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金色の瞳  作者: 七篠 月
第二章 鬼導隊編
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ある少年の計画ー番外編2ー


 忠国ただくには、母親の望むように高校へ入学した。

 母親はあの騒動以来、忠国につらくは当たらなくなったが、やりたいことも見当たらない忠国は、なんとなく母の意向に従っていた。


 そして、学校の七不思議についての調査の日、忠国は初めて鬼を見た。

 三人いたが、角も牙も見受けられず、自分たちと同じ年頃の華奢な少年少女がいるだけだった。

 人間と大して変わらない姿に、彼らは本当にじゃを倒すことはできるのかという不安を忠国は抱いた。


 忠国は、生徒会の仕事を全うすべく、鬼たちを案内したが、その途中、停電というハプニングに見舞われた。

 忠国は、端末をさっと出し、一応客人たちの足下を照らした。

 そんな中、生徒会長から調査の延期を告げられ、忠国はとりあえず正門までは案内しようと歩き始めた時、生徒会長から告げられた言葉に愕然とした。

「田中ー、彼らの足下を照らさないで、自分の足下を照らしといたほうがいいよ。彼らは明かりが無くても、よく見えるから。」

 忠国は驚きのあまり、暗闇にうっすら見える少年らの瞳を見た。

 確かに、その瞳は自分を捕らえているように見えた。

 特に少女の瞳は、屋上から落ちたクラスメイト・山田沙紀を思い出させた。

(気持ち悪い…。)

 人間の姿をしていても人間とは違う、そんな姿があの日と同じ感情を抱かせた。


 鬼たちと別れても、忠国の頭の中には鬼たちの事ばかりが廻った。

そして、忠国は思った。

 山田沙紀が屋上から落ちても無傷だったのは、彼女が鬼だったからではないか。

 それなら、きっと説明がつく。

 そうならば、面影からして、あの鬼の少女が彼女ではないのか。

 


 翌日―。

「会長は、あの鬼たちと知り合いだったんですか。」

「いやー、まあね。」

「それなら、会長が案内すればいいじゃないですか。」

 忠国の責めるような口調に、政虎まさとらは困ったような顔をした。

「そりゃそうかもしれないけどさ。ちょっとね。」

 このままでは、まともな答えが返っては来ないだろうと、忠国は質問を変えた。

「というか、なんで知り合いなんですか。」

「それは僕のプライベートでさ。」

「また肝試しですか。」

 政虎は、1年生にして生徒会長になった秀才だが、やたらとオカルト話に首をつっこんで、オカルト好きの大学生と知り合っては肝試しに参加している変わり者だった。

「まあ、そんな感じで彼らと知り合って、ちょっと喧嘩しちゃったからさ。」

「喧嘩!?何してるんですか。まったく。」

 変わり者だとは思っていたが、まさか鬼とトラブルを起こすなんて正気じゃないと、忠国は声を荒げていた。

「そ、そういう訳だから、引き続き案内…。」

「自分の不始末は、自分でどうにかしてください。では。」

 忠国は、政虎の言葉を遮り、ピシャリと断った。

 会長が変なことをしていなければ、自分があの子と再会することはなかったはず、そんな怒りを生徒会長にぶつけていた。

 とにかく、あの連中にはもう関わらない、そう忠国は決めた。


 生徒会室を出て、しばらく歩いていると、感じたことのない寒気がした。

『オマエ、ウマソウナヤツラト、イタ、ニンゲン…。』

 そんな気持ちの悪い声を聞いた後、忠国は意識を失った。

 

