閑話 実験体
普通の人間が吸血種に変わってからの母体にいるうちから薬物投与などを受けて、いろいろと遺伝子を組み換えを行われていた。 もちろん、母体は苦しんで暴れたが体に回る毒のようなもので動けない。
人は、いつしか人ならざるものを研究対象に見ていたようだ。
産まれた赤ん坊を取り出すと、翠緑の保存溶液に満たされて、そこからも調整を行われた。
魔力薬草などそれを減少させるものなど、いろいろ実験に実験を重ねる。
母体はそのまま牢屋にいれられたらしい。
これが失敗したら次の実験体を産むためにのこしておくためだろう。
液体にみたされたビーカーのような浴槽の中で胎児のように体を丸めて眠る白い髪の少女。
本来の黒髪はもう見る影もどこにもないようである。
「あんまり変化があるようにみえませんね」
「人ではないものとおなじ人ではないものの交配種でも、違いがわかりづらいもんだな」
「次は魔術回路をもつホムンクルスもいれてみましょう」
と、白衣をきた男性たちが少女を見てそんな会話をしていた。
中にいる少女は苦しむように暴れるがそれをただ眺めるだけの白衣をきた人間たち。
人の手にあまるような計画をするために彼らは実行しているのだ。
天使を自分たちの手で作り上げることが彼らの目標である。
様々な母体の遺伝子を組み込んでいくたび少女の体も変化していく。
度重なる実験で少女は疲弊していく、それは無理もない母体から調整し、赤ん坊のときからの調整もあったのだから……。
培養液から出せるくらいになると、特別部屋にいれられて足かせや首枷や手首枷で棒じょうなるものにつなげられてしまう。
白い服を着てぼんやりと宙をみてから数瞬間して寝込んだことがあったが、とくに問題はなかった。
担当の医師?のようなものが来て少女の世話をやくが、胃が受け付けず吐いてしまうこともあった。
それから担当の医師が食事をつくりだし、少しづつだが食べるようになり、体も綺麗に拭いてもらうことが多くなった。
元はただの人間の赤ん坊から人ではないものの遺伝子を組み込んで調整してきた。
血をまぜたり、飲ませたり注射器で注入したりいろいろしてきたのだ。
それがいまになって完成に近づいてきていた。
実験には世話係が連れていくことになっているが、別に嫌がる様子もなくついていく。
世話係は本当ならもう実験をとめたいという気持ちを抱えていた。
そして時がきた………。
それは研究所の終わりの時であった。
時空間にある島の研究所のものが殺戮をうけたのだ。
これは自業自得といえるものであるが……。
少女は世話係に一緒に来てほしいとお願いした。
彼女が一番に心を許せる人物だったから………。
親のことも聞いてきたが、すでに息絶えていると聞かされても表情をかえなかった。
そうなのか、程度のようである。
あまりにも感情が希薄なのは赤ん坊のうちから離したからだろうか。
ちなみに足かせと手枷と首枷は器用に切り取ったそうである。
どうやったのかはわかっていた。手を剣のようなもに変えて斬ったのだろうと。
一度だけ見せてもらったからだ。
爆破のアラームが鳴り響いていることも研究所も資料も始末したと聞いた彼女は彼女の手をとり、研究所というかごから出て行ったのだ。




