最終話「異国の風」
※本作は、
まだ古い学校の空気が色濃く残っていた頃の、
学校空間の記録です。
過去に起きた出来事を、
映像記録のような感覚で綴っています。
当時実際に使われていた方言表現や、
当時の言い回しをそのまま残している箇所があります。
また、
重苦しい描写や精神的圧迫を含む表現がありますので、
苦手な方はご注意下さい。
※当時の空気をそのまま体感してもらうため、
感情表現は極力削り、
事実の断片を中心に並べています。
その後、
私は高校の推薦を受けたが、
不合格となった。
そのため、
一般試験を受けて短大へ進学した。
就職や推薦進学が中心だったため、
一般試験を受ける生徒はほとんどいなかった。
担任が言うには、
私は例外だったらしい。
短大卒業後、
広い世界に触れる転機が訪れた。
身内の節目を祝うため、
私はヨーロッパへ行くことになった。
姉の通訳を通して、
私は高校時代に起きた出来事を話した。
その教師が、
私たちの卒業後、
公立高校へ赴任し、
その後、
組織の階段を上り、
今も責任ある立場にいることも伝えた。
話を聞いた彼らは、
信じられないというように目を見張った。
一人が、
両手を広げた。
そして、
ゆっくりと首を横へ振った。
その姿を見ながら、
私は高校時代を思い出していた。
『単位』
『卒業』
進路に関わる書類。
黒いA4ファイルを手にした教師の姿が、
妙に怖かった。
『謹慎』
『停学』
『退学』
その言葉が出た瞬間、
教室から音が消える。
誰も、
逆らおうとしなくなる。
冷たいコンクリートの階段。
熱に浮かされた体。
荒く途切れる息。
黒いA4ファイル。
泣き声だけが響く教室。
窓の外は、
まだ明るかった。
だけど、
あの校舎の中だけは、
古い時代の空気が、
ずっと薄暗く残り続けていた。
◇
とある一室にて。
カウンセラーが聞いた。
『あなたは、
この出来事をどう思いましたか?』
私は少し考えた。
「自分のことなら、
まだいいんです」
しばらく沈黙が続いた。
「祖父は、
地域のために動いていた人でした」
それ以上は、
言葉にならなかった。
作中では触れていませんが、
推薦に落ちたことについて、
当時、父は、
「高校の力を借りずに進学できてよかった」
と話していました。
当時の私は、
不合格という結果しか見えていませんでした。
しかし今になって振り返ると、
私自身も、それでよかったのかもしれないと思っています。




