こんなに柔いとは思わなんだ
一羽の兎さんは、「昼の畳の上」で登場人物が「なぐさめる」、「卵」という単語を使ったお話を考えて下さい。
https://shindanmaker.com/28927
「あわ゛ー!」
昼間からガサバサ騒がしいと思えば、色気のない声。ふり返ると姉が、和室の入り口の隅っこで頭を抱えて突っ立っていた。これが日常の風景です。
「畳! 畳だよ! 和室の腐りかかった畳! フローリングじゃない、もっと優しげな愛ある和の床!」
「腐りかかった……優しげな愛って」
「わーわーわーわー!」
「うるさいんだけど」
「だって、一パック二二五円! 買ったばかりなのに、なのに……」
茫然とした姉の足元に横たわるのは、十個入り卵の残骸。俺が想像するに、姉は買い出しに行ったは良いが、その後よく考えもせず無造作にポンポンと品物を袋に入れてしまったのだろう。一番始めに入れられた卵たちは、その上からさらにバナナやら白菜やら大根やら牛乳等に押し潰され、帰って見ればあらビックリ。ほぼ全滅であった、と。
その事実に今さら気づいて、ショックのあまり取り落として、さらにダメージを……卵たちよ、永遠に。
「とりあえず鶏に謝っとけば。生命を粗末にしてすみませんでしたって」
「がぁーー!」
「その気味悪い叫び止めれ」
「ごぉーー!!」
「わざと? 誰も同情しないし」
不出来な姉は俺を一瞥すると、「弟が冷たぁい」と情けない声で泣き出した。姉弟とは所詮こんなもんである。
「これくらいの衝撃に耐えられなくてどうするの? キミを守れないんじゃ何のための殻なの?」
最終的に卵と会話をしはじめてしまった哀れな姉に近づくと、乱暴にわしゃわしゃ頭を撫でてやる。軽くて小さい頭はカクカクと人形のように動いていた。
一人っ子なので、純粋に兄弟姉妹って良いなと思います。
※同人誌『うさぎの短編集』にも収録されています。
詳細は活動報告を読んでください。