意識を取り戻したのは、屋上だった。

関わりたくない少女が必死に叫んでいて、何かをしたような気がするが忠国の記憶には残らなかった。

 ちゃんと意識が戻ったときには、もう死にたい気持ちでいっぱいだった。

 蔑んでいた少女たちに助けられた上、自分も邪が見える。

 邪が見える世界でなんか、生きている気がしない。

こんなの、普通じゃない。

 だから、屋上から飛び降りたのに。


また死ねなかった…。


 数日後―

 回復した忠国は、生徒会室に来ていた。

「生徒会、やめます。」

「あれま。どうしたんだい?」

「今回、ご迷惑かけたので。」

「君は悪くないだろ。邪に憑りつかれただけなんだから。」

 気を使っているというよりは、ただ事実を述べただけというような、淡々とした様子で、政虎は言った。

「あー、それとも、目的を達したら、僕は用済みってことかい?」

「!」

 思いがけない言葉に、忠国は言葉を詰まらせた。

「あの七不思議。昔から噂があったのは事実だが、ここまで騒ぎになったのは本当に最近のことだ。」

 先程まで淡々としていた口調は、いつの間にか重みのある口調に変わっていた。

 そして、太い眉の下にある瞳が、グッと忠国に向けられる。

「あれは君の仕業だろ?」

「…。」

「僕の想像だが、君は邪をこの学校で見てしまった。しかし、そのことをそのまま告げれば、どうして分かるのか話さなければならない。それでは、君の生活は今のままではいられない。」

 政虎の言葉を聞きながら、忠国は教室の窓から、校庭を闊歩かっぽする邪を見つけてしまった日のことを思い出していた。

 早く出ていけばいいのにと忠国は願ったが、その後も、邪は校内で度々見かけられた。

「そんな時に、僕が君を生徒会に勧誘した。僕はオカルト好きの変わり者だ。うまくやれば、ここに邪を排除する組織を呼んでくれるかもしれない。そのために、たくさんの生徒と接する生徒会役員の立場を利用し噂を広めた。」

 邪が校内に居座っている状況に耐えきれず、浅い考えと思いながらも実行した日々が忠国の中で走馬燈のようによみがえる。

「そして、思惑通り邪を排除する鬼がやってきて、邪は取り除かれた。君の目的は達成だ。君は明日からまた普通の高校生に戻る。」

 忠国の計画は政虎の言う通りだったが、最後の言葉に忠国は黙ってはいられなかった。

「普通な訳ない!!こんなのが普通な高校生な訳ない!」

「ああ、普通じゃあない。でも、僕は君を高く評価しているんだよ。」

「邪が見えるからですか。」

 忠国は半ば憎しみをもって睨みつけると、政虎は、意表を突かれたような顔をした。

 そんな表情を向けられて、忠国も肩透かしをあった気分になった。

「はは、違う違う。僕が君を評価しているのは、この短期間で情報操作をして、生徒諸君を浮足立たせたことだよ。」

 忠国の勘違いに微笑する政虎。

「君がそこまで行動力のある人間だとは思ってなかったんだ。まさか、この僕を利用する人間なんて君が初めてだし。」

 政虎は怒っているわけでもなく、むしろ楽しそうに語る。

「でも、僕の計画が成功したのは、会長が僕の計画を分かった上で、乗っかって見せたからでしょう?」

「『君が邪に憑りつかれて初めて君の計画に気づいた』と言っても、君は納得しないんだろうね。」

 忠国は政虎の能力の高さが怖くて、いつ気づいたのかとは聞けなかった。

 とんでもない人と関わってしまったと忠国は後悔した。

 政虎の考えはつゆほども読めない。

「とにかくだ。僕の生徒会には君のような優秀で愉快な人材が必要だ。」

「僕なんか優秀じゃないです。」

「んー。じゃあ、本当のことを言おう。」

 政虎はそう言うと、生徒会長専用の立派な椅子から立ち、忠国の傍まで歩いてきた。

 忠国は、少し身構えた。

「今回の件、僕は少しも迷惑だとは思っていない。むしろ、楽しかった。」

 忠国は予想外の言葉をかけられて、固まっていた。

 いまだかつて、同級生にこんなことを言ってもらったことがあっただろうか、なんて考えてしまっていた。

 そんな考えに浸っていると、政虎からスッと手が差し出された。

「君といると楽しいから、友として一緒にいてくれまいか?」

 そう言うと、屈託のない笑顔を向けた。

 政虎は全く読めない人間だが、その笑顔は本当の気持ちのような気がして、忠国はなんだか、くすぐったい気持ちになった。

 忠国は政虎の手を取った。

 すると、政虎は満足そうに笑った。


 邪を校内から排除する計画は終了し、忠国は生徒会役員に戻った。

 おかしな友人を得て。


「さっきからチラチラと見えてましたけど、なんでこんなに仕事が溜まったんですか…。」

 忠国は、机にある書類の山にため息をついた。

「僕は忙しい。ま、それにこの山の分だけ、君が優秀だったということだろ?」

「余計なこと言っていないで、手を動かしてください。」


 賢常高校の七不思議・おまけ

 生徒会室から夜な夜な小言が聞こえる


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