天使VS悪魔 ‐今日も人間たちに翻弄されています‐
今日も今日とて、平和なんだか物騒なんだか。そんな地上を闊歩する人間たち。
そこには知られざる戦いがある。
「やい、悪魔! そうやって人間たちの心をもてあそぶのは、もうやめろ!」
純白の天使が、顔を怒りで真っ赤にしながら叫んだ。
「おやおや、天使ともあろうきみが、怒りに身をまかせるなんて、良いのかい?」
漆黒の悪魔が、小馬鹿にしたような顔をしながらキシキシと歯で笑った。
「うるさい! 僕だって、怒るときは怒るんだぞ! あの神様だって、怒るときは怒るんだ!」
天使は必死に反論しようとする。
しかし、悪魔は相変わらず、キシキシと歯で笑っている。
「あー、愉快愉快! 人間たちが神から離れて、自分から不幸へ陥っていく。ざまぁ!」
そう言って、黒いしっぽが、嬉しそうに鞭のようにしなる。
「みんな不幸になれー! みぃんな今が楽しければ良いのさー! ははははは」
「くそぅ、悪魔め……どうにかあの子をとめなきゃ」
天使はひやひやしながら、一人の少年――おそらく少学校高学年くらいだろう――を見つめている。
少年は本屋さんに入り、あたりをきょろきょろしながら店内をうろついている。
万引きをしようとたくらんでいるのだ。
「良いね、万引き! スリル満点だし、盗んだ本をまた売ればお金になる」
悪魔はそう言って、少年の背中を見えない手でちょいちょい押した。
「黙れ! やめろ! あっち行け!」
天使は慌てて、悪魔を少年から引き離そうとする。
しかし、うまく近づくことができない……
悪魔と少年の思いが同化し、共鳴してしまっているのだ。このままだと、この少年は本当に万引きをしてしまう。
「駄目だ、そんなことをしても、きみの心は満たされない!」
天使は今にも泣きそうな声で叫んだ。
その横では悪魔が余裕綽々としている。
「あきらめて、他へ行きな。こいつは常習犯さ。もうすでに俺の言いなりだよ」
悪魔は今にも踊り出しそうな勢いだ。
「…………まだわからないぞ」
「はぁい?」
「人間はいつだって裏切るからな! お前だって、こうしていられるのは今のうち、いつかまた裏切られる」
そして天使は、シュンッと姿を消した。
「……天使にまで言われてやんの。人間って本当に優柔不断でわがままだよなー」
悪魔は耳垢をほじりながら、そんなことをつぶやいた。
To be continued.
※同人誌『うさぎの短編集』にも収録されています。
詳細は活動報告を読んでください。




