。
その日、その時…
世界から、全てが静かに消滅した…。
………
……
…




