22.黒龍の洞窟-8
今の僕が持つ全ての意思力をかき集めてナナから視線を逸らす。
あからさまにするのも悪いんで、あくまで視界の端に留める程度なのがポイント。
難易度が上がる分、得点的な意味のポイントも上がると思いたい……っとと。話題を変えよう。
「そ、それにしても凄く解呪できたね」
「ううむ……一部使えない秘宝が交ざっていたのが不服だな……国宝の癖に」
「そこは寧ろ大部分が解呪に使えたことを喜んだ方が良いんじゃない?」
「逆に考えるんだ」ってヤツ。
というか正直、そこまで貴重なアイテムがそんなに人間サイドに偏ってるとは思ってなかった。
ゲーム知識でも、本当にレアな終盤のアイテムほどダンジョンとか宝箱からゲットするものだし。
「……それで、どうなったの?」
「えっとですねー!」
いやぁ、どれだけ見てても飽きないなー……じゃなくて!
種族は相変わらずで、レベルは42。
いつの間にかプラスになってたことを祝っておく。
ナナの解呪は僕が何かするまでもなく順調に終わりそうな気がしてきた。
まあ、これは早ければ早いほど良いんだけどね。
……前は話の勢いで言っちゃったけど、冒険者として本当に世紀末スタイルを変更できる秘宝を探すってのも良いかも。
他にもグルメに関する秘宝とか技術とか探して世界中を旅して回るとか、面白そうだ。
うん、もうこの世界で十分に楽しく生きていけそう。
「ケイ……おいケイ、意識が飛んでるぞ」
「はっ!?」
「前に妖魔の大発生に立ち向かったと聞いたが、お前たちのレベルはどれくらいなんだ?」
「僕は91だよ」
「……私は104」
「成程な……時にサーシャ、明日は洞窟の外で普段通りに過ごしてみろ」
「……どういうこと?」
「言葉通りの意味だ。少し興味が湧いた」
納得はしたけど、どうも意図が掴めない僕とサーシャは首を傾げる。
と、ポケットの中が少し動いた。
別に出てくる訳でもないし、猫が寝返り打っただけかな?
折角の機会だし、ベルに質問をぶつけてみる。
「そういえば拾ってきた猫っぽいのだけど、ベルは何か知ってるの?」
「当然だ。ソイツは――あれ、今どこにいる?」
「ポケットの中で寝てる」
「そうか。まあ簡単にそいつの正体を明かすなら虎だな」
「白虎とか?」
「違う。雪虎だ」
ベルの説明によると、雪虎の外見は僕の知る虎とあまり変わらないみたいだ。
天狐と同様に高い知能を持っていて、氷と幻の扱いに長けているらしい。
吹雪虎に進化する者もいるとか。
「あと、お前はソイツを子供だと思ってないか?」
「違うの?」
「魔力の感じからすると、ソイツは転生してるな。記憶は無いようだが」
「転生? フェニックスとかなら知ってるけど……」
「その例を知ってるなら話は早い。天狐や一部の龍もそうだが、一定以上に力を高めると転生で若さを取り戻せる場合があるのだ」
「永遠の生命ってやつ?」
「いや、一回転生できたから次も出来るとは限らない。それに手順が面倒で、失敗すると弊害もある」
「コイツも何かあったってことかな?」
「恐らくそうだろう。無理に記憶を引き出しても良いが、今の精神は上書きされて消えることになる」
「前の雪虎さんには悪いけど……それは嫌かも」
「じゃあ真相は闇の中、だな」
うーん……まあ記憶が無いなら、子虎って認識で良いか。
何か名前を考えた方が良いかな……。




