自分の価値
ブビィー・・・・ズッズ・・・・・グズッ・・・・・
「落ち着きましたか?シノブさん」
「はい・・・・ご迷惑おかけしました・・・・ぐすん・・・・」
「らしくねぇな、どうした?今日のお前おかしいぞ?いつもはもっと冷静だろうに」
「それは・・・・・・・・・・・・・・・安心してしまったから・・・・・・」
「安心?・・・・・何の事だ?」
「最近ずっと不安でしょうがなかったの・・・・・・・」
「不安って・・・・誰かにつけ狙われているのか!?」
「違う・・・・・・自分に対してよ・・・・」
「どうゆうことか説明していただけますか?シノブさん」
ロナルドから貰ったハンカチで涙を拭い、ようやく落ち着きを取り戻した志信はぽつりぽつりと話し始めた。
「最初の頃はよかったの・・・・エルも私が居なきゃ何にもできないと分かっていたし、頼ってくれて嬉しくて誇らしかった・・・・でも・・・・」
「今は違うと?」
「えぇ・・・今はもう違う・・・・・・エルはCランクまで上がり1人で十分に生きていけるし、友達も知り合いできた・・・・・・・私の知らない事いっぱい覚えて、今も別の町への護衛依頼で他の冒険者とパーティー組んで居ないし・・・・」
「それは冒険者としては・・・それ以前に仕事すれば誰であっても・・・」
「そんな事は分かってる!でも、今の私はエルの足を引っ張っているだけ、エルが私を好いているけどいつかは誰かと恋をして私から離れるかもしれない・・・・・そうなった時、私は彼女の重荷でしかない・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「2年後・・・子供と一緒にレベル上げの儀式を受けてレベルが上がっても、私がまともに生活できるようになるまで10年は掛かる・・・・・・その時エルは今よりずっと強くなって、Aランクにはなってるでしょうし・・・・」
「確かにな、エルフの嬢ちゃんは筋が良い・・・魔法も武器系職業系どのスキルも覚えが早いしAランクに上がるのに2年は掛からんだろうな・・・・」
志信はずっと不安だった・・・・・彼は既に30代半ば、いくら外見が若々しく美しい姿に変身できるといっても、寿命が延びる分けでも無いし筋力や運動神経が若返る事も無い・・・・・
彼がもしアクティブに活動できるのは、およそ10年が精々・・・・・しかし年齢=レベルのこの世界でどんなに効率よくレベル上げしても10年後にLv20前後が関の山・・・・・
その頃にはエルはレベルはもっと上になっているのは当たり前だし、下手したらSランクだって夢じゃない・・・・・そんな彼女がいつまでも自分と一緒に居てくれるだろうか?自分のアドバンテージは他の人より多少長く彼女と暮らしていただけである・・・・・・
そんな志信をエルはずっと好きでいるだろうか?自分より弱く世間も知らずで、不男だった志信を好きでいる訳が無い
所詮、エルにとっては志信は初恋でしかないのだ。志信以上の男など山ほど居るし、何より彼女と一緒に暮らし続ける事はできない・・・・だってエルはハーフエルフで志信は人間なのだから・・・・
そう思うと自分に自信が持てないでいた・・・・何より彼女の足を引っ張る事しかできない自分自身に腹が立ち許せないのだ。
「そんな、もやもやしている時、この子に出会えた・・・・」
「守る対象がいるお蔭で、自分にも価値が生まれると?」
「えぇ・・・・私にはまだ守れる人がいる、偽善だと分かっているけれど・・・でも嬉しかった。泣きながら抱きつくこの子を愛おしく思った・・・・」
「けれど、ようやく手に入れた存在価値の対象であるその子を手放さなければならない事を知って、憤慨した・・・」
「そうゆうこと・・・・タンクスが当たり前の事を言っていたのは自分でも理解できるし、分かっている・・・・けど、感情が抑えきれなかった。」
「それは人として当たり前の感情です。シノブさんは人として正しい事を言ったまでですよ」
「でも、正しいから間違っていないとゆう分けじゃない・・・・」
「しっかし、分からなねぇな・・・・」
「・・・・・・何が?」
「だってよ、今やお前さんは町の人気者だろ?そこまで自分を卑下する事もねぇんじゃねぇか?」
