第65話 飴
決算の日。
帳簿を閉じ。
話し合いも終わる。
縄。
草鞋。
紐。
修理。
普請。
去年。
何が足りず。
何が流れ。
何が止まったか。
全部。
確認した。
その最後。
万吉。
ぽつり。
「これで、
今年もなんとかなるだろう」
周囲。
少し笑う。
「なんとか」
と言うには。
かなり色々やっている。
その後。
火の周り。
まだ少し雑談が続いていた。
井上が。
喉飴の話をした流れ。
万吉。
ふと。
女衆のまとめ役を見る。
「飴、
作れたりするか?」
女。
少し困った顔。
「うーん……」
「作り方は、
知ってますけど」
「私、
あんまり前出るの得意じゃないんですよね」
万吉。
止まる。
女。
少し苦笑。
「だから」
「他の女に、
強く言えなくて」
「ちゃんと教える、
とかになると……」
万吉。
少し考える。
そして。
ぽつり。
「……私が」
「こいつの代わりに、
言わんといかんのか?」
周囲。
少し静かになる。
女。
思わず目を丸くする。
万吉。
普通に続ける。
「じゃ、
お前が飴作れ」
女。
止まる。
万吉。
周囲を見る。
「こいつ、
作り方知ってるから」
「聞け」
沈黙。
女衆達。
顔を見合わせる。
万吉。
さらに続ける。
「まあ」
「こいつの意図が読める」
「気が利く」
「動じない奴が、
側にいてくれると助かるな」
そう言いながら。
女まとめ役を見る。
女。
少し驚く。
すると。
横にいた井上。
小さく笑った。
「それ」
「若の側にも、
必要ですけどね」
沈黙。
周囲。
少し吹き出す。
万吉。
普通。
「いるだろ」
そう言って。
井上を見る。
井上。
思わず固まる。
周囲。
さらに笑う。
火の周り。
冬の終わり。
小屋の空気は。
去年より。
ずっと柔らかくなっていた。




