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大事な物は……(末っ子8)  作者: 夏目 碧央


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11/11

水を得た魚

 ワールドツアーが始まった。国内を皮切りに、アジア、アメリカ、南米、ヨーロッパと続く。こんなに長くツアーをするのは初めてだ。そういった意味でも、俺たちのグループは新たなフェーズに入ったのだ。

 長くツアーを続けるという事で、かつてのスケジュールとは違って日程がゆったりだった。コンサートは一日に1公演だし、三日以上は連続しないなどの配慮があった。休みの日には出かける事も可能だ。せっかくのワールドツアーだから、観光したり名物料理を食べたり、楽しみたいと思っている。

「レイジは出かけないでいっつも一人で運動してるよな。しかも、動画観たりとかもしないで、ひたすらランニングマシーンで走ってるんだぜ。」

だがしかし、テツヤがメンバーの前でそう愚痴をこぼす事態になっている。だって、体を整える為には運動が必要なのだ。日中は体を休め、公演のある夜の時間帯に運動をすると良いのだ。

「明日、兄さんたちとピックルボールしに行くんだよ。レイジも行くだろ?」

テツヤが期待を込めた顔で俺を見上げるものの、やっぱり運動が……。


 久しぶりの7人でのコンサートは、想像以上に楽しかった。何せ、テツヤが楽しそうなのだ。最近はすっかり大人らしくなって、ライブ放送をみんなでしていても、テツヤは黙って座っている事が多いのに、コンサートとなるとアドリブをかましまくり、メンバーに、というより俺にちょっかいを出してきて、やはりここでも仲良しアピールをするのだ。例のハンドサインも急に挟んでくる。俺、慌てて合わせようとして間違えてしまった事も。それでもテツヤは笑って許してくれる。そしてまた最初からやるのだ。

「あはははは、レイジ、もう一回だぞ!」

すごく楽しそうだ。まさに水を得た魚のようだ。テツヤが楽しいと、俺も楽しい。


 アメリカのラスベガスでのコンサートが終わり、翌日は休みという日。メンバーみんなで食事をしに出掛けた。美味い肉を食べ、少しだけワインを飲み、気分は最高潮に。幸せだ。

「タケルの足もだいぶ良くなって、良かったな。」

ユウキ兄さんが言い、

「そうだな。バッチリ踊れてる。」

シン兄さんが優しい顔でタケル兄さんを見ながら言う。

「まだちょっと痛くて。バッチリ踊れてるかどうか。」

タケル兄さんが照れながら言う。

「でも、7人全員でまたコンサートが出来て、嬉しいです。」

テツヤが目をキラキラさせて言う。なんて……可愛いんだ!

 ふと気づけば、横からカズキ兄さんがニヤニヤしながら俺を見ていた。何か言いたい事でも?

 ホテルに帰ってきて、みんな思い思いに部屋へ戻る。

「お休み~。」

「お休みなさい。」

お互いにそう言いつつ、あくびなんかをしつつ、部屋へと戻る。部屋は必ずしも並びではなく、階が違うメンバーもいた。なんと、俺とテツヤの階も違うのだった。

「じゃあ、お休み。」

テツヤが俺とカズキ兄さんにそう言って、手を軽く上げた。俺とカズキ兄さんの部屋は隣で、テツヤの部屋の1つ上の階だった。

「おう、お休み。」

カズキ兄さんがそう言った。エレベーターがテツヤの部屋のある15階で止まった。扉が開き、テツヤが降りた。俺は一瞬迷ったが、閉まりかけた扉をこじ開け、エレベーターを降りた。

「カズキ兄さん、お休み!」

「おう、頑張れよ~。」

カズキ兄さんの間の抜けた言葉を背に、俺はテツヤを追いかけた。テツヤが角を曲がったので、俺は急ぎ足になってその角を曲がった。テツヤがカードキーをドアに押し当てている。静かに、だけど大股になって近づく。テツヤがドアを開けて入るところで、俺はそのドアに手をかけた。

「おわっ、びっくりした。」

テツヤが言った。

「明日、休み、だし。」

ちょっと息が上がっていた。

「いいよね?」

だが、すぐに息を整えて言った。するとテツヤは、

「え、でも疲れてない?」

と言う。俺はすかさず、

「疲れてない!」

と言い切った。するとテツヤはふっと笑った。そして、部屋に入れてくれた。

「公演中、煽ってたでしょ。」

俺が言うと、パッと目を見開くテツヤ。

「え、何の事?」

「俺の目の前で腰、振ってたじゃん。」

すごく、エロかった。

「お前だって、俺の首、生肌触ってきたじゃん。」

と、テツヤ。

「感じた?」

「レイジ!お前なあ。」

だが、それ以上は言わせないように、口をふさいだ。コンサート中に首のところを撫でたのは本当だ。ほんの出来心で。テツヤが流し目で見て来たり、腰を振ったり、お腹をチラ見せしたりするからだ。

「俺、アドレナリンが出まくってて……どうせ眠れないよ……」

キスの合間にそう言うと、

「あ……うん、俺も……」

テツヤも言った。

「シャワー浴びる?汗かいたし……」

「うん、そうだね……」

そう言い合ったのに、キスが止まらない。キスをしながらお互いの服を脱がす。シャワーは……一回燃え上ってからになりそうだ。


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