第72話 種
市から戻った後。
山裾の小屋。
買って来た:
梅。
紫蘇。
塩。
並べられている。
女衆達。
早速。
梅干し作りの準備を始めていた。
樽。
塩。
水気を拭いた梅。
慣れた手つきで。
次々進む。
万吉も。
横で見ている。
梅。
塩。
樽。
そして。
ぽつり。
「梅干しの種、
食った後に吐き捨てれば」
「梅の木になるのか」
その場。
少し静かになる。
次の瞬間。
女衆。
吹き出す。
「違いますよ!」
万吉。
止まる。
女まとめ役。
笑いながら説明する。
「青梅の種を植えると、
芽は出ます」
「でも」
「早くは育ちません」
万吉。
「ほー」
少し真面目に聞いている。
さらに。
買って来た紫蘇を見る。
「これ、
その辺に生えてないのか?」
女衆。
頷く。
「生えてますね」
「山裾とか」
「道端とか」
万吉。
止まる。
「じゃ、
探してみるか」
即答。
周囲。
少し笑う。
また始まった。
そんな顔。
さらに。
万吉。
買って来た物を見ながら。
次々聞く。
「これ、
放っとけば増えるのか?」
「種落ちれば、
増えますね」
「縄で吊った方が、
乾くのか?」
「風通りますから」
「塩、
湿ると駄目か」
「固まりますよ」
周囲。
少し笑いながら答える。
最近。
万吉は。
市場で見つけた物を。
とりあえず:
「増やせないか」
「保存できないか」
で考える。
そして。
女衆側も。
慣れてきた。
「若はまた、
変な事考えてる」
そう思いながら。
普通に答えている。
火の周り。
笑い声。
少しずつ。
小屋は。
「知ってる者が教える場所」
になり始めていた。




