表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見えすぎる者 ~死が見える俺は、嫌われて見送る~  作者: 浦賀やまみち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/4

第01話 呪われたスカウト、追放される




《死亡まで:あと72分》



 その数字が、視界に浮かんだ。


 森の中。木の根元に倒れているのは、ラーナ。

 カイルは、はっと目を見開く。


 視界が切り替わる。

 雨に濡れた木々の匂いは消え、代わりに豆の香りが鼻をついた。


(……気のせいか)


 胸の奥が、妙にざわついていた。

 右斜前の少女に視線を向ける。


 ラーナは、何事もなかったように、豆のスープを啜っていた。




 ******




「カイル、お前はもういらない」



 その一言で、すべてが終わった。

 朝食を済ませ、宿屋前に皆が揃ったところだった。


 活気が溢れる前の路地の空気は、まだ新鮮で冷えきっている。



「理由はわかるな?」



 カイルは、すぐに答えられなかった。

 一拍、遅れる。



(……少しだけ)



 頭の奥に、靄がかかったような感覚。

 思考が鈍る。


 言葉を選ぶだけで、時間がかかる。



 ◆◆◆


《――1%》

《――失敗》


 ◆◆◆



 拒みたくても拒めない断片が頭の中に滲む。

 振り払っても、消えない。


 昨夜よりガクンと下がっている数字。


 理解した。

 自分が外れるからだ。


 パーティから自分が抜けたための数字だ。

 結果、沈黙になる。



「……やっぱりな」



 男が吐き捨てる。

 最近、『勇者』と呼ばれているらしい。



「お前は反応が遅い」

「……俺の報告が、気に入らないから、ですか」



 ようやく出た声は、平坦だった。

 勇者は首を振り、溜息をついた。



「違う。役に立たないんだ」

「スカウトに必要なのは『今』の情報だ。

 敵の位置、数、罠、経路。それだけでいい」



 正論だった。

 カイルも理解している。



「だけど、お前のは違う」



 勇者の声が低くなった。



「この先で失敗する、だの……。

 成功率が低い、だの……。

 そんな曖昧な話は判断の邪魔だ」



 ◆◆◆


《成功率:1%》

《結果:敗北(回避不能)》


 ◆◆◆



(……曖昧、か)



 口の中の苦さを飲み込む。



(だけど、それを言ったところで……。また……。)



 それがどれだけ正確か、カイルだけは知っている。



『右だ、行くな』



 そう言った。

 だが、無視された。



『……お前たちはお前の操り人形じゃない』



 血の匂い。

 命を燃やし尽くす叫び。

 倒れる音。



「それに……。」



 勇者の声が、現実に引き戻す。



「お前のは、気味が悪い」



 空気が重くなった。

 誰も否定しない。


 魔法使いも。



 ◆◆◆


《職業:氷の魔術師》

《状態:死の予感・極強》


 ◆◆◆



 剣士も。



 ◆◆◆


《職業:我流剣士》

《状態:死の予感・強》


 ◆◆◆



 そして、神官も。

 カイルは、ゆっくりと視線を向けた。



(……やめろ)



 わかっている。

 見たくない。知りたくない。



(……勝手に、流れ込む)



 それでも、目を合せてしまった。



 ◆◆◆


《名前:ラーナ》

《性別:女》

《年齢:15歳》

《職業:神官見習い》

《状態:寝不足、精神動揺》

《感情:罪悪感、未練》


 ◆◆◆



 視線が逸らされた。

 その目が勇者に一瞬だけ向けられる。



 ◆◆◆


《絆:恋人(対象:勇者)》


 ◆◆◆



 昨夜にはなかった情報の追加。

 それだけで、十分だった。



(ああ……。)



 ノックしても開かないドア。

 今の距離。


 全部、繋がる。


 解放すれば、もっと明確に知れる。


 重さも、鈍さも消える。

 世界が、はっきり見える。



(でも……。見えすぎる)



 感情も。

 選択も。

 結末も。


 そして、それを口にすれば。


 人は、離れる。

 親でさえ、そうだった。


 だから、抑える。

 重いままで。



「返事は?」



 勇者の声が落ちる。


 カイルは、ほんの一瞬だけ迷った。

 胸の奥が、わずかにきしむ。



「……そう、ですね」



 頷いた。

 もう一度だけ視線を神官に向ける。



 ◆◆◆


《状態:寝不足、精神動揺》


 ◆◆◆



 視線をずらす。


 嫌でも、目に入る。

 剣士と魔法使いの変化が。



 ◆◆◆


《状態:確定の死》


 ◆◆◆



 胸のざわつきを振り払うように、背を向けて歩き出す。



(……そうか)



 見上げれば、空は青く高かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