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第96話 人だかり


 市の日。


 姫路城下。


 市役人。


 見回りをしていた。


・喧嘩はないか

・通りは詰まってないか

・火は大丈夫か


 いつもの仕事。


 だが。


 最近。


 少し妙な場所がある。


「市の端」


 本来なら。


 そこまで人は溜まらない。


 だが今。


「人だかりが絶えない」


 そのため。


 市役人。


 様子を見に行く。


 すると。


 見えた。


 焼き見世。


 茶。


 椅子。


 そして。


 黒田万吉。


 黒田の若。


 普通に。


 座っている。


 しかも。


 商人から。


 何か貰っている。


 餅。


 焼き物。


 漬物。


 それを。


 普通に食っている。


 さらに。


「甘いな」


「こっちは茶に合う」


「しょっぱいのもいい」


 感想まで言う。


 すると。


 周囲の客。


 その見世へ流れる。


 さらに。


 別の商人も来る。


 また食う。


 また感想言う。


 また人流れる。


 市役人。


 少し遠い目。


「……なんだあれ」


 隣の役人。


 苦笑。


「若様らしいです」


「最近、

 あそこで人止まるんですよ」


 実際。


 通り。


 かなり流れている。


 しかも妙なのは。


「揉めていない」


 普通。


 人が集まると:


・喧嘩

・押し合い

・騒ぎ


 起きる。


 だが。


 あそこ。


 妙に穏やか。


 皆。


 茶飲んで。


 食って。


 話している。


 市役人。


 腕を組む。


「……休み場みたいに、

 なってないか?」


 さらに。


 市役人。


 若へ近付く。


 護衛。


 少し前へ出る。


 だが。


 万吉。


 気付く。


「ああ、

 市の者か」


 役人。


 頭を下げる。


「若様」


「本日も、

 市へお越し頂き」


 万吉。


 普通。


「うん」


「最近、

 人多いな」


 役人。


 苦笑。


「若様のお陰かと」


 実際。


 市の端。


 今。


 かなり人が流れている。


 しかも。


 端なのに。


 人が止まる。


 つまり。


 若。


 少しずつ。


「市の流れ」


そのものを。


 変え始めていた。


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