(真)プロローグ&第1話
間を空けすぎてすみません。
納得いかなかったので書き直しました。
元のプロローグと第1話は消しませんが、こちらがこれからの物語のプロローグと第1話になります。
「リョウちゃん…?」
黒髪の美少女が俺の隣を歩く少年を呼ぶ。
振り返ると3人で歩いていたはずが
いつの間にか少女は立ち止まっており、路傍の電柱を見つめていた。
「なんだ?」
怪訝そうに「リョウちゃん」が応える。
少女は少し驚いたようにピクっと体を揺らした。
「んーん、なんでもないっ!」
少女は元気よくそう言いながら、あざとくこちらを向く。
その時の彼女のどこか悲しそうな表情が、秋の雰囲気と重なってとても印象的だった。
「リョウちゃんは昔からずーっと変わらないねぇ」
こちらへ歩き出した彼女は突拍子もなくそう言った。
思いがけない発言に「リョウちゃん」は困惑した表情を見せる。
「ぼ、僕なにかやったか...?」
「あっ、いや違くて!
急に昔を思い出しちゃって!
きっと、これから先もずーっとらしくあるんだろうなぁって。」
懐かしそうに遠くを見つめながらそう言う彼女はどこか嬉しそうだった。
「アキラくんは...
昔とはだいぶ変わったよねぇ?」
急に自身の黒歴史をつつかれ、ギクリとする。
「う、うるさいよ...」
そう言いながらそっぽを向いたのは、ただ都合が悪かったからじゃない。
彼女の揶揄うように笑い、
細めた瞳でこちらを睨む可愛らしいその姿に、自身の頬が赤らむのを感じて悟らせまいと隠したかったのだ。
「変わっても変わらなくても、
リョウちゃんもアキラくんも私も!
3人の仲は変わらずずーっと仲良くしたいね!」
よくそんな気恥しいセリフを自然に言えるものだなと変に感心してしまう。
彼女、郷須透子は
昔から謎の話題を急に切り出したり、
人が言えないような言葉をサラリと言えてしまうような超天然少女だった。
極めつけは彼女は「視える」らしい。
幽霊やら妖怪やらよく分からないものを時折見かけるのだと。
「また変なものでも視えたのか?」
そう揶揄ったのは「リョウちゃん」だ。
「もう!
リョウちゃんは小さい頃から全然信じてくれないよね!」
揶揄われた透子はぷりぷりと怒りを露わにする。
「いいもん!アキラくんが信じてくれるもんね!」
ねー!っと身をかがめて同意を促してくる彼女に少し笑いながら俺は答える。
「そうだね、
俺も幽霊みたいな未知の存在はいると思うし、いるなら透子ちゃんみたいに視える人だっているんじゃないかって思ってるよ」
「ほらね!リョウちゃんが頑固なんだよ!
幽霊さん達はいるもん!」
はぁ、とため息を吐いて彼は答える。
「別に僕だっていないとは思ってないよ。
いた方が面白いし。
ただ、そんな精神だけの存在を肉眼で捉えられるというのが信じられないんだよ。」
そんな答えに、
透子はここぞとばかりに問い詰める。
「じゃ!あ!さ!
リョウちゃんは幽霊さん達をどう思ってるの?ポルターガイストとか瞬間移動とかCMとかってできると思う?」
「いや、CMは違うでしょ...」
はぁ?とした顔で彼は透子を見たが、
キラキラと目を輝かせて答えを待つ彼女に根負けしたように、足元に目線を落とし答える。
「そんなの、
視えてる透子の方が詳しいだろ...」
「動いてる幽霊さんの方が珍しいの!」
彼女の間髪入れない答えに、
そうなのか、と内心で彼女が見ている景色が気になりながらさらに続くふたりの会話を聞く。
「できるんじゃないか?」
「リョウちゃん」は少し考えたあと一言だけそう答えた。
彼女の瞳にさらに輝きが増していく、
「じゃあさじゃあさ!
もし2人が先に死んじゃったら
私のとこに瞬間移動してきてね!
私が視てあげる!!」
えぇ...と引いた表情で俺と「リョウちゃん」は顔を見合わせる。
「「縁起でもないこと言うなよ...」」
透子はニシシ笑う。
目の前の信号が青になった。
透子は俺たちの先を歩き出した。
──────
23年後。
「ついにッ!ついに完成したぞ!!!!!」
己が手に握りしめ、天に見せびらかさんと高く掲げた時計のようなそれを潤んだ瞳で俺は見上げていた。
白衣を着た胸には、「Akira」の刻印がなされた金属タグが薄暗い部屋の中、僅かな光源を集めて鈍く輝いていた。
ここまで大喜びするのも無理はない。
俺はこの瞬間のために実に20年以上の歳月を費やしてきた。
高校1年、16の時からコツコツと時間をかけ、努力を重ね、歳が38を数え体臭や抜け毛が気になりだした38の年、やっと完成させることができたのだ。
かつては羨望や期待、尊敬の眼差しを向けられていた大天才も今では誰の記憶にも残っていないだろう。
いや、記憶に残っていないだけならまだマシだ。
俺というかつての大天才が最後に受けた評価は「叶わぬ夢に囚われた狂人」であった。
しかし、周囲の冷たい目ももう全く気にならない。
誰からも叶わぬといわれた夢を俺は叶えたのだ。
「タイムマシン」というまさに“ 夢 ”の開発を成したのだ。
胸の奥から込み上がってくる熱い想いが、夢のそれをさらに強く強く握らせる。
握った手に返る感触でハッと我に返った俺は急いで手を緩め、タイムマシンを慎重に懐へと納める。
「いかんいかん。ちょっとやそっとで壊れるようには作ってないが、繊細に扱わなくてはな!」
「さて、完成したはいいが...」
ポケットの上からタイムマシンを撫でながら、逆の手を顎に当てて考える。
重要な部分の決定がまだなのだ。
このタイムマシンの呼称である。
どうにか語呂がよく意味がよくオリジナリティに富んだ名前が無いものかと、開発開始した頃からずっと決まっていなかったのだ。
だが、完成したその姿を見て触って...
