第109話 は?
秋。
山裾。
最近。
村。
少し困っていた。
理由。
「害獣」
猪。
鹿。
猿。
実りの季節。
つまり。
食い物が増える季節でもある。
「また栗やられた!」
「芋掘り返されてるぞ!」
「干し物狙われた!」
村人達。
かなり困り顔。
そして。
小屋側も。
他人事ではなかった。
「樽倒すな!」
「塩湿気る!」
「干し柿やられる!」
保存量。
増えた。
つまり。
狙われる物も増えた。
その夜。
囲炉裏。
皆。
少し疲れている。
その中で。
井上之正。
ぽつり。
「やはり」
「別に置き場が欲しいですな」
「今の小屋では、
湿気も入ります」
「害獣も来る」
周囲。
頷く。
万吉。
少し考える。
「……高くするか」
「床上げれば、
湿気も減るだろ」
「干し場も増やせる」
井上。
さらに。
「棚も欲しいですな」
「樽置くにも、
地面ではよろしくない」
万吉。
頷く。
「木工おれば、
良さそうだな」
すると。
若い僧。
普通に言った。
「この前言ってた木工、
連れて来ました」
全員。
止まる。
「は?」
僧。
普通。
「寺筋で、
流れてた者です」
「若、
好きそうだったので」
周囲。
少し笑う。
もう最近。
この僧。
「若が欲しがりそうな人」
を。
勝手に探し始めていた。
外。
そこには。
若い男。
背負子。
鉋。
縄。
そして。
少し困った顔。
「……木工、
やってました」
周囲。
静か。
万吉。
まず聞く。
「長く使えるか?」
男。
少し止まり。
「ちゃんと組めば」
「長く持ちます」
その瞬間。
周囲。
また笑う。
「やっぱそこ聞くか」
木工の男。
少し戸惑っている。
だが。
万吉。
かなり真面目。
「高床出来るか?」
「棚は?」
「干し場広げられる?」
「雨避け作れるか?」
次々聞く。
男。
少しずつ。
職人の顔になる。
「出来ます」
「木があれば」
「縄も使えます」
「組み方次第で、
解いて移せます」
万吉。
止まる。
「移せるのか」
「それ、いいな」
周囲。
苦笑。
また。
何か気に入った。
井上。
少し笑いながら。
「若は」
「“後で変えられる”も、
好きですからな」
万吉。
普通に頷く。
「壊すの面倒だろ」
木工の男。
少し驚いた顔。
普通。
武家の子なら。
見栄え。
大きさ。
そういう話をする。
だが。
この若。
「長く持つか」
「直せるか」
「移せるか」
「増やせるか」
。
そこばかり聞く。
その後。
木工の男。
試しに。
小さな棚を組んだ。
縄。
木組み。
釘は少ない。
だが。
しっかりしている。
樽。
置く。
浮く。
地面につかない。
井上。
少し感心。
「これは良い」
「湿気減りますな」
女衆も。
かなり反応。
「干し物置ける!」
「鼠来にくい!」
「掃除しやすい!」
木工の男。
少し安心した顔。
そして。
万吉。
棚を見ながら。
ぽつり。
「……積めるな」
周囲。
少し静か。
また始まった。
そんな顔。
万吉の頭の中では。
もう:
・保存量
・干し場
・棚
・積み方
・流れ
そこまで。
繋がり始めていた。




