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三雪目



ユニーク:2,000人突破!

PV:10,000人突破!

ありがとうございます!








「ん…」



「お目覚めですか?パリシア様」



目が覚めたのは、村じゃ裕福な方だった今の家どころか、男爵という低い爵位だったけど下手な伯爵以上の財力を持つ我が家よりも豪奢で、なおも品格を失わない、何度か入った事のある造りの部屋。

ええ、お城にお勤めしていた時に何度か用事で来た若後宮、王太子の妃や妾の住む宮殿です。

まあ、国王が愛妻家なのに国の軍が動いたって事は、王太子が濃厚だし驚きはしない。


それにしても、村から王都までの1ヶ月はかかる道のりで一回も目を覚まさないとか、大方魔術をかけられたな。



「名前をお聞きしても良いかしら?」



10の半ばになるかならないかのいくつか年下だろう少女ではあったけど、後宮に放り込まれた私のお世話をするんだから、当然爵位持ちな訳であり、我が家が男爵な訳だから、爵位持ちは無条件に同等以上になるから下手はうてない。



「あっ、はい!メリッサ・ダンジョヌと申します」



ダンジョヌ家って侯爵家なんだけど!

確か、先代と今代の当主が無能で没落した名ばかりの貴族。それにしたって侯爵家の後ろ添えはなぁ。



「えっと、じゃあ、今の状況分かる?」



「え…えー、と…その…」



言い淀む所を見ると知っているし、まともじゃない。多分、子供のためで正解だろう。



「それについては私が代わりにお話しますよ」



声のした方、もとい部屋の扉を向けば、なんともキザっぽい男がいた。

確か、王太子の乳兄弟にあたる有能な出世株で令嬢からの評価も高い、ポーストン伯爵家長男・アレックスだった気がする。



「では、お願いします」



「ええ。まあ、まとめるとプロイス様とスレルト様の特徴を併せ持つ子を産んでもらいたい」



真剣な顔で言われても、こちら的には、はい正解!と道徳的にちょっとぉ。という本音しかない。



「あの、私、人妻」



「不自由はさせません!無理を言ってるのは重々承知。なので、国を潰さないかぎりの贅沢を許しましょう!」



「いりません」




人の話を遮るポーストン様に即答してしまったのは不可抗力だ。コイツが唖然としてこちらを見ようともな!

てか、不自由しないのは物資的な意味で、実質軟禁という不自由させる気満々のくせして何言ってんの!許すとかも、上から目線だって気付いてる?!



「帰してください。私の大切な家族達が待ってるんです」



「…貴女は、王太子の側妃となれるのですよ?」



不審な目で見られようが要らん!

逆にどんだけがめつい人間見てきたのさ!

いや、それともポーストン様ががめつい人間なのか?



「私は、ただ穏やかに過ごしたいだけなのです。豪華な暮らしはいりません」



特にこんな陰謀渦巻く王宮はごめん被る。



「ですが!!」



「ポーストン様。ポーストン様は、次期宰相候補とも名高い方。わたくしの実家…分かりますわよね?」



我が国有数の財力を持つ私を我が家の承諾なく、我が家の娘として嫁がせるなど許されるはずがない。



「………男爵家だろうと問題などありません」



眉間に皺を寄せながら、苦し紛れに言う所をみると、言いたいことは伝わったらしいが、あえてそこを無視しやがった。

もちろん、流してなんてやらないけどね。



「そうではなく、我が家は国有数の財力を持っております。こんな勝手が許されるとでも?」





「勝手など!側妃になれるんですよ!家にとっても名誉な事です!」



「…はぁ、では、行方を眩ましたわたくしを家族が勘当した場合は如何なさるおつもりで?」



ポーストン様は、やたら『側妃』を推してくるけど興味ないっての。

それに、家も身分も身内も捨てた人間が身分に魅力を感じて承諾すると思ってるなら、コイツ馬鹿だ。



「……それは…」



「側妃になさりますか?国境近くの辺鄙な村のその中では少し裕福な家の子持ちの人妻を」



「なっ、何が不満なんですか!?」



詰まるポーストン様に淡々と問えば、焦ったような声で問われる。

いやぁ、まだまだ青いね。相手のペースに乗せられるなんてね。


「プロイス様は、歳も18ですし、誠実で一途な上に、有能で歴史に名を刻む賢王となられるとまで言わしめる方ですよ!!」



ポーストン様が熱く語られるが、元王妃付きの侍女だったわけだし、知ってるし、本人にも会ったことある。

さらに言えば、王太子が死体愛好家だって事も知ってるわ!



「スレルト様も14と幼さは残りますが、純粋で明るく人懐っこい美少年ですよ!?」



私の反応の薄さにさらに焦ってるが、私人妻、相手愛し合ってる、だよ?

でも、スレルト様ねぇ。聞いたことあるような、ないような…。


低めの爵位かな?



「そんな方々の子を産めるんですよ!?」



ポーストン様の必死さは伝わってくるけど、常識的に考えてほしい。

人妻に他の男の子を産めとか、簡単に承諾するような人間、国を潰す程の貪欲娘かアバズレ女でしょう?

貪欲もアバズレもなりたくない。



「で?」



「え…」



「で?どうなの?」



「どう…とは?」



「辺鄙な村の人妻を側妃に出来るの?」



「ッ………!」



「そこに戻るか?!」みたいな顔されてもねぇ。私も村に戻りたいし、弱点は容赦なく突かせてもらうよ。



「それは…」



「それとも、仮にも元になろうとも国有数の財力を持つ貴族令嬢だったわたくしを妾と言う名の性奴隷にしようと?」



「そんなことは!!」



「ええ、そうですわよね。それこそ我が家への侮辱として、反旗を翻されようとも文句言えませんものね?」



「だから帰せ!」という意味を遠回しに言えば、苦虫を噛んだような顔をされる。



「どっ、どうやら、キミは今、疲れているらしい。休むといいよ!」



言いたいことを言うとすぐに部屋から出て扉を閉められた。

くっ!言い逃げしやがって!!



「あの野郎!ふざけやがって!!」



「……あ、あの…」



「あ゛?………あーと…お、お見苦しい所をお見せしました?」



やっば!

ダンジョヌさん居るの忘れてた!

あー、怯えられてる。口の悪さに怯えられてる…。

ベッドの横でぷるぷる震えてるよ!



「あの、お着替えしません…?」



「え…?…あー、はい。出来れば、お風呂も入らせてもらえません?」



「はい!」



ダンジョヌさんに言われ、自分を見てみれば、魔術で綺麗にされていたようで、汚なさはないけど、1ヶ月同じ服だったようだ。

さすがに魔術で綺麗にされてても気持ち悪いので、お風呂の準備も頼めば、明るく元気な返事が返ってきた。



「あっ!」



「ん?」



「あの!私は、今日からパリシア様の侍女を勤めさせていただく、メリッサ・ダンジョヌと申します。どうかメリッサと呼んでください」



「…ああ、うん、よろしくね、メリッサ」



「はい!では、私はお風呂を沸かして参ります」



部屋を出たメリッサ。

にしても、確かに侍女だってちゃんと言われてなかったな。

若後宮の一室に侍女の服を着た娘に敬語と来れば、元職場なのもあって予想くらい容易かったので、普通にスルーしていた。



「まだ、朝か…」



窓から外を見れば、日はまだ昼にも届いていない。

ああ、長くて退屈な1日が始まるのか。








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