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第63話 ため池計画


 春。


 山裾。


 春の嵐を越え。


 川は去年より落ち着いていた。


 だが。


 万吉は。


 もう次を見ていた。


「ため池ほしいな」


 その言葉に。


 井上之正は。


 少し困った顔をした。


「若」


「流石に、

 領内へ勝手に作っては……」


 万吉。


 止まる。


 そして。


 普通に頷いた。


「では」


「父上に、

 計画報告しに行くか」


 そう言うと。


 自分の部屋へ戻る。


 ごそごそ。


 紙を探す。


 書付。


 地図。


 そして。


 まとめて持ち。


 そのまま:


 黒田職隆の部屋へ向かった。


 職隆。


 万吉を見る。


 最近。


 来る時は。


 大体。


 何か持って来る。


 嫌な予感。


 少し。


「なんだ」


「万吉、

 また何か始めたか」


 万吉。


 当然のように座る。


 そして。


 開口一番。


「父上」


「ここ数年、

 日照りは起きておりませんが」


「水が足りない時もあります」


 職隆。


 少し止まる。


 万吉。


 続ける。


「その時の備えとして」


「ため池と」


「それを田へ繋ぐ水路を、

 普請したいです」


 沈黙。


 職隆。


 額を押さえそうになる。


「今年も、

 普請するのか……」


 万吉。


 普通。


「はい」


 即答。


 そして。


 持って来た紙を広げた。


 地図。


 川。


 村。


 山。


 そこへ。


 線。


 丸。


 書付。


 万吉。


 指差しながら説明を始める。


「ここに、

 五個ほど」


「こっち側に、

 三つほど」


「それで」


「こう、

 水路を繋げて」


「雨が多い時は、

 こっちへ流して」


「あっちは、

 田へ回して」


「あそこ、

 少し低いから」


「あの村も、

 使える」


 どんどん話す。


 職隆。


 固まる。


 去年。


 川を掘っていた子供が。


 今。


「領内水路計画」


を話している。


 しかも。


 妙に理屈が通っている。


 部屋の端。


 井上之正。


 静かに話を聞いていた。


 そして。


 ふと思う。


(……これ)


(一年で作る計画なのか?)


 さらに。


 もう一つ。


(いや)


(来年もやる事になるのでは……)


 そんな嫌な予感が。


 かなり強くなっていた。


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