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異世界で自由気ままな目録記  作者: MOMO
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旅立ち





 「さて、あまり時間が無いから・・・まず結論から話そう・・・ワシはもう直ぐ死ぬじゃろう」


 突然の話に困惑する二人・・・


 「爺さんいったい何を!」

 「いきなり冗談はひどいぞ!じい様」


 しかし、いたって真面目な顔で爺さんは話を続けた。


 「まぁ、冗談と思いたくなるだろうがこれは事実じゃ・・・本来ハーフエルフの寿命は長くて500~700年生きれば良い方じゃ、しかしワシはすでに1200年も生きておる・・・これにはのうカラクリがあるのじゃよ・・・全ての答えはこの木じゃ・・・」


 そう言われて俺とエルは目の前の白い巨木を見上げた。しかしどっからどう見てもただの木にしか見えない、まぁ周りの木から比べれば巨大すぎるとは思うがそれ以外は普通だ。そしてさらに爺さんは語る・・・


 「この木がモンスターを寄せ付けない結界の様な物を張っている事は教えたが、実はなこの木はモンスターなのじゃよ」

 「「!!!!?えっ!!」」

 「そぅ身構えんでもエエ・・・この木は攻撃は一切できぬ、まぁモンスターと言ったのも正解ではない恐らくっというだけじゃ・・・」


 衝撃的な話に身構え離れようとしたが、爺さんにいさめられ再び座りなおした。


 「この木はのう、ワシがまだこの世界に来て200年ばかり経った時とある依頼で森に入りこの村と木を見つけたんじゃ・・・そしてここに住んでいた者達にこの木の事を教えてもらったのじゃ、この木は皆に聖樹様と呼ばれてのぅ聖樹様と契約すると、どんな病も治り歳をとるのがゆっくりになりそして・・・長寿になれると言われた。最初ワシはたいして関心を示さず依頼の物も手に入れたのでこの村を直ぐ離れたんじゃよ、ファンタジーの異世界じゃしそんな事もあるだろくらいにのう・・・その頃のワシは行商をしつつの冒険者でまだまだ世界を見て歩きたかったし、寿命なんてまだ先だと思っておったからのぅ・・・」


 「そしてワシはこの村のことなど忘れて100年経った頃じゃ、ワシは1人の女性と恋をした。彼女は人間の村娘で親には『ハーフ風情が家の娘に手を出すな!』と追い返されたが、ワシ達はすでに相思相愛じゃった。だから駆け落ち同然で村を出て2人で小さな畑を営みながら暮らしておった・・・しかし幸せは長く続かなかったんじゃ、彼女が病に倒れ手を尽くしたが治す方法さえ分からんかった。ワシは絶望しながらも、どうにか彼女を助けられないか奔走ほんそうしている時この村のことを思い出したんじゃ・・・」


 「あの時はわらにもすがる思いで病で苦しむ彼女をなんとか連れて村に到着しこの木と契約したんじゃ、契約事態は簡単でこの木に血を与えると真っ白な実が生りそれを食べることで契約が完了した。そしてみるみる彼女の肌はキレイになり苦しげな表情が和らぎ、たった3日で普通に歩けるまで回復した。それからワシらはこの村での生活を始めたのじゃ・・・しかしここでの暮らしは大変じゃった。うまい話には裏があるってことじゃな、なんの対価も払わず簡単に病が治り長寿になれるわけではなかった・・・。」


 「この木は自ら動けない代わりに契約した者の頭に直接ある命令をし続ける、それは魔石を持ってこいといった単純なものじゃ、魔石はモンスターを倒すと高確率でドロップするアイテムでギルドに持っていけばそれなりの金額に換金してもらえる物なんじゃが、この木は魔石を栄養としそのエネルギーを使って契約者に長寿や若さをもたらすんじゃ・・・そしてこの効果には範囲がある、その範囲が大体この木から半径10㌔程が範囲となりその範囲から出ると数日後には完全に効果が切れて今までの老化などが一気に襲い架かって来るんじゃ、ゆえに誰もこの森から出ることができなかった。」


 そこまで話すと爺さんは疲れたのか木にもたれる様に座りなおし、再び話し始めた。


 「気づいているだろうが、そんな生活が長続きするわけがないたかだか10㌔以内のモンスターの魔石だけでこの木を維持できぬしリスクのある遠出などするものも少ない、じゃからこの村の者達はこの効果範囲を広げる方法を見つけ出していた。それは・・・契約した者を木にすることじゃった。」


 「志信しのぶもこの村に着くまでの間に森の中でこの木と良く似た若い白い木を見つけたじゃろ?それは元はみんなこの村の者達じゃよ・・・」


 志信とエルは息を呑み、そして絶句した。何故ならこの村の人たちは爺さんやエルいわく長寿がイヤになったり、不便さがイヤで町に戻ったり、やっぱり死ぬ間際には生まれ故郷に帰りたいとか色々な理由で村から出て行ったと聞いていたので驚きを隠せないでいた。特にエルは俺以上に驚いていた。


 「ど、どうして・・・だってじい様・・・みんな・・・皆・・・ここが嫌いになったからってっ」


 「すまぬ、エルよ・・・お前だけには教えずにいて、このことは村の者全員で決めたんじゃ・・・お前だけには悲しむような真実を教えまいとな・・・いつかお前はこの村を出ると皆思っていたんじゃよ、あの時お前を引き取ったころ皆が不安じゃった。この子が大きくなるまで生きていられるか、そしてこの子はこの森を出ることが出来るかとな・・・」


 「モンスターとて生き物じゃ、大量に生まれるといっても数には限りがある・・・ワシらはこの辺りのモンスターは狩りつくし、結果高レベルモンスターばかりになってしまい日々の狩が難しくなった。そこで考えついたのが村人を木にすることだった聞いた。ワシら夫婦が住み始める前からそれは行われていて寿命の終える者から順に木になっていった。木になると、この木の苗木とゆうか、株分けしたことになるのか、どうゆう理屈か分からんが効果範囲が広がるんじゃ・・・無論広がる距離はこの木よりおとり数㌔程度じゃがそのお蔭で妖精の集落や、山を越えたエルフの町にいけるようになりここでの暮らしも多少は楽になった。それにこの聖樹と同じようにモンスターを寄せ付けない結界を張れるので長時間の狩りや遠征する時のセーフティーゾーンとして利用しておったんじゃ」


 「けれど日々の生活は困窮こんきゅうしていった。まぁあたりまえじゃの・・・村人は減る一方にたいして周辺のモンスターは強い者しかおらぬ、結果魔石の供給が追いつかずこの木はだんだんと力が衰え大人数の契約者を維持できなくなり、皆まだ余命はあったがせめてエルが大きくなるまでは誰か1人だけでも生きていなくてならなっかた。そしてワシが皆の推薦で生きることとなったんじゃがもうワシ1人も維持できぬほどに聖樹の力は衰え枯れる寸前じゃ・・・じゃから・・・」


 「だったら今すぐ魔石を私がいっぱい持ってくる!そうすればじい様は!」


 「無理じゃ、お前1人が狩ったところで焼け石に水・・・それにこの木は既に手遅れなんじゃ、いまさら魔石を与えた所で持ち直すことは出来ぬしどうすることもできぬのじゃよ、だから・・・志信よエルを連れて森を出てもらえぬか?」


 ((ッ!!!!?))

 「じい様!何でそんな事!」


 「いいから聞いておくれ・・・エルはこの森から出たことは一度も無いし、村の人間以外に会った事も無い・・・しかしお前さんは異世界といえどそれなりの経験はあるじゃろうし、なによりエル1人だけではこの森から抜け出すことはできぬじゃろう、お前さんスキルとエルの力があれば森から出ることは出来るじゃろうて・・・だから頼む!志信よ、同じ世界出身の好で・・・いや友としてワシの最後の頼みとして聞いてもらえぬか、この木が枯れる前にここを出れば他の木も力は残っておるからそれを経由していけば少ない戦闘で抜けれるはずじゃ・・・」


