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二霊二拍手!~昇天巫女様とゆかいな下僕-アコースティックVER.-~  作者: にゃん翁
第二話 狂犬騒乱(きょうけんそうらん)
38/86

/19/

 翌日。

 道場に着いた日和は、大沢木を囲んでなやんでいる金剛とあえかをみかけた。


「いっちゃん! 元気になったのか?」

「ああ、心配かけちまったな、日和」


 もとのやさしげな目を取りもどした旧友をみて、日和はうれしくなった。


「師匠、と金剛サン、どうしたんですか?」

「いや、なに」


 金剛はしきりに首をひねり、あえかに困った目をむけた。

 あえかも困ったように目を伏せる。


(困った顔もおうつくしい)


狗神いぬがみはらおうとおもったのですが……」

 あえかは手にもったお祓い棒をかかげて、細い息を吐いた。

「祓えないのです」


「祓えない?」


「うむ。魂との癒着ゆちゃくがおおきすぎてな。ワシ等ではどうしようもない」

「でも、元気じゃないすか。いっちゃん」

「ひーちゃん、そうなんだよ。早く解放してくれねえかな。おふくろが心配するんだ」

「電話入れたのか?」

「ああ、朝一によ」


 照れたように、大沢木は言った。


「このまま様子を見るしかありませんね」

「そうじゃな」

「大沢木君。本日よりあなたも、この道場へきなさい」


 日和と大沢木はそろって声を上げた。


「「はぁ!?」」


祓魔ふつまの法がわかるまでは、経過を見ることにします。ただぼうっとしているのもつまらないでしょうから、あなたも『真心錬気道』を習ってみるのはいかがでしょう。きっと良い経験になりますよ」


「ちょ、ちょっと待った師匠! おかしい、それはおかしっすよ? ここの門弟になるにはきびしい試験が……、それに、大沢木君だってそんないきなり」

「いいぜ。あんたにゃちょっと興味がある」


 日和は全身セメントと化したかのように固まった。


「良いでしょう。ならば今日から」

「待て! いっちゃん、思い直せ! これ以上人が増えたらオレの当初の目論見もくろみが! 未来予想図が! あえか様のチチが! 遠ざかってしまうだろう!」

「春日君はだまってなさい」

「いーや師匠、言わせてもらいますよ。俺がどれだけの覚悟でこの道に入ってきたか」


「やっほー、おっまたせ」


 美倉みすずがあかるく入ってくる。


「なにやってるんですかー? みんなで」

「そうだ師匠! あーゆーテンパな娘が一人いるだけで、この道場の風紀ふうきが乱れる! オレと師匠の甘ずっぱい空気が乱される!」

「あれ? 大沢木君がなんでいるの?」

「ああ? 誰だよおまえ」


 大沢木はするどい目ツキに変えると、みすずに向けて言った。


「オレはてめーみてーなチャラチャラした女が大ッきらいなんだよ」

「な、なによー! あんたなんか小二のときにコクってフられたくせに!」

「な、何で知ってやがる!」


 顔中真っ赤になって、大沢木が立ち上がる。


「誰だ! 誰がしゃべったんだ!?」

「あ、えーと、ね……そう、春日君!!」

「日和てめー!」

「待て、違う! なんかよくわからんが誤解ごかいだ! わかった! 入門許可するから!」


 なかよく道場を駆けまわる3人を見た金剛は、手にもつ酒ビンに直接口をつけ、ごくごくと水のように飲み干した。

 ぷはぁ、と酒臭い息が吐きだされる。


「さわがしいのう」


 彼の言葉に、あえかも微笑んでうなずいた。

「ええ。とっても」


 後日、大沢木は入門テストを受け、難なくクリアした彼は、無事『真心錬気道』への正式入門を果たした。

 そのとき日和がどうだったかというと……どうでもいい話であった。


(to be continue...)

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