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そこで一人震えているキミ! みんなでもっふもっふしてあげる☆ 「もふもふは正義だ企画」

あかし瑞穂様主催「もふもふは正義だ企画」参加作品。

※2016/2/22 一部修正しました。内容の変更はありません。

 外を見やればどか雪。すきま風がスースーして身体の芯までガタガタ震えている。布団にもぐり込んでもなかなか暖まらないのは、ここに暖房がないせいだ。そして、人間は一応恒温動物だけど……俺は基礎体温が低いためか、余計に暖まらないのだ(この間計ったら三四.七度と低体温過ぎて驚かれた)。

 せめて動物みたいに体毛があれば……


「そんなあなたのお悩みを即座に解決いたします! じゃじゃじゃーん。“うさぎになる実”! これであなたも『特別なうさぎ』の仲間入りです」


 目の前にいきなり現れたのは、一羽のうさぎ――流暢に日本語を話す、二足歩行で、手乗りサイズの、ぬいぐるみに良く似た『特別なうさぎ』――だった。


「さぁ、騙されたと思って。さぁ、さぁ、是非とも一口! 心配いりません、“人間になる実”もありますから」


 そういう問題か。いや、これはきっとあまりの寒さに弱っているんだ。今の自分が置かれている状況は、「寝るんじゃない! 寝たら終わりだ!」という感じなのかもしれない……そうだ、幻覚なんだこれは…………Zzz...


「あぁ、そんな! 今寝たらダメですぅー起きてくださいぃ。寝たらダメですぅ!」


 幻のうさぎは必死に小さな前足で俺の頬骨あたりをペチペチ叩いてきた。煩わしい、というかそこは目に近いから嫌だ。


「触るな」


 と一言つぶやくと、人差し指でピンッと軽く弾いた。そう、軽ーく一回。すると、


 「アッ!」という声とともに、


 ころころころころころころころころころっ

 ペチンっ


 面白いほど簡単に、それは玉のように転がっていき、部屋の隅っこの壁に当たって止まった。そして「きゅうぅ……むねんなりぃ……」と言いながら伸びてしまった。

 俺は俺で、弾いたときに一瞬感じた、ふわっと柔らかくも適度に弾力のある、そのうさぎの何とも言えない絶妙な触り心地に驚いていた。

 漫画で言えば両目を×か渦巻きにした状態で気を失っているうさぎに近づくと(寒いのにわざわざ布団から出て)、もう一度軽ーくつまんで持ち上げてみる。

 ふわっとしてふにょっとして……うん、なんだか癖になる不思議な触り心地だ。

 うさぎを布団まで連れてくると、また掛け布団にくるまり、そのお腹あたりを、ふにふにと押してみた。一回押すたびに「ピッピッ」と鳴き声がした。うさぎ……? あ、そもそも一般のうさぎは鳴かないか。

 心臓があるあたりに指を置くと、トクトクトクトクと速い鼓動が伝わってくる。

 なんか、あれだ。あったけぇ……

 俺はそのまま、ふわもふうさぎを両手に包んで眠った。



「ハッ! 一体どうなったのでしょうか? ……あれ!? ぅんんー離ちてー離ちてー」


 しばらくして耳元で小さな声がした。そして手の中の暖かい毛玉がもぞもぞペチペチしてくる。

 眠っていた俺は大きなあくびをした。


「むぅ、こうなったら……えいっ! “うさぎになる実”!」


 口の中に何か小さいものが入ってきた。舌触りはツルツルとした木の実のようで、食べられるような気がしたのでそのまま飲み込んだ。

 すると、次の瞬間には等身大のうさぎがドドーンと目の前に寝そべっていた。


「わー! やりました! ピはやりましたよ! これで『うさうさ町』に帰ることができます!」

「……は?」

「さぁ、特別なうさぎの仲間になったお兄さん。これからピと一緒に『うさうさ町』に行って、町のうさぎさんたちと押しくら饅頭をしましょう! どうせこんな雪山の小屋にいても助かりませんから、ピと一緒に瞬間移動して、皆さんと暖まりましょう!」

「え? あ……たしかに俺、雪山の遭難者だけど……え? これどういうこと?」

「‘うさうさ町’で一番偉い‘村長さん’が、また気まぐれを起こして、『これから“うさうさもふもふ押しくら饅頭”をするから、みんな町の外から一人ずつ寒くて可哀想な人間さんを連れてくるのじゃ! みんなが連れてくるまで、町に残ったみんなでずっと押しくら饅頭じゃ! 一羽一羽が責任を持って連れてくるまで、ずっと続けるのじゃ、ふぉっふぉっふぉっ!』ということで、ピはずっとあなたのような“寒くて可哀想で寂しい”人間さんを捜していたのです!」

「なんか……いろいろと突っ込みどころがあり過ぎて、どう返せば良いのかもわかんないんだけど」

「とにかく一緒に来てくださいー! イッチャイナ!」


 そしてピに半ば無理やり連れてこられた俺は……





 ギッシリ、ギュムギュム、モフモフ、ポヨポヨ、ホカホカ、ペチペチ、プユプユ、フカフカ、パインパイン、ポッカポッカ、ギッチリ、モッフルモッフル、ポヨヨンプルルン、ポンポン、ボンボン、ボンボコボンボン、ボンボコボンボン……


 という擬音が似合うような、大変ハードなうさぎの押しくら饅頭に一晩中押しくらされた。暖を取るどころか、暑くて息苦しくて、凍死よりもマジそっちのほうで死にそうで怖かった……



 以上が、今回の男子大学生雪山遭難事件にて、奇跡的に救出された男子大学生本人によって語られた、世にも奇妙なひと冬のもふもふ体験である。


果たして彼の体験は夢か現か。

「もふもふを愛でる」企画なのに、なんだろ、死ぬほど恐ろしい、もふりもふられ体験となった。

うさぎさんは正義だ!


※同人誌『うさぎの短編集』にも収録されています。

詳細は活動報告を読んでください。

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