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第三十二話 <無双 その3>

::魔界第一階梯、ディアボルスの魔将軍にございます、以後お見知りおきを::


 全裸で13枚の黒い羽根を持つ少女のような姿をした、最高位の悪魔ディアボルスは、片膝をついてオシリスそっくりの自己紹介をした。


::どうでもいい事ですけど、早く元の姿に戻りませんこと? 目ざわりですわ::

::ヌフフフ、あれは宣伝用よ。バインバインの色気ダダ漏れおねーさんの方が、人間たぶらかすのにはもってこいだったからね、だけど・・・・・・::


 ひどく熱い目をして、ディアボルスはセイジの方を見る。


::ご主人様の前じゃあ、本当の私でいたいじゃーん::

::ぬがああっ、勝手にご主人様とよぶなあああっ!::


「ストーップ、ストーーップ、腕だすんじゃねえええっ!」


 オシリスが4本腕に大剣を持つと、ディアボルスも4本の腕と4つの槍を再生した。セイジがあわてて止める。

 こんなところで最終戦争ハルマゲドンやられてたまるか。それにこいつらが本気で激突したら、対等の存在ゆえに、対消滅してしまう。イーラが消えたりしたら俺はたまらんぞ。


「人を勝手にご主人様呼ばわりするなら、まず迷惑にならんことを考えろ」


 それと、もう一つ気付いたことを付け加える。


「あと、ディアボルス」

::ひゃ、ひゃいっ!::


 いきなり名前を呼んでくれるなど、想定していなかったらしく、カミカミであった。


「一つ取引だ、側にいていいから、恨みは忘れろ」


 とたんに、銀色の目が思いっきりうらみがましく下からねめつける。


::ど、どーしてです。そりゃあ、その取引は受けざるえませんけど、ここの連中なんてクソですよクソ!::


「それには激しく同意するが、魔界最高位のお前の恨みが爆発したら、その影響がどこまで広がるか分からん。天変地異は遠く離れた他の地にも影響が出るはずだ、それは勘弁してくれ、たのむ」


::うにゅううう、そんな『たのむ』なんていわれたら、断れないじゃないですかぁ::


 可愛らしく口を突出しながら、不承不承ディアボルスは同意した。


「それにしても、何でこんなことになってたんだ?」


::話せば長くなりますけどね、オーちゃん::


オーちゃん呼ばわりのオシリスは、苦い顔をしていた。


::事の起こりはこの星域の400周期ほど前です::


 ディアボルスが言うには、その頃、アヴェリンデータの管理者がある失敗をしでかし、自殺に追い込まれた事が原因だった。管理者は同時に変換者の別存在であり、管理者が自殺すれば変換者も消滅してしまう。大変だったのは、その眷属であった神威や魔界の連中で、急変に応じきれなかった眷属は消滅し、間に合った連中は三位体トリプレット四位体カルテットを形成して、お互いを補完しあうことで消滅を防ぎ、何とか急場をしのぎ、神威や魔界のシステムを保ったらしい。それゆえ両者の影響が小さくなり、その分精霊の力が大きくなったのだそうだ。


 大変だったのが、それぞれの1体ずつしかいなかった最上位、オシリスとディアボルスで、単体では消滅することは確実だったので、オシリスは適合する人間の魂の核を元に、自分を存在させるという賭けに挑み、何とか成功した。とはいえ、適合者はその時代に一人ぐらいしかいないので、この400年、極めて分の悪い危険な賭けであった。


::その時に、あたしには適合者がいませんでね、いよいよダメかと思ったら、冥王呪の封印法に囚われて、封じられたのです。たかが人間ごときのね・・・・・・ウフフフフ::


 ひどくたそがれた目をして、薄笑いするディアボルス。彼女にとっては、耐え難い黒歴史なのだろう。

 弱り切っていたとはいえ、ディアボルスを捕えたのは、イングリアンの隣国であるスージス出身の魔導師で、名前は忘れたとのこと。で、そいつは、たまたま人馬族が築いた大帝国ダイガンの末期に研究で来ていて、呪法から得られた力で黄金城をぶったて、一気にダイガンを滅ぼしたのだそうだ。あの黄金城は、その力の象徴であると同時に、彼女の牢獄でもあったわけだ。


