◆episode.01 ありきたりで幸せな日々◆
※この作品は、心理描写が濃く表現されているため、
ゆっくりと朗読するような早さで読むと、より世界観に没入できます。
『Andante=歩くような速さで』
──どうぞ、お楽しみください。
朝日の差し込む静かで柔らかな朝。
「あぁ…もう朝か…」
俺は徹夜明けの目を擦り、部屋の窓から差し込む朝の日差しを、
ぼんやりと眺める。
(良い時間だな。そろそろ、いつものようにシアを起こしに向かおう。)
汚い字で殴り書きされた分厚い魔導書のページを閉じると、
すっと立ち上がり、部屋を出て、シアの寝室へと向かう。
「シア」
そして、いつものようにドアの前で声をかけ、ドアをノックする。
しかし反応がない。
またかと思い、仕方なさそうにドアノブに手をかけ、
ゆっくりとドアを開ける。
「お寝坊さんか?シア。」
近づいて頬に手を添え、クスッと微笑んで、
愛しい彼女の顔を見つめる。
「うぅん…ラグナ? …ふふ、おはよう。」
可愛らしい身じろぎをして、ゆっくりと目を開けた彼女は、
俺を視認すると嬉しそうに目を細めて微笑んだ。
「あぁ、おはよう、シア。俺の愛しい人。」
そっと彼女のおでこに、優しい口づけを落とす。
「ん…。」
嬉しそうに目を閉じるシア。
(あぁ…本当に俺の愛する人は可愛らしいな。)
そっと彼女の顎に手を添え、
ゆっくりと、慎重に口づけて愛を伝える。
そんな幸せな時間を終えると、二人はリビングへと移動し、
いつものようにパンとスープで朝食を摂る。
「ラグナ、また徹夜したでしょ…」
彼女がどこか呆れた顔で、俺の顔を覗き込んでくる。
「ははっ…まぁな。
今研究してる術式が、良い感じに進められている最中でさ。」
軽く頭を掻きながら答えると、
彼女から呆れたようなため息が聞こえてきた。
「はぁ…。もう、ラグナは夢中になるといつもこうなんだから…。」
「はは、悪いな。
それよりも、今日も、大聖堂へ祈りを捧げに行くんだろ?」
苦笑いをしながら尋ねると、
スープをゆっくりと飲んでからシアが答えた。
「うん。今日も大聖堂で神様に祈りを捧げるの。
これも『聖女』である、私のお勤めだからね♪」
どこか誇らしげに答えるシア。
「なら、いつものように大聖堂まで送るよ、シア。」
「ふふっ。いつもありがとう~ラグナ♪」
にこりと微笑むシア。
朝食を終えると、
王都の郊外にある俺とシアの小さな家を出て、
シアと手を繋ぎ、二人でのんびりと、
朝の陽光で溢れる並木道を歩いていった。
前方に、両親と両手を繋いで嬉しそうにはしゃいで歩く、
小さな男の子のいる三人組の親子の姿が見えた。
「可愛いね~あの男の子。
お父さんとお母さんに手を繋がれて、すごく嬉しそう♪」
前方の親子を見たシアが、柔らかな笑みを落とした。
「そうだな。幸せそうだ。」
俺もそんな親子を見て、目を細めて微笑む。
「あんな可愛い男の子が家族にいたら、毎日楽しそうだね♪
あ…女の子と男の子、一人ずついたら、
もっと楽しいかもしれないね♪」
シアが、とても楽しそうに思い浮かべながら話す。
こういう時の彼女は、本当に可愛らしい。
「あぁ、そうだな。それが俺とシアの子だったら尚更に、な。」
シアのキラキラした瞳を見つめ、柔らかな眼差しで言う。
「本当?!
いつかは…きっと、作ろうね。私たちの幸せな家庭。」
ほんのりと赤くなった頬で、どこか恥ずかしそうに微笑むと、
シアは、俺と繋いでいた手を、よりぎゅっと握った。
「あぁ。焦らなくてもいいからな。
これからも時間はたっぷりあるんだから。
こうやって二人、ゆっくりと過ごしながら、考えればいい。」
そう言って俺は彼女の手を、よりしっかりと握り返して、
想いを伝えた。
「うん♪ じゃあ、ほら、ラグナ。『ゆびきり』しよう♪」
彼女が嬉しそうに空いてる方の手を差し出してくると、
小指を立ててこちらに向けてきた。
「あぁ。ゆびきりな。」
彼女の小さくて可愛らしい小指に、そっと自分の小指を絡め、
シアとのこれからの『素敵な未来への約束』を交わす。
彼女とのこんな幸せな日々が、これからも変わらず、
いつまでもずっと続くと思っていた。
この頃の俺は…。
………
……
…




