第16話 正確無比!信長の狙撃
迷子になった恵と護衛の一行だが、恵のチートスキル「鳥の目」で迷路から無事脱出。護衛の5人は、遠江の井伊谷出身で、4人は鈴木一郎、二郎、三郎、四郎の四つ子の兄弟であった。4人はリーダー格の青年武将を慕っている。あと少しで大高城にたどり着く。その時、霧が晴れて至近距離の背後から信長が現れる。
恵と5人の護衛騎馬武者は三叉路に立つ。恵が西に伸びる道を指差して「大高城まで一本道!」と言い、5頭の馬が西に向いた瞬間、霧がサーッと晴れる。
彼らの背後、約50メートル離れた東の道に黒尽くめの3騎が現れる。馬の嘶きの気配に振り向いた恵は、それが織田信長だと確信する。
「『信長の野心』のゲームパッケージそのまんまじゃん!」
霧が晴れて現れた3騎。中央の織田信長は、漆黒の南蛮鎧に身を包み、圧倒的な存在感を放つ。髪は高く結い上げられ、鋭い眼光は50メートル先の恵をも射抜く。陽光が肩当てや胸当てに反射し、その威厳を際立たせる。背中には真紅のマントが風になびく。腰には大小の刀を佩き、手綱に手を添えた姿勢からは不動の自信がうかがえる。
向かって右側の騎馬は、異様に長い腕をした男、「サル」こと木下藤吉郎である。「あーあ、会っちゃった」とでも言いたげに長い手で顎のあたりをポリポリとかいている。
一方、左側に立つ騎馬からは信長にも劣らない異様な殺気が発せられている。男の背は180センチ以上あり、2028年から来た恵にとっても長身に見える。この大男「槍の又左」こと前田利家の後ろに隠れるように、ぎこちなく黒甲冑をまとう4番目の人物がいる。18歳の絵師、狩野永徳だ。
利家が馬をすすっと信長の脇に寄せると、後ろの永徳は背負っていたリュックを外して、器用にジッパーを開ける。
「あっ、ワタシのユノロクのリュック」と恵の口から声が漏れる。
永徳は重量感のある金属製のものを信長に渡す。藤吉郎特製の片手で扱える2連火縄銃「王発次」だ。信長は右手で受け取ると、そのままスッと恵に向ける。
「えっ、拳銃?ショットガン?」
恵の戦国オタク脳がフル回転するが、脳内でerrorの緑色のデジタル文字がひたすら出力され、スクロールしていく。
信長は銃口を恵にロックオンする。恵は脳がフリーズして動けない。青年武将も恵の思考が伝播したように固まっている。
信長は冷たく微笑み、「貴様が白き妖女か」 と引き金を引く。
その時、鈴木二郎が「姫ー!」と雄叫びを上げて馬を操り、信長と恵の馬との間に割って入る。
「ズガーン」と火薬の爆ぜる音が響いた刹那、二郎の顔がクンと上を向き、椿の花がパッと散るように、頭が弾け飛ぶ。
グシャグシャになった二郎の頭の残骸と血が、恵と青年武将の顔をピチャピチャと濡らす。青年武将は我に返り「二郎ーっ!よくも貴様っ!」と叫び、馬を回転させて、信長に突進しようとする。
信長はもう一度、腕を伸ばして照準を合わせて引き金を引く。カチッ。しかし、不発。
信長は動ぜず、「サル」と低く呼び、銃を差し出す。藤吉郎が「あれあれ?申し訳ありません!2連発のはずですが、ちょっと調整いたします!」と、銃を手に取り、検分を始める。
青年武将は「二郎の仇だ!」と手綱を引いて駆け出そうとするが、一郎が馬を寄せて手綱を掴み「なりません!火縄銃です!」と止める。
青年武将は「銃がなんだ!」と言い返すと、一郎はパシッとその頬を叩く。
青年武将は「い、一郎、てめぇ、何しやがる!」とキッと一郎を睨むと、一郎は歯を食いしばりながら涙をこらえ、「姫をっ!メグミ姫を護るのが、あんたの役目だろうが!」と怒鳴りつける。青年武将はハッとして「あぁ、そうだったな」とつぶやく。
一郎は顔をそむけ「…そして姫を護るのが俺たち兄弟の役目…」とボソリとつぶやくと、四郎に目配せをする。四郎は黙ってうなずくと、ゴルティクスのキャリーバッグをガシッと抱え、馬を走りださせる。
一郎は念押しするように「さぁ、四郎に先行させます。あいつに付いていって早く大高城へ!」と告げる。青年武将は「あ、あぁ。分かった」と顔を伏せながら、馬を西へと再び回頭させる。
「三郎!殿は任せるぞ」と一郎が言うと、三郎は「おぅ!」と力強く答え、槍を構える。
次回、槍の又左vs 下手投げの三郎!お見逃しなく!
藤吉郎開発の信長専用2連火縄銃「王発次」については第11話「狩野永徳とオーパーツ火縄銃」で。よかったらこちらもお読みください!