::ですけどねー、大帝国を滅ぼせるような力があっても、贅沢病には勝てなかったんですよ::


 酒池肉林の毎日を過ごし、女もとっかえひっかえ、やりたい放題したツケは、わずか3年後に訪れ、女の腹の上で腹上死。あまりに短い絶頂であったために、すぐに大帝国の残滓であった人馬族が再度支配を行い、別の国が出来て、その3年間は無かったことになったのだ。


 当然、その後は城と封印呪の研究は行われていたが、何しろ彼女を捕えた魔導師が、黄金城の使用方法と能力、その一切合財の情報を残さず抱え込んだままあの世に行ってしまったため、全くゼロからの研究で遅々として進まず、200年ほどかけてやっと、封印を封印のまま最終兵器として利用するあの亡者の巨人状態で操作する方法を編み出した。ただ、そのためには10万人近い生贄が必要で、とてもじゃないがやれる手段では無かったのである。


 本来、黄金城は『千年の城』という二つ名があったという。もし、ダイガンを滅ぼすときに使った黄金城の力の半分でも使えたら、いかなる愚物であれ、文字通り千年の繁栄が約束されただろう。ディアボルスが言うには、一年に一度、国土の大半を覆う洗脳を行うだけで、ほぼ全ての民が忠誠を誓うようになったというのだ。そりゃあ国がひっくり返るわけである。ほかにも、身の毛もよだつような様々な機能や力が隠してあった。まあ、中心の彼女がいないのだから、全部パーであるが。


 とはいえ、力と権力の象徴としての黄金城は目立つシンボルであり、政権を握った者は、ここを中心として帝王を名乗るという形が出来たのだった。


「しかし、歴代の為政者でも、あの方法は無かっただろうに、何つー無謀な・・・・・・」

::暗殺してのっとっただけの国ですしねー、いくら殺そうと痛くも痒くもないのです::


 歴代為政者が、末期にどうしても使えなかった最終兵器。それを平然と使う阿呆は、黄金城という権力の象徴に入っていさえすれば、何もかもが自分のものだと思い込む。自国の人間も、他国の領土も金も人間も。

 痛みを感じない人間というのは、もう人間じゃない。そんなもん、獣でも一緒にするなと怒るだろう。そんな連中に、勝手をさせてたまるものか。



 ジャーン、ジャーン、ジャーン、


 話が終った頃、やかましい音が、黄金城のほうから鳴り響いた。

 大門が開いて、音楽を鳴り響かせながら、しずしずと行列が現れる。

 それを見て、その意図を歴史の例から思い当たり、セイジはうんざりした。


「あれか、帝王が儀礼で威圧して何とかしようというわけか。」


 歴史上でこういう時、武力でどうしようもない相手には、儀礼と格式で相手をどうにか威圧して優位に立とうとするもんである。言ってみればコケオドシ。


::あー、もう兵士がいませんねぇ。さっきちらっと聞こえたけど、帝王が出撃命令をだしたら、兵隊たちが全員拒否して逃げ出しました、やってらんねーってね::


 ディアボルスが思いっきり黒い笑いを浮かべて、せせら笑っている。


「アホか」


 さっさと逃げれば良いものを、まだ帝王なんぞという地位や権力でどうにかなると思い込もうとしている。


 ザック


 セイジが歩き出した。


::イーラが、絶対に側から離れないって、言ってますわ::


 オシリスは体を震わせると、20メートルを超える光の巨人となってセイジの後ろに立った。


::んじゃ私も::


