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81.地下1階はどんなモンスターが出現するのだ?

「はあ……日本人は平和ボケで良いわね……そりゃ出て来るでしょ? 魔素のある領域がダンジョンなんだから」


確かに……言われてみれば当然の話。

奴らがダンジョンの外に出てこないのは、魔素のない空間では生きられないからであって、外に魔素があるなら出て来て当然。


「封鎖しないのか?」


目の前に広がる大穴。日本のダンジョンのように入口を封鎖するでもなければ建物で囲うでもない。魔素が垂れ流しの現状ではダンジョン領域は広がる一方であり、デモ隊のいうダンジョン閉鎖も、もっともな意見である。


「もちろん封鎖するわよ。予定では穴を囲う形で大型ドームを建設する。そのために日本が協力してくれるんでしょ?」


なんだ。それならそうとデモ隊の連中に説明すれば良いものを。


「アンタ何か勘違いしてない? 連中のいうダンジョン閉鎖って、誰も出入りできないよう完全に封印しろって話よ?」


なに? 完全に封印したのでは探索者も入れなくなり、モンスターを退治できない。俺がお金を稼げなくなるではないか。


「そもそも、モンスターには知性があるから殺すなってのが連中の、デモ隊の主張の1つだもの」


それは……返答に困るな。

確かにモンスター、中でもゴブリン獣には明確な知性がある。犬やイルカどころではない。武器を持ち炎を使うのだから、より人類に近いといえるだろうが……


「ダンジョンからゴブリン獣が出て来たら、アイツらに相手させてやるわ」


過去に親睦を深めようと手ぶらで近づいた探索者は、いずれもバラバラに切り裂かれ食べられたという。


「デモ隊が食べられるのはともかく、やはり仮の蓋でもあった方が良いのではないか? 魔素が垂れ流しではそれこそ本当にゴブリン獣が出て来るぞ」


「だから兵士を配置してるじゃない」


いや……兵士でモンスターは対処できても、漏れ出す魔素は防げない。


確かにモンスターさえ対処すれば魔素が漏れ出ようが問題ないが……もし万が一にもモンスターが外に出ようものなら大惨事となる。それを考えれば、やはり魔素が漏れ出ないよう封じた方が安全に思えるが……


「何のん気いってるの? 日本ならともかく、いくら蓋をしようがオリジン国で魔素の拡散を防ぐのは無理だもの。ドームを建てるってのもモンスターを封じ込めるのが目的。魔素はどうでも良いの」


無理? 無理とはどういうことか?


「知ってる? すでに茶位帝国は、その全土が魔素に覆われているそうよ」


国を挙げてのダンジョン開発で、その関連技術は世界一だと聞いているが……


「オリジン国と茶位帝国は海を挟んだ隣同士。茶位帝国の魔素は風に乗って、海を越えてオリジン国にまで流れてきているわ。今さら防ぎようがないってわけ」


茶位帝国は人民全員にギフトを獲得させているというが……国内全域がダンジョンとなっているのであれば、どこにモンスターが現れてもおかしくない魔境。ギフトがなければ生きていけないのだから当然のこと。


「だからオリジン国でも1人でも多くの国民にギフトを獲得させなければならないってのに……」


デモ隊が取り囲みダンジョンに入る者を人殺し呼ばわりするのでは、国民は近寄りづらい。ギフトを獲得できないわけだ。


「デモ隊を強制排除できないのか?」


「それが出来れば苦労しないわよ。人権だの何だの、これでも一応は民主国家だから守る必要があるってわけ。いっそ暴動でも起こしてくれれば話が早いってのに」





装備を整えた俺たちは穴底に向けて螺旋状に延びる坂道を降りていく。


大穴の底までは50メートルくらいか?

その側面には無数の穴が開いていた。


「とりあえずは地下1階で良いわよね?」


「ああ」


坂道の途中。開いた穴の1つにハンナさんが入って行く。


「ハンナさん。坂の先には他にも穴が開いていますが、そちらの穴に入った場合はどこにつながっているのでしょう?」


「見える側面の穴、1つ1つがダンジョンの入口よ」


ということは、このオリジンダンジョン。

入口が無数にあるわけか。


「ちなみに一番底の穴に入ると地下3階よ」


ショートカットというわけだ。危険な反面、便利でもある。

もっとも今の俺の目的は深層に行くことではない。


俺たちはハンナさんに続いて地下1階の穴へ入って行く。


穴の先。地下1階には広大なジャングルが広がっていた。見える一面樹木が生い茂り、上空には空らしきものまで見える。


ダンジョンは不思議空間とはいえ天井はどうなっているのだ? 今さらではあるが物理法則も何もあったものではない場所である。


「凄いですねお兄様。オリジン観光と一緒にジャングル旅行も楽しめるだなんて、得をしました」


確かに。ジャングルなどテレビでしか見たことがない場所。観光客でも呼び寄せればお金が取れそうな景色である。


「イモさんなら大丈夫でしょうけど、モンスターがいるんだから観光気分でいると……アンタ怪我するわよ?」


何故に俺だけ?


「だってアンタのギフトSSRじゃない?」


……まさかSSRという超当たりギフトを引いたはずの俺のレアリティが一番低いとは……無念である。


「地下1階はどんなモンスターが出現するのだ?」


「ネズミ獣。ヘビ獣。ヒル獣。モスキート獣。ジャングルバード獣。働きアリ獣よ」


聞いたことのないモンスターが多いな。

ペラペラ。日本から持ち出した必勝攻略読本のページを繰る。



■ヒル獣 危険度E

大型のヒル。泥中から飛び出し皮膚に張り付き血を吸う。一度貼り付かれると引きはがすのは困難。


■モスキート獣 危険度D

大型の蚊。空中を飛び回りながら針を突き差し血を吸う。素早い動きが特徴的。


■働きアリ獣 危険度D

大型犬ほどもある巨大な蟻。固い攻殻は刃物を弾き返し、鋭い牙は丸太をもやすやすと噛み砕く。



ジャングルバード獣は日本に出没しないのだろう。攻略読本に記載はないが、その他のモンスターいずれも日本では地下2階に出没するモンスターとある。


そしてヘビ獣も自宅ダンジョン地下2階のモンスター。こいつらが地下1階から出現するとは……難易度が高いな。


「正直戦いづらいわよ? ジャングルは視界が悪くてモンスターの接近に気づきづらいもの」


日本と異なり初心者がギフトを獲得するためのモンスター養殖場も存在しない。これではギフトを獲得する前に多くの探索者が死ぬのではないか?


「1階のモンスターは魔力は低いのが幸いね。見つけさえすれば、銃を撃ち込めばイチコロよ」


……そうだった。ここは海外。市民が銃を持つ国。

俺たちの他にもダンジョンへ入る探索者は、いずれも銃を手に複数人がまとまって行動している。


とにかく索敵。いち早くモンスターを見つけて、食いつかれる前に仕留めれば良いというわけか。


他の探索者と同様、俺たちも洞窟の奥、ジャングルへと足を踏み入れる。

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