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第69話 どう保存する


 それから。


 また市の日。


 春。


 人も増える。


 荷も動く。


 山裾の小屋の見世も。


 少しずつ。


 並ぶ物が増えていた。


 縄。


 草鞋。


 組紐。


 飴。


 そして。


 生姜入りの飴は。


 意外と評判が良い。


「喉が変な感じする」


「でも嫌じゃない」


「身体温まるな」


 そんな声。


 その日。


 万吉は。


 珍しく市を歩いていた。


 見世。


 荷。


 人。


 そして。


 ふと止まる。


「あった」


 生姜。


 また並んでいる。


 土付き。


 芽付き。


 万吉。


 見世の男へ聞く。


「ショウガって、

 今が取れる時期なのか?」


 男。


 少し意外そうな顔。


「いや」


「これは去年のだ」


 万吉。


 止まる。


「じゃ、

 保存するのか」


 男。


 頷く。


「まあな」


 万吉。


 さらに聞く。


「どう保存する?」


 男。


 少し困った顔。


「そこまでは、

 簡単には言えねえよ」


 商いの知恵。


 そう簡単には話さない。


 すると万吉。


 普通に言う。


「じゃあ」


「買ってやるから、

 それぐらい聞かせろよ」


 男。


 思わず笑う。


「なんだそりゃ」


 周囲も。


 少し笑う。


 だが。


 男。


 少し考えた後。


「まあ、

 いいだろ」


 そして。


 ぽつりぽつり話し始める。


「干す分もあるが」


「芽が出てる奴は」


「基本、

 乾かないように」


「床下で保存するな」


 万吉。


 止まる。


「ほー」


 床下。


 湿り。


 乾燥させ過ぎない。


 頭の中で。


 何かが繋がる。


 万吉の目は。


 もう:


「どう増やすか」


へ向いていた。


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