 ディアボルスも羽を羽ばたかせ、同じサイズの闇色の巨人となった。

 整然と続いていた楽曲が、激しく乱れ、一斉に途切れた。


 ザック、ザック、


 砂を踏んで、セイジが前に進む。


「そこな者なおれ、チーヤイ大帝王シュウ・コンペイの御前である。」


 恐ろしく太ったひげ面の男が座った輿が現れ、

 役人らしいのが、声を張り上げる。


 ザック、ザック、


 セイジが何の動揺も感情もあらわさず、顔を上げたまま前に進む。


 ズンッ、

 ズンッ、


 左右の光と闇の巨人が、地響きを立てて一歩進む。

 楽曲を鳴らしていた者たちが、まず逃げ出した。

 輿がぐらぐらとゆれた。


「朕はシュウ・コンペイである、無礼であるぞ!」


 メタボも極まった男が、腰の上からだみ声で怒鳴るが、しったこっちゃねえ。


「そこの黒いものは我の物である、礼儀を尽くし、それを返納して、ダレルブレアンに戻るがよい」


 何かたわけた事を叫び始めた。


「他国の者は礼儀も知らぬのか!、朕は帝王であるぞ!、今なら帰る事を許してやると言っておる!!」


ズンッ!

ズンッ!


 足音が地を揺らし、我先にと行列から逃げ出していく。声を張り上げた役人らしいのも青ざめて逃げ出す。


「大臣っ、きさまあっ死刑に処すぞおおっ!」


ザクッ、ザクッ、ザクッ、


 セイジが歩み、巨人がのしかかるように迫ってくる。


「不敬であるぞおっ、きさまあっ、朕の前でそのような態度、礼儀に反する野蛮人がああっ!」


 生まれてこの方、甘やかされ尽してプライドだけのメタボ男は、半泣きになりながらも、まだ何か自分の優位があるとどこかで思い込んでいる。

 輿を担いでいた連中が、とうとう小便を漏らしながら逃げ出し、輿はひっくり返り、メタボ男は道の左側に放り出された。


「きさまあっ、今ならまだ帰らせてやると言うておるであろうがあっ、朕の言う事が聞けんのかあっ!」

「あーーーーーーー、きーーこーーえーーんーーなーーーーーーーーーー!」


 左耳に手を当て、思いっきり笑いをこめて、セイジは言うだけ言うと歩いていく。

 そして、左手の上の空間に思いっきり磁力を集めた。

 

 ゴオッ


 あちこちの地面や砂の中から、細かい砂鉄と、ぶちまけた1千万個の鉄塊が集まり、巨大な球体を作り上げた。それを振りかぶると、正門である楼門めがけたぶん投げた。


 ドゴオオオオオオオオオオオオオンッ


 地球で言う1万トン超の突撃に、4階建てのビルよりでかい楼門は、文字通り粉々に粉砕された。すでに黄金城内は無人に等しい。

 磁力がまた鉄を集めた。セイジが猛スピードで駆け出す。


「や、や、やめろおおおおおっ、やめろ、やめろ、やめっろおおおっ、朕の命令が聞けないのかあああっ!!」


 ドッゴオオオオオオオオオオオオンッ


 数万坪の大天守がぶっ飛んだ。


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ


 数千の女を集めた後宮の建物が消え失せた。


 ドカドカドカドカアアアッ


 無数の楼閣や高く分厚い壁が、片っ端から吹き飛び、粉砕されていく。それは黄金城であったところが、完全にまっ平な平地になるまで止まらなかった。

 セイジからすれば、こんな迷惑なもん、一片たりとも残すわけにはいかない。また、これこそがチーヤイのような、人を人とも思わないゴキブリどもの住み家、ゴミ溜めになってしまう。


『ゴキブリを退治するには、まずゴミ溜めを全部片づけること!』


 おばあちゃんの知恵は、人類共通の宝である。





 うわああああああああ


 破壊と倒壊が完全に終わって、近隣から人が無数に集まり始めた。周辺に住んでいた百万を超える住人たちである。粉砕されたがれきから、金箔や無事だった器物や、使える瓦など、とにかく使える物は何でも拾っていく。その途切れることのない延々と続く集団が、必ず通っていく一角がある。むしろを掛けた小山、今はもう息もしなくなった脂の塊のような巨体。だが、誰もが必ずふみつけていく。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

明日はもしかすると、物理的に(仕事で時間が無くて)更新が無理かもしれません。

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