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Another Life もう1つの人生  作者: くろべぇ
第三章 連合国編
91/464

幼馴染

 







 アミリア達がレイクシティに到着した頃、左近は今日のスケジュールを、クロエから聞いていた。

「本日は、書類仕事と、昼よりロックツリー商会の、会頭との会談が入っております」


「ロビンが?」


「何でも、鉱物のサンプルを、ある程度、用意したとか。

 それと、ペスパードのニーナ陛下から、苦情が入っております」


「あの痴女……じゃなかった。女王陛下から?」


「はい。「これ以上怪我人を私の元に連れて来ると、次から金を取るよ」との事です」


「……そんなに、運び込まれているのか?」

 誰が原因か、何となく分かるのが嫌だ。


「パンドラの姫様が5回、三好准将が3回、フィッシャー少尉が同じく3回、ヘインズ中尉、佐久間少佐、レイズ中尉が、1回づつ運び込まれておりまして、全て柳生少佐に、挑んで返り討ちにあっております」


 おい、そんなにかよ。

 そんなにも、毎回運び込まれていたら、まじであの痴女もキレるわな。

「分かった、今度俺の方から謝罪と、何か土産を持っていこう……何が良いだろう?」


「……お酒とか?」


 やっぱり、あっち系以外なら……そうだ、妖怪干物ババアから貰った、惚れ薬がまだ残っている……いや、もう1つの、あの欲情する薬を貰おう。

 それで、俺の分の薬も貰って……そう言えば、妊娠しやすくなる薬って、有るのだろうか?

 ダークエルフは、子供が出来にくいって話だし、あったら改善されるかもしれないな。

 妖怪干物ババアは、けっこう薬にも詳しそうだし、今度聞いてみよう。

「まぁ、こっちで調べてみるよ。

 話は変わるけど、今度冒険者をやってみないか?」


 左近がそう言うとクロエは、目に涙を浮かべて言ったのであった。

「ク、クビなんですか?私、何にかお気に障る事をしました?」


 おいおい、おもいっきり勘違いしているな。

「違うって、冒険者ギルドとか出来たからさ、俺も冒険者やってみたいなって思ったんだよ。

 もちろんクロエは、一緒に冒険者するだろ?」


 その左近の言葉を聞いてクロエは、ホッと胸を撫で下ろし言ったのであった。

「なんだぁ。正直、焦りましたよ。

 もちろん、御一緒しますよ……あ、でも軍人が、それも閣下が冒険者って、まずいんじゃ無いですか?」


「だよなぁ……ロンデリックに言って、何か正体が分からない服装を作って貰って、身分を隠して行かないとな。

 それと顔は、甲冑の面頬で目から下を隠しておけば、大丈夫だろう」


「それですね、本当に強い魔物は、ダンジョンに多いですし、外ではある程度の防具さえあれば、何とかなるでしょう。

 他に誘うのは、あのピケ山での、メンバーですか?」


「そうだな、あのメンバーなら、一番バランスが良いかも知れんな。

 何だクロエ、問題点があるのか?」


「そうですね、あのメンバーで、欠けているのは、治癒士(ヒーラー)じゃないでしょうか。

 医師の者でも良いですが、連合軍の衛生兵の様な存在です。

 1人心当たりがあるので、誘ってみますか?」


 なるほど、クロエの言う事は、一理ある。

「クロエの知り合いに、そんな人がいるのか?是非とも誘おう」


「知り合いって言うか、閣下も知っていますよ。ヴィオラ伍長です」


 嘘……あのギャルが?

「え?だってあいつは、サキュバスだろ?どう見ても、攻撃魔法が得意だと思うのだが」


「それがですね、本人曰く。

「このギャップが、大切なのよ~」って言ってましたし。

 それに、伍長は治癒士(ヒーラー)でもありながら、魔導剣士でもある、優秀な兵士です」


 ぬかった、まさかこんな所に、優秀な治癒士(ヒーラー)が居たなんて。

「んじゃ最後は、ヴィオラにしよう……って女性ばかりの様な…」


「良いんじゃ無いですか、閣下らしくて」

 そう言ったクロエは、左近に笑顔で言ったのであった。


 クロエよ、それは誉めているのか?

