第60話.新天地へ。
「じゅん…。なんであんな男の下についてんの?」
『………は?』
俺の問いに、じゅんはピタリと震えが止まり、キョトンとした顔でオレの顔を見上げた。
『なんで…だと?何言ってんだお前?』
「何…って、そのまんまの意味だけど。」
『は?下につくのは当たり前だろ?俺はナンバーで、ネオ様はリーダーなんだぞ?』
「…そう作られたから?」
『そうだ。』
「尊敬してるからとか、下につきたいから…とかじゃないんた?」
『………。…何が言いたいんだお前?』
「ないじゃんって思ってさ」
『ない?何がだ?』
「感情を持ったアンドロイドなら持ってるはずなのにさ。
ないみたいなんだもん、お前。」
『……だから、何がだ?』
「意思だよ。自分の意思。」
俺の言葉に、じゅんの顔が曇る。
そして顔を下に向けて、黙り込んでしまった。
「ひとまず、ネオが動き出す前に
はよ出発した方がええかもしれんな。」
「…そうですね。ネオの兵士に囲まれてしまっては出られなくなってしまいます。
そうなれば、もうこの中に閉じこもって暮らすしかなくなっちゃいますからね。」
俺は残る皆の事が急に心配になった。
「俺達が行った後さ……ネオが入って来る事は出来ないとは言っても、やっぱりネオ達に囲まれる状況って……皆大丈夫?」
俺が皆にそう言うと、皆はザワザワとお互いに話してはいたものの
「だ… 大丈夫…だよ。うん。」「そうそう!!大丈夫!!」
大丈夫と言いながらも、小刻みに震えているのかが見てわかる。
気持ちはわかるよ。精神的にかなり来ると思うんだよな……。
「いや!!でも、いち達だって俺達の為に未知の場所に行くんだもんな。」
「ただでさえ甘えてる俺らが、まってるのさえも怖いとか……言ってちゃったダメじゃん!!」
「俺達は大丈夫だ!!お前らこそ気をつけろよ!?」
皆がガッツポーズをして任せろ!!と、口々に俺に言いに来る。
久遠の気持ち、わかるなぁ。
こいつらの為に、絶対に安全に暮らせる場所を見つけてやりたい。
ノアもギンもリーヴも、そして凪ちゃんも俺の気持ちが伝わったのか、力強く頷いた。
「じゃあ、急ごう!!俺らが帰ってくるまでは、ここから出ない様にね。
もうこの2区では、ここしか安全と言える場所はないから。
俺達が外に出る一瞬以外は、絶対に何があっても結界を解かないこと!!」
全員が俺の言葉に頷いたその時、部屋の一番奥から低い声でじゅんが呟いた。
『……… 一番安全?……ここは、一番危険な場所になるぞ。』
振り向くと、顔を上げたじゅんが真っ直ぐ俺の目を見ていた。
『…ネオ様は、恐らくここに向う準備をしている。
もしネオ様が俺の半径1キロ以内に入ったら……』
『あの人は、俺の自爆タイマーを強制的に作動させる事が出来る。
結界の外の敵から身を守れてもな、中からの爆発でこの中の人間は全員死ぬぞ。』
全員が言葉を失った。
そうだ……じゅんにも、自爆機能がついててもおかしくはない。
でも………
「それ。黙ってればここの人間全部殺せたのに。なんでわざわざ言った?」
じゅんはため息をついて、静かに口を開いた。
『……俺にだって、意志の一つくらいある。それを証明してみたかっただけだ。』
自爆させられるって事は、殺されるって事だ。
ずっと付いてきたリーダーに。
『ここのコロニーの人間も、お前らと一緒に行け。電磁波結界はここじゃなきゃ発動さられない訳じゃねーんだろ?お前らが出る一瞬に切る事出来るっつーのがその証拠だよな。だったら電磁波結界持って、全員ここから移動しろ。』
「全員で…1区に!?」
『へぇ。1区とはね。考えたじゃねーか。いいんじゃね?さっさと行っちまえ。』
「じゅんはどうなるんだよ!?」
『ネオ様は1キロ圏内に入ったら自爆タイマー入れるだろうし、この中野博士のコロニーと爆発して終わってやらぁ。1キロありゃーお前らが逃げたのには気付かねーだろーし。
少しは時間稼げんじゃねーの?』
「……そーゆう意味じゃなくて!!」
俺の怒鳴り声に、じゅんはキョトンとしていた。
「あのさ。爆発するっつー時に何言ってんの?爆発させられるって事にムカついたりしねーの?」
『……まぁ、それがネオ様だからな。仕方ないって……思っちまうな。………はは。ほんと、俺意志ってもんがねーのな。』
「じゅんも連れてく。いいよね?」
俺の言葉に、全員が頷いた。
しかし、じゅんは違ったんだ。
『ネオ様が1キロ圏内入ったら爆発するっつー俺を逃げながら連れてくのは、お前それ全員の自殺行為になんだぞ。
リーダーが軽々しく言うなボケ。」
…怒られた。
「…サクがいたら……中の爆弾取り出したり出来たのかな……」
俺がションボリしながら呟くと、ギンとシュカさんが声を揃えて言った。
「それは、きっと無理でしょう。アンドロイドの体は複雑ですから…」
「第1区の、腕利き技工士のアンドロイドに頼んでみては?」
『俺は敵だっつーの。敵のナンバーの自爆タイマー外すか?普通。』
「外すでしょう。それが最後の手段なんでしょう?手段を消すのは助ける事にはなりませんよ。相手の手段を奪うってだけなんですから。むしろザマーミロって感じですよねぇ?シュカさん。」
「ザマーミロですねぇー。」
『……………』
口をぽかーんと開けたままのじゅんの拘束糸を解く凪ちゃん。
『なっ!?俺を自由にするとか馬鹿なのかお前ら!?』
「あははははは。これが俺らだからー。
俺らの意思で、お前を一緒に連れてく。お前は?」
『………』
久遠が全員に退避の準備を叫ぶ中、じゅんはコロニーの人間や俺らアンドロイド達を見ながら呟いた。
『……爆弾外したら、お前らのこと殺すかもよ?』
「…んで、ネオの元に帰るの?」
『…………そ…れは…』
じゅんは俯いた頭をブンブンと横に振り、キッと俺を見て言った。
『それは、それから考える。
今は、俺だってまだ爆弾で死にたくねぇからな。一緒に行ってやるよ。』
「…自分の意思で?」
『俺の意思で!!だ!!』
「オッケ。じゃあ、しばらくよろしくな。じゅん。」
俺は笑いながら、久遠の手伝いに向かった。
きぃちゃん’sにロープでかけた大きな籠の中に、コロニーの人達が慌てながら荷物と共に入り込んだ。
俺達も、きぃちゃんの背中に乗る。
「きぃちゃん、重くない?」
「キュイッ♪」
背中をさすりながら言った俺の言葉に、きぃちゃんは振り向きながら陽気な声で返事した。
「行くで!!きぃちゃん、ぎぃちゃん!!頼む!!」
ぎぃちやん?
「キュイイイ♪」
「ギュイイイ♪」
2匹のダイヤモンドキメラが、空高く舞い上がった。
コロニーの人達、俺達、全員を乗せて。
「よーっし!!目指すは第1区!!まずは海超えだね!!」
遥遠くにキラリと光る海を見て、俺は力いっぱい叫んだ。
この日 俺達は人間、アンドロイド合わせた仲間全員で第2区を後にした。
第二章は、ここまでになります。
ご愛読ありがとうございました!!
引き続き、第三章もよろしくお願い致します!!
┏oペコ




