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第50話 二百文



 翌日。


 万吉は。


 再び呼ばれていた。


 向かった先。


 黒田職隆の部屋。


 職隆。


 昨日の見世の件。


 少し気になっていた。


 初めての見世。


 端の場所。


 どこまで回るか。


 正直。


 そこまで期待してはいなかった。


 万吉が入って来る。


 職隆。


 顔を上げる。


「どうだった」


「帳簿は見たか?」


 万吉。


 普通に頷く。


「二百文ほど、

 益が出てました」


 職隆。


 少し眉を上げる。


 初めての見世。


 しかも端。


 それで。


 ちゃんと利益が出た。


「ほぉ……」


 少し考える。


「四十文ぐらいか」


「それに場所代で、

 五十くらい」


 頭の中で。


 税と取り分を計算する。


 万吉。


 黙って聞いている。


 職隆。


 その後。


 何気なく聞いた。


「で」


「その銭は、

 どうするんだ?」


 万吉。


 当然のように答える。


「明日」


「御着の市に行って」


「手に塗る油、

 買いに行こうかと」


 沈黙。


 職隆。


 止まる。


「……油?」


 万吉。


 頷く。


「女衆」


「手、

 割れてる」


「痛いと、

 遅くなる」


「流れ止まる」


 職隆。


 黙る。


 意味は分かる。


 理屈も分かる。


 だが。


 利益が出た。


 ↓


 女衆の手の油を買う。


 そこへ繋がるのが。


 理解出来ない。


 職隆。


 しばらく万吉を見る。


 この子は。


 本当に。


 どこを見ているのだ。


 そんな顔だった。


 万吉。


 気にせず続ける。


「縄」


「いっぱい編んでる」


「だから手、

 荒れる」


「あと」


 少し考える。


「寒くなると、

 もっと割れる」


 職隆。


 静かに息を吐く。


 確かに。


 冬前。


 水仕事。


 縄。


 藁。


 女衆の手は荒れる。


 だが。


 普通。


 そこへ利益を回そうとは考えない。


 もっと増やす。


 もっと蓄える。


 そちらへ行く。


 だが万吉は。


 人の手が止まる事を嫌がる。


 だから。


 そこへ銭を流そうとしている。


 職隆。


 ぽつり。


「お前は」


「貯め込む気は無いのか?」


 万吉。


 少し考える。


「止まるだろ」


 即答だった。


 職隆。


 思わず笑う。


 この子の中では。


 銭も。


 物も。


 人も。


 全部。


 流れている。


 止めれば腐る。


 回せば動く。


 そういう感覚なのだろう。


 万吉。


 さらに当然のように言う。


「ちゃんと動くなら」


「また、

 戻ってくる」


 職隆。


 その言葉を聞いて。


 少しだけ。


 黙った。


 まだ幼い。


 だが。


 その考え方は。


 妙に。


 領主のものだった。


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