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 すぅ…、と写真を貼りつけた壁から白い影がすりぬけてきて人の形をとると、日和の前で写真とまったくおなじ形をとった。

 黒髪はけて向こう側がみえるし、風もないのにたゆたうようにゆれている。


 存在が希薄な証拠だ。


 現実味がなく肌は病的に蒼白あおじいのに、その表情はいたずらを思いついた小悪魔のように蠱惑的こわくてきな笑みでいろどられている。


 幽霊だ。


「悪霊退散ナンマダブエロイエロイレバサバクタニナムミョーホレンゲキョアッサラームアライクムウーパールーパーゴートゥーヘブンナマムギナマゴメナマタマゴテンニトドケヨコノオモイ!!」


 思いつくかぎりの経文きょうもん聖典せいてんを唱えてみる。

 片目をあけると、少女の幽霊はいなくなっていた。


「やった! オレのお祈りがつうじた!」


「うふふ」


 耳元で甘いささやきが聞こえる。

 うしろから抱きつくように日和をつつみ、少女の霊はたのしそうにクスクス笑った。幽霊のくせに、吐く息が耳にふれて妙な期待にこころがゆらぐ。


「やわらかい身体。おおきくて熱くて今にもはちきれそう」


 透明な手が日和の胸をなでるように移動し、おへそをくだり、腰を過ぎる――


「うぉ」と声をあげて日和は、あわててその場から立ちのいた。


「うふふ」と少女は笑みを浮かべ、指先を舌でもてあそぶ。

 写真から受けた印象とは正反対に、卑猥ひわいでエロチックだ。


「まて! 話し合おう! そういうことはお父さんとお母さんによく相談してから正式な手順を踏んでからじゃないと」


 なにを言っているんだ、と日和は混乱した頭で自分に拳骨をいれた。オレにはあえか様がいるじゃないか!


「そう? 今の時代はそんなことはないようだけど」


 少女は足音もさせず床をすべってくると、くちびるが触れる寸前まで顔を近づけた。

 純情少年春日日和15歳。ほほを赤くして一歩下がる。

 どんっ、とその背が壁に当たった。


「ふふ……はじめてなのね。やさしくしてあげる」


 近づいてくる少女に向け、日和はさけんだ。


「いやー! 最初はノーマルなのがいいのぉぉぉぉ!!」


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