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東京Re-survive  作者: 櫻木 いづる
終章 彼方からの文
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第5章 舞士道と偽士道4


 † † †


 八百万学園に来てからというもの、今まで得られなかったモノが増えていく。

 それは友人だったり、知識だったり、思い出だったり様々だ。

 日暮家では得られなかった数々を、この八百万学園は与えてくれる。

 けれど同時に、退禍師となるべく課せられる課題も多かった。

 目黒先生は相変わらず、座学より実技のほうを重視していることもあり、学区内ではあるものの見回りや簡単な〝禍津者〟の討伐が少しずつ授業の中に組み込まれていった。

 それを簡単だとか、楽しいだとか思ったことはない。

〝開花〟をした後でも、相変わらず刀の聲を正確に聞き取ることはできない。

 そしてチームワーク――夏生や秋葉さん、僕自身の能力(ちから)を理解し、コンビネーションを組めるようになることが、チームの課題として浮き彫りになる。

 目黒先生曰く、僕は『特殊』なのだと言った。

 五大元素に属さないイレギュラー。

 その能力をどう仲間と組み合わせていくかが一番の悩みどころだった。

(二人に迷惑はかけたくないなぁ……)

【クカカッ、そう気にしているのはお前さんだけじゃろうて。あの二人は文句など言うてこんではないか】

 寧ろ、僕が〝開花〟したことを共に喜び祝ってくれた。

 そんな二人を危険な目に遭わせたくない――二人のことをより深く識る前よりも、今はよりいっそう思うようになった。

 そんな生活にも慣れていき、クラスメイト達の名前も覚え始めたある月初めのことだった。

「お前ら、そろそろ部活動に加入するだろう? したくて堪らない頃だろう。っつーか、しろ。実践経験を積むには良い機会だ」

(目黒先生が言うと不安だ……)

 授業前のホームルームが始まるや否や、口を開いた目黒先生の言葉に、僕を含めたクラスメイト全員は不安を覚えた。

 八百万学園の部活は、普通科高校で受ける物とはすべてが異なる。

 まず、文化系と体育会系――これがない。

 あるのは、呪術系と武術系と呼ばれる二つの体系からなる部活動だ。

 呪術は、巫術や符術、退禍術などと呼ばれる口術を中心に、部活動が構成されている。

 一方武術は、古武術を中心とした舞士道や偽士道と呼ばれる特別な体術を中心に構成されている。

 どちらに入るか、あるいは両方か――それを選ぶのは生徒の自由とされている。


「お前ら、入る部活は決めたのか?」


 それはホームルーム後の、わずかな休み時間。

 入部届と書かれた専用の用紙を秋葉さんと二人で眺めていると、夏生が声を掛けてきた。

「わたしは呪術系にしようかな……って。零ちゃんの話を聞いてたら、興味がわいてなんだかいいなぁって。……あっ、で、でも体験入部してから決めたいと思ってるです」

「僕は……武術系かな。ちょっと、興味があるのがあって……」

「興味……? なんだ?」

「えっと……舞士道、なんだけど」

「なんだ。俺と同じかよ」

「え? 夏生も?」

「意外だな。れんならもう一つを選ぶかと思ったが……、まあ、れんはれんらしくありゃいいか」

「そう、だね……」

【そうだのう。日暮家の長い歴史の中でお前さんは特に武芸に向かなかった】

(……でも、舞士道はまだ判らないじゃないか)

 始める前からできないと諦めたくはない。

 もしかしたらほんの小さな、実家への反抗心だったのかも知れない。

 だから、体験入部でもいいから舞士道を体験してみたいと思った。

 黒い校舎から少し離れた複数の灰色の建物。

 それは上から下まで丸ごと三棟が部活棟だ。

 一棟は呪術系の部活棟。もう一棟は武術系の部活棟。残り一棟は合同練習が可能な実践場となっている。

 昇降口から部活棟へと伸びる長い渡り廊下を秋葉さんと夏生の三人で歩く。

「目黒先生が言ってたね。部活だからって軽視するな……って」

「けど、あの先公の言うことだからな。もっとえげつないンじゃねぇの」

「普段の授業だけでもヘトヘトになるですよ? 厳しかったらどうしよう……」

 不安そうな表情を浮かべる秋葉さん。

 確かに目黒先生の実技演習は過酷だ。それでもただ無作為に実践訓練をさせられている訳ではないのが伝わってくる。実践を重ねるごとに、できたこと、できなかったことを指摘し解決策を一緒に模索してくれているからだ。

 初めはきっと誰もが、疑っていた目黒先生の突飛な授業方針。

 けれど今はそれにも慣れ、文句を言うクラスメイトもほぼいなくなっていた。

 千石夏生という友人ただ一人を除いて――。

「にしても、此処の学園の部活は特殊だって?」

「そうですね……。普通じゃない、とは風の噂で聞いてたです」

【クカカッ、れんよ。気を引き締めることじゃのう】

「……」

 リツの楽しむような警告に僕は黙り込むしかなかった。

 部活動――それは課外授業が終わり、深夜を回ってから始まる特別授業だ。

 改めて運動着に着替え終えた僕と夏生は、希望する部活――『刀舞』の入口に来ていた。

 夏生は実家について深くは語らなかった。だが、我流ながら武芸を嗜んできたと教えてくれた。

「なんで、俺よかお前のが緊張してるんだよ。流派は違っても、本家出身だろ?」

「それとこれとは話が別だよ。緊張するものは緊張するんだから」

 ハァと溜め息をし、何度か深呼吸をする。そして、

「失礼します」

 ガラリと扉を開けると、そこには床に倒れ伏した複数人の生徒と――立ち上がっている二つの影が在った。

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