第1話
「ついにッ!ついに完成したぞ!!!!!」
己が手に握りしめ、天に見せびらかさんと高く掲げた時計のようなそれを潤んだ瞳で俺は見上げていた。
ここまで大喜びするのも無理はない。
俺はこの瞬間のために実に20年以上の歳月を費やしてきた。
高校1年、16の時からコツコツと時間をかけ、努力を重ね、歳が38を数え体臭や抜け毛が気になりだした38の年、やっと完成させることができたのだ。
かつては羨望や期待、尊敬の眼差しを向けられていた大天才も今では誰の記憶にも残っていないだろう。
いや、記憶に残っていないだけならまだマシだ。
俺というかつての大天才が最後に受けた評価は「叶わぬ夢に囚われた狂人」であった。
しかし、周囲の冷たい目ももう全く気にならない。
誰からも叶わぬといわれた夢を俺は叶えたのだ。
「タイムマシン」というまさに“ 夢 ”の開発を成したのだ。
胸の奥から込み上がってくる熱い想いが、夢のそれをさらに強く強く握らせる。
握った手に返る感触でハッと我に返った俺は急いで手を緩め、タイムマシンを慎重に懐へと納める。
「いかんいかん。ちょっとやそっとで壊れるようには作ってないが、繊細に扱わなくてはな!」
再度、ハハハと高らかに笑ったあと、ふぅと息を吐き気持ちを落ち着かせ、当初の計画へと頭を切り替える。
「フッ、しかしこれでついに...!」
そう。俺はこの計画のために20数年を費やしてきたのだ。タイムマシンの完成はたしかに嬉しい。
飛び上がるほど嬉しい。
だが結局、タイムマシンの開発はこの計画のスタートラインにすぎない。
いまこそ、このタイムマシンで時を超え過去をあるべき姿へと修正し、現在を、そして未来を変えるのだ。
タイムマシンを見つめながら誰かに誓うようにそう決意し、静かに手首へとあてがう。
ひとりでに動き出したタイムマシンのベルトは赤色光を放ち、俺の左手首をぐるっとスキャンしたかと思うと血流を阻害しない程度にピッタリと装着された。
装着された腕を見た瞬間、涙がこぼれそうになった。
落ち着けたはずの心がザワついた。
完成に至るこれまでのことと待ち望んだこれからのこと。
たくさんの感情が込み上げてきて、流すまいとした熱い涙が俺の視界を霞ませる。
ゆっくり目を閉じた。
真っ暗になった視界の中で整理する。
(計画のすべては頭に入っている。
何十年もこの最高の頭脳でずっと思い描いてきたのだから当然だろう。
ついに、望んだ未来に手が届く距離まできたのだ。
あとはタイムマシンを使い過去を変えるだけでいい。)
目を瞑ったまま、親指でタイムマシンの下部をゆっくり撫でる。そこにはポツポツと緑と赤の小さなLEDランプが埋め込まれていた。
(タイムマシンを使い過去へ行けば、緑色のランプがつに点灯した状態になる。俺は作戦を実行し、赤のランプを点滅させる、それだけでいい。)
タイムマシンはその小さな姿で、あらゆるエネルギー情報を観測し計算している。その観測状況をリアルタイムで使用者に知らせるのがこの2色のランプの役割だ。
緑が安定で赤が不安定、そして赤が点滅すると
高確率で改変した過去がタイムマシン使用した世界線から大きく乖離すること、つまり未来が変化することを意味していた。
改変がなされた未来が一体どうなっているのか、それは知ることはできない。だが、過去をどう変えるのかによってある程度予測することは可能なはずだ。
(君がいない、
そんな未来にさえならなければそれでいい。)
俺は望んだ未来のその情景に幼い少女を思い描く。
綺麗な黒髪でよく笑う、太陽のような女の子。
郷須透子。
幼馴染で、初恋の人。
あわよくば彼女が俺の隣にいてくれる、
もしもそんな未来があるのなら......
俺はゆっくり目を開く。
その視界は晴れていた。
もう俺の目には在りし日の彼女の姿しか写っていない。
散らかった部屋も狂人だと蔑む科学者も失敗の懸念も、
そしてパトロンへの報告義務すら忘れて再度高らかに笑い、天に吠える。
「待ってろぉぉ!!透子たぁあああああん!!!!」
次の瞬間、俺はタイムマシンのある手首に向かって吸い込まれるように消えてしまった。
第1話ですがプロローグの細かい部分などを折り込みすぎました。
本当ならもう少し内容に入る予定だったのですが、入れておきたい要素をきちんと入れた結果、第1話はこのくらいにしようということになりました。
すみません。(読んでくれてる人がいるかは不明ですが。)
第2話は第1話ほど時間はかからないと思います。
評価、ご指摘あれば気楽にどうぞよろしくお願いします!
(あ、あとシステムがまだよくわかっていないんですが、感想やコメントなどはどこから見れたり書けたりするんでしょうか?
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略称はパッと考えたものなのでいいものがあったらそれに変更します!最後に活動報告もだしてるので読んでくれたら嬉しいです)




