第48話 初めての見世
市の日。
朝から。
山裾の小屋は忙しかった。
縄。
草鞋。
紐。
修理した鍋。
銅の金具。
荷へ積む。
まとめる。
運ぶ。
人が行き交う。
「若様!」
「これ、
こっちでいいかい?」
通いの女達も。
朝から集まって来ていた。
「縄追加で持って来たよ!」
「こっちの草鞋、
昨日仕上がった!」
万吉。
少し不思議そうな顔。
「……意外と来るな」
その横で。
組紐の女が笑う。
「そりゃ来ますよ」
「自分らの作った物ですし」
「今日は市ですからね」
さらに別の女。
少し嬉しそうに言う。
「若様のおかげで、
少し銭ありますし」
「今日は針見ようかと」
「布も欲しかったんです」
万吉。
少し止まる。
作った物。
↓
売る。
↓
銭になる。
↓
別の物へ変わる。
流れ。
ちゃんと。
回っている。
万吉は。
少しだけ嬉しそうだった。
やがて。
荷を引き。
姫路城下の市へ向かう。
市。
人。
声。
匂い。
魚。
塩。
野菜。
薬。
布。
叫び声。
笑い声。
荷車。
全部。
動いている。
流れている。
万吉。
ずっと周囲を見ていた。
「人、
多いな」
之正。
苦笑する。
「市ですから」
そして。
端の方。
黒田の見世。
縄。
草鞋。
紐。
修理した鍋。
並べる。
周囲の商人達。
少し妙な顔をする。
「なんだあの店」
「縄屋か?」
「鍋もあるぞ」
「統一感ねえな……」
だが。
人は止まる。
「草鞋、
丈夫そうだな」
「縄、
揃ってる」
「これ直したのか?」
さらに。
修理した鍋を見た農民。
「これ、
直るのか?」
銅細工の男。
鍋を見る。
「見せてみろ」
その場で。
カン。
カン。
銅を叩く音。
周囲。
少し人が止まる。
「おお……」
「直してる」
「まだ使えるのか」
気付けば。
見世の前。
少し人だかりが出来始めていた。
流れ商人。
忙しそうに動く。
「縄はこちら!」
「草鞋見るならこっち!」
「修理は順番だ!」
若い僧は。
帳面を書いている。
売れた数。
修理。
交換。
銭。
全部記していく。
組紐の女達は。
女衆へ紐を見せていた。
「これ丈夫だよ」
「濡れても切れにくい」
笑い声。
値切り。
人の流れ。
その中。
万吉は。
じっと見ていた。
売れた。
より。
人が止まった。
そこを見ていた。
どこで。
何で。
人が流れ。
止まり。
また動くのか。
市は。
万吉にとって。
流れが集まる場所だった。
そして。
その時。
万吉は気付く。
見世の前。
立ち止まる者達。
皆。
何かしら。
困っている。
縄が要る。
鍋が割れた。
草鞋が破れた。
つまり。
ここは。
物を売る場所だけではない。
人が。
「困り事」を持って来る場所でもあった。
万吉。
ぽつり。
「……面白いな」
之正。
横目で万吉を見る。
その目。
また何か考えている目だった。




