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第68話 甘いのに辛い



 市の後。


 山裾の小屋。


 買って来た生姜が。


 机へ並べられていた。


 土付き。


 芽付き。


 万吉。


 じっと見る。


 そして。


 当然のように言う。


「分けるか」


 芽が出ている部分。


 それは。


 別へ。


「こっちは、

 種」


 残り。


 切る。


「こっちは、

 飴」


 周囲。


 普通に動き始める。


 最近。


 この小屋では。


「試してみる」


が。


 自然になっていた。


 万吉。


 子供達を見る。


「お前ら」


「端の土、

 起こしとけ」


 子供達。


 慣れた様子で走る。


 山裾。


 少し空いた場所。


 そこを掘る。


 柔らかくする。


 そして。


 芽付きの生姜を埋めた。


「増えるかな」


「どうだろうな」


 そんな話。


 一方。


 小屋では。


 飴作り。


 煮る。


 混ぜる。


 そして。


 刻んだ生姜を入れる。


 匂い。


 少し変わる。


 出来上がった飴。


 万吉。


 当然のように。


「井上」


「食え」


 井上之正。


 止まる。


「……また私ですか」


 周囲。


 少し笑う。


 だが井上。


 食べる。


 しばらく。


 沈黙。


 そして。


 少し驚いた顔。


「……甘いのに、

 辛いです」


 さらに。


「すごいです、

 これ」


 喉。


 少し熱い。


 だが。


 妙に抜ける。


 井上。


 もう一つ食べる。


 そして。


 真面目な顔。


「もっと、

 作りませんか?」


 周囲。


 少し笑う。


 万吉。


 普通。


「まだ、

 ショウガの季節だしな」


 流れ商人も頷く。


「見かけたら、

 買いましょう」


 その言葉に。


 万吉。


 少し頷いた。


 また一つ。


「流れる物」


が。


 増え始めていた。


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