第18話.最悪の宣戦布告
『やっぱりノア=エイルとデキてたんDeathか。ふざけた男Death。』
「…え?デキてない!!デキてない!!世良さん今の話聞いてました!?あいつのは主人に対する執着心みたいなモンで……って、言わせないで下さいよ泣きたくなってきた!!」
『泣きたいのはこっちDeath!!』
『世良さん俺も泣きたいです!!』
『僕もです!!』
なんでだよ!!
類さんと柊さんまで泣きそうな顔になってるよ…
もういいよ…
これ以上濃いキャラいらねーよ…
「泣きたくても泣けない……アンドロイドの悲しき運命ですよね…」
「ギン、論点ズレたから。」
『ノア=エイルは、正直可愛い。可愛いDeath。
でもね!?双葉様だって負けてませんよ!?』
『可愛さでは、負けてます世良さん…』
『ノア=エイルは全地区アンドロイドのアイドルですよ世良さん…あの可愛さは正直可愛い…うわぁああああヤバイ思い出しただけで可愛い!!』
『お前らどっちの味方なんDeathか!!!』
『双葉様に決まってます!!ノア=エイルは可愛いけども!!』
『誓って双葉様です!!ノア=エイルの顔は好きだけども!!!』
………。
中身を知らないって、凄いね…。
ついに、シェルターマンションが下までマンションバージョンになった。
入口が現れ、ゆっくりと開く。
『さぁ。どうぞ。』
マンションの中に入ってビックリした。
シェルターとは思えない程の普通のマンションだ。
歩いている廊下はピカピカの白い大理石の床で、大きなガラス窓がいくつもあり、ふさふさのジュータンまで敷き詰められている。
まさに、高級マンション…。
先に歩く世良さんの背中を見ながら、ノアの所に素直に連れてってくれるんだろうか…と、不安になった。
どうしたもんかと困っていたその時、予想外の場所から空気がいきなり壊れた。
「ウキャアアアアアアアアア!!!」
え?
「ウキャアアアアアア!!キャアアアアアア!!!」
「ちょ、ちょ、どうした!?メル!?」
「キャアアアアアアアアアア!!」
「い、痛い!!メル!?耳が痛い!!」
「キャアアアアアア!!!」
突如、俺の胸にしがみついていたメルが物凄い声で叫び出した。
『ちょっと何Deathか!?この声!?そのドラゴンどうしたんDeath!?』
異常な程のメルの叫び声に、全員が耳を塞いだ。
「どうしたん!?メル!!メル!?
なんや!?いちはん、メルどないしたん!!」
「わかんないっ…メル!?」
「ウキャアアアアアアアアア!!!」
メルは、何度も何度も叫び声をあげた。
『………!?』
耳を塞ぎながらメルを見ていた柊さんが何かに気付いた。
メルが、ただ一つの方向に向かって
叫んでいる事に。
『世良さん!!マンションを戻して下さい!!シェルターにっ……早く!!!』
『……!?』
柊さんが叫んだと同時に、世良さんが片足を大きく振り上げて地面を強く踏んだ。
入口が消え、下の方の階は窓がバンバンバンッという大きな音と共にシルバーの板に変わっていく音がし始める。
メルは、夢中で叫んでいたのだ。
警告音を。
ずっと、ただ一つの方向に向かって。
それは、玄武門と白虎門のちょうど中間の地点だった。
何かが光っていた。このマンションに向かって。
「…何…?あれ…」
「…ふざ…けとる…」
「え?」
「……5区や!!」
その時、微かに青龍が見えた。
「…大和……?」
青龍は、尻尾を上下に振っている。
“威嚇だ。これを見たら注意しな”
「……っ…!!おそらく、何か攻撃が来ます!!」
『……玄武!!!』
俺の叫び声を聞いた柊さんが、とっさに叫ぶ。
同時に光はそのまま真っ直ぐマンションに向かって放たれた。
眩しい光に、思わず目を閉じてしまう。
「………?」
恐る恐る目を開けると、マンションの窓からは何も見えなかった。
窓の外に大きな…とてつもなく大きな亀の甲羅が出現していたからだ。
「…なんじゃこりゃあああああ!!!」
『玄武の絶対防御です。マンションを囲みました。』
「…す、すご…。何されたの?攻撃?なんかミサイルみたいなの飛んでこなかった!?」
『あんな物……よくもっ…』
世良さんの肩が震えている。
「……あいつら、これ狙っとったんや。」
「え?」
「玄武門と白虎門に敵が少なかったんは、これを撃つ場所やったからや。近くにおらんようにしとったんやろな。
…青龍門と朱雀門の敵が撤退してったんは………
撤退したんやない。……“避難”したんや。」
『……待って下さい…ならば、私達はおびき出されていたと?』
「青龍門と朱雀門が派手にやられとったんは、あんたらおびき出す為やろな。少しでも多く巻き込んで殺すためにな。」
『ならば、もっと早く撃てば………
………!?まさかっ……』
「俺らがシェルターマンションを地中から出して、普通のマンションバージョンにするんを待っとったんやろな。」
世良さんがカタカタと震えながら呟いた。
『狙いは…双葉様の首…?
そうとは知らず…私はシェルターマンションを地中から出して、マンションバージョンにまで変換させてしまったと……!?』
世良さんが膝から崩れ落ちた。
『私は……なんてことを……』
「…奴らが撃ったんはミサイルや。着弾と共に爆発するタイプの……」
久遠は、一度言葉を飲み込んで震える声で呟いた。
「危険過ぎて、全地区で放棄しようと決めたミサイルや。5区…以外はな…」
やっぱりミサイルだったのか…。
『久遠さん、2発目の可能性は!?』
「……ないわ。いくつか持っとるやろうけどな…。そんなポンポン撃たへん。」
『でも、滅茶苦茶なのでしょう?彼らは。』
「滅茶苦茶だからや。あいつらにとって一番の隠し玉やで?在庫に限りがある核ミサイルを、そう何度も簡単には撃たん。
恐らく今回撃ったのは、双葉の首狙いと それがダメでも“強烈な宣戦布告”をする為や。
本気の全面戦争始める気やで。連合区は。」
『朱雀で付近の浄化を始めます。朱雀!!』
類さんの声に、真っ赤な翼を広げた朱雀の羽音が聞こえた。
朱雀は玄武の甲羅の外側にいるのか?
核……って聞こえたんだけど…
嘘…だよね?
「ねぇ……玄武で俺達守ってるのって……朱雀で浄化って……」
声が震える。
『……念の為の…放射能の汚染浄化です。』
それって……
俺が知ってる核と…ほとんど同じなんじゃないか…?
「着弾してからが問題やったからな…着弾する前に玄武が守ってくれたから助かったものの……
気付くのが遅かったらと思うとゾッとするわ…
メル…ありがとうな…」
久遠が俺の胸にしがみついてるメルの頭を撫でる。
その手は、微かに震えていた。




