01 神さまの拠点の日常
神さまは世界を観察したい 2期のスタートです!
是非またお付き合いください!
記念すべき最初の舞台は『神さまの拠点』。
でもスタートからジロさんは溜息ばかりです。
人々が生まれるよりも、はるか昔……
創造神は、大地を作り、大気を作り、水を作り……そして魔力に満ちた世界を作りました。
やがて何もない大地に1本の木が生まれました。
創造神は、その木を祝福しました。
すると、その木は魔力と生命力に満ちた世界樹となりました。
世界樹は森を作り動物達を生み出しました。
そして自然を守護するドラゴンを生み出しました。
森を守護する深緑竜
海を守護する白氷竜
火山を守護する獄炎竜
ドラゴンは普段その姿を見せないのですが、守護する地を害そうとすれば国を滅ぼすほどの脅威となります。
世界の自然との調和はこうして守られているのです……
これはバートン王国の設立以前から伝わるという創世の神話です。
バートン王国……
ジロさんは、このバートン王国王都に拠点を構え、行商を生業としています。
とは言っても行商人は旅に出ていることが多く、自宅は仕入れの際に王都に戻ったとき以外は使用していません。
なのでジロさんは、妻と子供達を連れて旅しながら商いを行っている日々を過ごしていました。
そんなある日のことです。
ジロさんは馬車を走らせ、深緑の森沿いの街道を移動しているところでした。
運の悪いことに、そこを盗賊に目をつけられてしまいました。
ジロさんは意を決し深緑の森に逃げ込むも、悪路で馬が怪我をしてしまい万事休す。
その窮地を救ってくれたのが、森の管理者と呼ばれているドライアド様とその弟子の少年、タイヨー君でした。
この出合いをキッカケに、今は神話の世界に存在するものと思われていた世界樹に、なんと住んでいます。
しかも、ここの住人たるや深緑竜様に白氷竜様に獄炎竜様……まさに神話の世界そのものです。
何という場違い感……
ジロさんは至って普通の行商人。
こんな神話の世界の住人と一緒に生活する人ではないのですが……
今日も、この『神さまの拠点』と呼んでいる場所では、ジロさんの子供達が遊んでいます。
ドラゴン様達や精霊様達と魔法を打ち合い、剣を交えながら。
今は長男のスコット君と獄炎竜の紅炎様が剣をぶつけ合い戦っています。
……笑っていますが。
ただの剣での稽古ではないんです。
スコット君が手にするのは氷魔法で生成した氷の剣。
紅炎様が手にするのは白い炎を吹き出す炎の剣。
これがぶつかり合うたびに、炎やら蒸気やら氷やら……普通の剣技ではあり得ない物が飛び散っているのです。
紅炎様の剣が物凄いスピードでスコット君を襲いますが、それをスコット君は的確に剣でかわしていきます。
するとそこにゲイル様が繰り出す風魔法の『風の刃』がスコット君に襲いかかります。
でもスコット君は落ち着いて『結界』と唱え、氷の壁を出現させ風の刃を防ぎます。
この世界における最強種のドラゴン二体を相手に、負けず渡り合う少年。
「ハァ……。」
深い溜息をつくジロさん。
「どうしたんだい?あんた。」
そこに現れたのはジロさんの妻フリッチさん。
彼女は人族の父とエルフの母から生まれたハーフエルフです。
魔法に長けているエルフの血筋でしょうか?
それともこの神話の世界のような場所のせいでしょうか?