「・・・・人気者?・・・・何処がよ・・・・ただ皆、魅了の効果で騙されているだけで・・・そんなの意味無いじゃない!!」
「それは違いますよ、シノブさん」
「何が違うのよ!」
「貴女の魅了の効果は今は殆ど人に効果が無いのですよ」
「えっ?・・・・・・・だって・・・・皆・・・・」
意外な一言に志信は驚いた・・・・・・町の人が志信に熱狂するのが加護の効果による魅了のせいでは無いと否定されたのだ。
そしてタンクスとロナルドはその理由を話し始めた・・・・
「精神耐性のスキルは取得が容易なんだよ、こ一時間複数人に罵倒して貰えれば誰でも取得できる」
「だから、大抵の人は子供の頃に取得するんですよ」
「取得してしまえば普通の生活でのストレスとかで、かってにレベルは上がるから・・・大体平均レベル4前後は誰でも持っているぜ?」
「じゃあ何で・・・・・・」
「それは皆、純粋に貴女が好きだからですよ」
「確かに最初の騒ぎは、お前の魅了効果で混乱はあったが、効果を抑える魔道具を装備して広場で演説したろ?」
「あの時の貴女を見て皆さんファンになったんですよ、魅了関係無しに純粋に貴女にたいしてね」
「そんなの・・・・・・だって私より綺麗な人いっぱいいるじゃない!そんな話嘘だよ!」
「事実だ・・・あの時の感情任せで泣きながら叫んだ演説で皆、虜になっちまったんだよ」
「そして時折見せるあどけない表情とか、美味しい物を食べた時にやける時とかそういった純粋な感じが好まれているのですよ」
そう・・・真っ直ぐな嘘の無い瞳で2人は教えてくれた。けれど志信の疑問がまだ残っていたそれは・・・・・
「だとしたらどうして皆プレゼントくれるの?魅了でメロメロになっているとか、私と真剣に付き合いたい人がくれるなら分かるけど、男女問わず くれるのよ?おかしいじゃない」
「それは、貴女だからこそ皆さんプレゼントするんのですよ」
「私だから?」
「貴方はギルドと教会にプレゼントを無料で引き渡していますが、それでも自分で使える範囲の物だったら身に着けたり、使用したりしているでしょ?食べ物なんか特にシリエルさんと仲良く食べているようですし・・・・」
「それになぁ、お前さんの指示で食料品・日用品なんかは他の村への支援物資として配っているだろ?そういった気配りってのがな皆の心を擽るのさ、最近じゃ『聖母様』って影では言われてるんだぜ?」
「私はそんなに善人じゃないよ・・・・そもそも支援物資だってギルドが行っていた物だし、それの補填っていうか・・・・そうゆう風に使って言っただけだし・・・」
「そう、その考え方だよ!普通はそういった物を貰う奴は、傲慢になっていったり他人を蔑んだりする」
「けれど貴女はいつまでも謙虚で、しかも手渡した人に感謝し全員の容姿を覚えていて、町で合うと挨拶したりしているでしょ?」
「それは・・・・一応、善意でくれてるし・・・だから最低限はって思って・・・・でも、時計とか宝石とか絵画とか武器とか派手すぎる服とかは全部引き渡していたでしょ?」
「あれは貴族とか商人とかが見栄で贈っている物ですし、最近では殆ど無いでしょ?」
「確かに・・・・最近食べ物が多い理由って・・・」
「そううゆう事ですよ・・・・美味しい物を食べる時、貴女凄く幸せそうな顔をしますからそれがファンにとってとても嬉しいらしいみたいですよ」
そんな話を聞かされて、志信の頬にポロポロと雫が落ちていった・・・・・
「おいおい・・・また泣いてるぞ?どうしたんだ?」
「だって、ヒグッ・・・嬉しくて・・・ズッズ、私・・・わだじ・・・うっ・・・・・」
「もう・・・感情表現が豊かなのは良いことですが、泣きすぎですよ・・・ほら鼻をかみなさい」
「ありがど・・・・ブビー・・ズッズ・・・ロナルド・・・さんって・・ズッズ、何でそんなにハンカチ持っているんですか?」
「ホントどうでもいい所に気がつきますねぇ・・・とりあえず紳士の嗜みって事にしておいてください」
そう言ってにこやかにロナルドのくれたハンカチで涙を拭った。
「さてといい加減本題に入りましょうか」
「本題?」
「この子の事ですよ」
タンクスもロナルドも真剣な表情になり、事の顛末を語り始めた・・・・・・
何だか真面目な話が続きましたが、次回からはもうちょっと砕けた感じになるとおもいます。 ノシ