 「爺さん・・・どうして赤の他人の俺をそこまで信用できるんだ?それに今爺さんは生きているじゃないか!だったら最後まであがいて見せろよ!」


 志信は爺さんに詰め寄りながら声を荒げ、襟首を掴んだ瞬間気がついた。

 「爺さんその腕・・・・」


 爺さんの手足が既に木に変わり始めていた。

 「何で・・・・」

 「ワシが木になることでこの木の寿命はわずかにだが伸びる・・・その為にワシの体に木になる術を掛けたんじゃよ・・・ワシも出来ることならエルをこの手で守ってやりたいと思っておった。じゃがワシの体は既に限界を超えていたんじゃよ・・・お前さんが村に来る数ヶ月前辺りから兆候はあったんじゃ、しかしその時村を出たとしてエルはどうやって生きてゆくのじゃ?金の使い方は分からず、法律や種族間のルールも分からず、ハーフである重圧にどうやって耐えていくとゆうのじゃ・・・しかも森から出ればワシは近くの村に着く前に死ぬであろう事が分かっておるのに、そんな無責任な事はワシにはできなんだ。じゃからせめてもと思い最初のうちはワシの知識を記した本を作りそれを渡すつもりで準備しておったのじゃが、運命とゆうのかそれとも神の悪戯いたずらか・・・お前さんが訪れ、ワシは決めたんじゃこの男にエルをたくそうとな・・・」


 爺さんの体が徐々に木に変わり2人はただただ見つめることしかできないでいた。


 「そんな悲しい顔をするもんじゃない・・・ワシは嬉しいんじゃ、妻も友も皆居なくなってしまったがエルと過ごせたこの30年はとても楽しかった。そして志信のお蔭でエルも笑うようになってくれた・・。3人で過ごしたこの2年余り、本当に幸せじゃった。元の世界では楽しくも無い仕事を黙々とこなす人生だったがこの世界でワシはこれだけの幸せを手に入れることができた。志信、エルよ・・・この世界は広く大きく未知の物で溢れておる・・・じゃからその目で足で世界を旅をし、様々な人と出会い、笑い、泣き、怒り、様々なことを思い自分が悔いの無い人生を歩みなさい・・・そして・・・本当に・・・幸せを・・・あり・・が・・・と・・・・う・・・・・」


 爺さんは微笑みながら真っ白な木となり後ろにそびえる聖樹と一体化した・・・。そしてエルは無言のまま立ち尽くし肩を振るえさせながら家のほうへ駆けていった。






 (まぁ、当たり前の反応だな・・・エルにとって始めての死の体験が身内ってのは、くるものがあるだろうし、色々な事があり過ぎて整理できないだろうし今はそっとしておくか・・・)

 

 「しかし、爺さんもひでぇな・・・全部俺に丸投げかよ・・・たまんねぇよ、ホント・・・」


 志信はそう呟きながら聖樹を見つめ暫くの間立ち尽くしていると不意に後ろからドッスとゆう物音がし振り向くとそこにはエルが大きなリュックを2つたずさえ立っていた。


 「こら!何をグズグズしている、せっかくじい様が作ってくれた時間を無駄にするな!!支度は済んだ。早くこれを持って出るぞ!」

 「エル・・・・」


 彼女の目元は赤く腫れており、今にも泣き出しそうなのを必死にこらえて無理やり強がっていた。そして用意されたリュックには無理やり詰め込んだ鍋や保存食、着替えがパンパンに詰め込んであった。それを見た志信は思わず笑い出してしまった。


 「こっコラ!何を笑っている!?時間が無いんだ急げ!!」

 「ぷっ、フッフ・・・エルこんなに無理やり詰めちゃダメだよ。それに俺のアイテムBOXがあるからリュックは直ぐに使う物だけを入れればいいんだ。ホラもう一度家に行ってきっちり支度しよ?たぶん爺さんのアイテムBOXもあると思うからそっちをエルがもてばいいし、それに地図が無いのにどうやって町まで行くのさ?」


 「うううっ五月蝿うるさい!そんな事言われなくても分かっている!こっこれは、その・・・そう!本当にお前が支度とか出来るのかたっ試したのだ!!」


 恥ずかしそうに顔を染めて反論するエルの瞳にはもう涙は無かった。


 (それじゃあ爺さん行ってくるよ、今日まで色々とありがとう・・・エルとはどうなるか分からないけど、彼女が幸せに暮らせるようにがんばってみるよ、だから安心して眠ってくれ・・・)


 志信はエルをともない聖樹に背を向け家へ歩き始めると、ザァーっと木が揺れ音を奏でた。その音が志信には爺さんが「ありがとう」っと言っているように感じた・・・・。

遅くなりました。裏で新しい小説のプロット作っていたらいつの間にか時間が過ぎていました。次回はもう少し早く上げれるようにがんばります

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