フリッチさんはこの場所に来てからと言うもの、火・水・風・土・精霊の魔法を自在に操れるようになり、その卓越した能力を家事のみに使っているという、魔法の研究者が聞いたら羨ましいような呆れるような使い方をしている『魔法主婦』です。
さらにその長男であるスコット君は、まだ幼いながらドラゴン様や精霊様と模擬戦と言う遊びを通して、その能力を開花させました。
そしてその能力は未だ底が計り知れません。
こんな面白い子供は他にはいない……
長い時を生きているドラゴン様と精霊様は退屈していたのです。
結果、模擬戦……もとい遊びは日々激化していました。
「何というか……うちの子達がどんどん人外になっているような気がしてね。」
そう言って再び溜息をつくジロさん。
「何言ってるんだい。うちの子達は普通の子だよ。ちょっと先生に恵まれただけじゃないか。だいたいスコットはあんたの後を継いで行商人になるつもりでいるんだよ。なら護身術の一つも身に着けておいた方が良いじゃないか。」
確かにそうです。
行商人は商品を荷馬車で運び、街から街へと旅する仕事です。
盗賊や魔獣のいるこの世界で、己の実力を高めておくことは、じつは重要な事なのです。
場合によっては護衛を雇うこともあります。
大きな小隊などでは自前の護衛団も雇っているほどです。
なのでジロさんも理解はしています。
「でもあっちはどうなの?」
ジロさんの視線を追うフリッチさん。
そこにいるのはドライアドのライア様とウンディーネのディーネ様を相手に模擬戦……もとい遊んでいる愛らしいわが娘、フラックス。
ライア様が無数の草のツルを地面から伸ばし、それでフラックスちゃんを捉えようとしています。
フラックスちゃんがかわいい声で「『かまいたち』ちゃん!おねがい!」と言うと、可愛らしい小動物が現れました。
その小動物は両腕を、その容姿とはとても似つかわしくない鎌に変化させ、向かってくるツルをすべて切り落としました。
すると今度はディーネ様が氷魔法で『氷の槍』を飛ばしてきます。
フラックスちゃんは今度は「『雪ん子』ちゃん!おねがい!」と言うと、これまたほのぼのとした雪だるまが現れて氷の槍を食べちゃいました。
その様子を見てライア様は満足そうに言います。
「凄いわ!フラックスちゃん!精霊たちと、とっても仲良くなったのね。」
すると、にっこり微笑みフラックスちゃんは頷きます。
「うん!かまいたちちゃんも雪ん子ちゃんもとっても可愛いの!!」
「ううっ!眩しい!かわいい!」
ライア様がフラックスちゃんの笑顔に悶絶しました。
「今度は紅炎さまに火の精霊についても教えてもらうといいわ。」
ディーネ様も満足そうにフラックスちゃんに言います。
ところがフラックスちゃんは突然顔を赤らめモジモジしました。
「でも紅炎様はかっこいいから恥ずかしくなっちゃうの。」
「ううっ!眩しい!かわいい!」
ディーネ様がフラックスちゃんの照れる姿に悶絶しました。
「ハァ……。」
その様子を見ていたジロさんは何度目かの深い溜息をつきます。
フリッチさんもこれには苦笑い。
「女の子で普通の魔法どころか精霊魔法まで扱えるなんて……」
エルフの中でも稀にみられる精霊魔法。
精霊を信仰する者に精霊が応えることで具現化する魔法。
ですが、教えるふたりが大精霊のドライアドとウンディーネ。
そしてその二人が悶絶するほど大好きなフラックスちゃん。
もうどんな精霊たちもフラックスちゃんに従います。
フリッチさんは、
「まぁ良いじゃないか。これで可愛いフラックスに悪い虫が付かなくなると思えば。」
と言って大笑い。
まあ……確かにそうです。
父親のひいき目を差し引いてもフラックスちゃんは美少女に育ちました。
やはり容姿端麗なエルフの血を引いているからでしょうか。
ライア様やディーネ様、更にこの世のものとは思えない別次元の美人である白氷竜のユキ様達と日頃一緒に過ごしているからでしょうか。
護身の力を身に着けることは悪い事では無いのですが……
「ハァ……。」
この世界における最強種と渡り合う2人の我が子たちを見て、将来どうなってしまうのか不安でしかありません。
ジロさんの溜息が止まることなく続きました。




