表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第一話『ゴーヤの苦さを知る夜』

(語り:わたし)


夕暮れの街を歩く足どりは、少しだけ緊張をまとっていた。

久しぶりに会う友達とのご飯。

でも本当は、ただ美味しいものを食べるだけじゃない気がしていた。


居酒屋の扉をくぐった瞬間、やさしい光とあたたかい匂いに包まれる。

運ばれてきたゴーヤチャンプルー。

少し迷って、それでも一口。


あの独特の苦みが広がったとき、なぜだろう――

わたしの中の“話せなかった記憶”が、ふと顔を出した。


「実はね……」

気づけば、過去の傷を、すっと言葉にしていた。

震えるかと思ったけど、意外と静かだった。


彼女は黙って聞いてくれた。

「そうだったんだね」

それだけの言葉が、心の奥にすっと染みていった。


ゴーヤの苦さと一緒に、わたしの記憶も、胃袋の中にゆっくり溶けていった。

苦いだけじゃない味。

それは、やさしさの形をしていた。


帰り道、心はまだふわふわとしていたけれど、

その夜の空は、やけに澄んで見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