なんとなくインスピレーションが湧いた気がした。
『Re:Tick』
そうだ、これにしよう。
「Re:Tick!
こいつの名前はリ・チックだ!!」
相棒の名前が決まり、俺はまた高らかに笑った。
気持ちいっぱい笑ったあと、
ふぅと息を吐き気持ちを落ち着かせ、当初の計画へと頭を切り替える。
「フッ、これでついに...!」
そう。俺はこの計画のために20数年を費やしてきたのだ。タイムマシンの完成はたしかに嬉しい。
飛び上がるほど嬉しい。
だが結局、タイムマシンの開発はこの計画のスタートラインにすぎない。
いまこそ、このタイムマシンで時を超え過去をあるべき姿へと修正し、現在を、そして未来を変えるのだ。
タイムマシンを見つめながら誰かに誓うようにそう決意し、静かに手首へとあてがう。
ひとりでに動き出したタイムマシンのベルトは赤色光を放ち、俺の左手首をぐるっとスキャンしたかと思うと血流を阻害しない程度にピッタリと装着された。
装着された腕を見た瞬間、涙がこぼれそうになった。
落ち着けたはずの心がザワついた。
完成に至るこれまでのことと待ち望んだこれからのこと。
たくさんの感情が込み上げてきて、流すまいとした熱い涙が俺の視界を霞ませる。
ゆっくり目を閉じた。
真っ暗になった視界の中で整理する。
(計画のすべては頭に入っている。
何十年もこの最高の頭脳でずっと思い描いてきたのだから当然だろう。
ついに、望んだ未来に手が届く距離まできたのだ。
あとはタイムマシンを使い過去を変えるだけでいい。)
目を瞑ったまま、親指でタイムマシンの下部をゆっくり撫でる。そこにはポツポツと緑と赤の小さなLEDランプが埋め込まれていた。
(タイムマシンを使い過去へ行けば、緑色のランプが常に点灯した状態になる。俺は作戦を実行し、赤のランプを点滅させる、それだけでいい。)
タイムマシンはその小さな姿で、あらゆるエネルギー情報を観測し計算している。その観測状況をリアルタイムで使用者に知らせるのがこの2色のランプの役割だ。
緑の点灯が安定状態を指し、緑と赤のランプが同時に点灯すると不安定、そして緑のランプが消え、赤が点滅すると時の修正力が働かないほど不安定であることを指す。
つまり赤の点滅は未来が変わるまでのカウントダウンなのだ。
赤色光が点滅を止め、ピーっというアラームと共に点灯したその瞬間、高確率で改変した過去がタイムマシン使用した世界線から大きく乖離すること、つまり未来が変わったことを告げる...はずだ。
改変がなされた未来が一体どうなっているのか、それは知ることはできない。だが過去を"どう"変化させるのかによって、ある程度予測することは可能なはずだ。
(俺の隣に君がいない、そんな未来はいらない。)
俺は望んだ未来のその情景に幼い少女を思い描く。
綺麗な黒髪でよく笑う、太陽のような女の子。
郷須透子、透子たん。
幼馴染で、初恋の人。
(彼女が俺の隣にいてくれる、
もしもそんな未来があるのなら......)
彼女は俺の隣を選ばなかった。
あの秋の日、俺をおいて歩き出した彼女を23年間わすれることができなかった。
俺はゆっくり目を開く。
その視界は晴れていた。
ゆっくりとRe:Tickを装着した腕を顔まで上げて、タイムマシンを起動する。
もう俺の目には在りし日の彼女の姿しか写っていない。
散らかった部屋も狂人だと蔑む愚か者たちも失敗の懸念も、そしてパトロンへの報告義務すら忘れて天に吠える。
「待ってろぉぉ!!透子たぁあああああん!!!!」
Re:Tickは唸りを上げて輝きだす。
鐘の音のような神々しささえ感じる唸りの中で、Re:Tickの「N」を指す針の先が音を立てて「P」へ動いた。
次の瞬間、俺はタイムマシンに向かって吸い込まれるように消えてしまった。
前の方が良かったとかあったら教えてください。
(まぁそんな変わるものでも無いと思いますが...)
気軽にご反応をお待ちしてます。