「とりあえず、二人を誘うか」


「そうですね」

 そう言って二人が隣の部屋に行くと、ちょうど蘭が、紅茶を注いでいる所であった。


「あ、閣下。閣下も紅茶をいれましょうか?」


「ああ、頼むよ。それと二人に、お願いがあるんだ。

 今度、俺と一緒に、冒険者をやらないか?ギルドの依頼や、ダンジョン攻略とかやってさ。

 今、了承してくれているのは、クロエだけだ。

 誘う予定のメンバーは、二人の他に、アイリス、ラナ、セシル、セシリー、クレアだな」


「ああ、あのピケ山のダンジョンのメンバーですね。

 あのメンバーなら、ほぼ最強なんじゃないでしょうか。私はいつでも大丈夫ですよ」

 そう言った蘭と対照的に、ヴィオラは少し悩んで左近に言ったのであった。


「奥方様達は、分かりますが、クレアって誰です?」


「そうか、ヴィオラは知らなかったな。

 クレア・アストール上等兵。ナッソーで輸送を担当している、運搬屋(ポーター)の8歳の人狼(ワーウルフ)の女の子だ」


 左近がそう言うと、ヴィオラはガックリと、項垂れて言ったのである。

「女ばっかりかぁ……あ、でも色々な所に行けて、楽しいかも。

 でも、仕事しながら、冒険者をやるんですか?」


「そうだな、仕事もあるから、毎週金曜日の夜から出発して、日曜日の夜に帰ってくるってパターンだな。

 それと、各自の生活もあるから、その時に行ける者だけで、儲けはその行ったメンバーで、平等に分配するって感じかな」

 まぁこうすれば、気楽な副業って感じで、観光しながら、冒険者ができるだろう。


「それなら、参加しますよ」

 そう言ってヴィオラは、左近にブイサインを出して、了承したのであった。


 これで後は、アイリス達だけだな。

 そう左近が思っていると、誰かが扉をノックしたのであった。


「はい、はぁい」

 そう言って蘭が扉を開けると、そこにはアミリア達がいたのである。


「お、アミリアに義父上……誰です、その子は?

 リンに……そいつも、誰?」

 そう言った左近に、アミリアは少々複雑な顔付きで、言ったのであった。


「閣下、ちょっと報告があります」


 何だ?

 でも、あのアミリアの顔は、何かあったな。

「分かった、奥で話を聞こう、クロエ、お前もだ。

 蘭、紅茶美味しかったよ、ありがとう」

 そう言った左近は、ティーカップをテーブルに置いて、執務室に行ったのであった。



 ――――――――――――――――――



「それで報告とは、何だ?

 それと、そこのお前、猿轡をしていても、さっきから、うるさい。

 アミリア、もうコイツを殺して良いか?」

 そう縛られている男を、指差して言った左近に、アミリアは言ったのであった。


「せめて情報を聞き出すまでは、生かしておきましょうよ」


「それなら、頭だけ残っていたら大丈夫だ。

 あ、でもそのまま、パンドラやママに渡して、拷問してから殺しても良いな」

 そう笑顔で言った、左近の言葉を聞いた男は、小刻みに震えて、黙ったのであった。


「お、ようやく黙ったか。

 ではアミリア、その報告を聞こうか?」


 左近がそう言うと、アミリアはテトを前に出して、言ったのであった。

「閣下、先ずはこの子の話を、聞いてくれ。

 テト、辛いだろうが、私達に話した様に言えば良いから。この人が、お前達を助けてくれる」


 優しくアミリアは、テトに言うと、テトは頷き緊張の為か、震える身体を我慢し、頭を下げて左近に、言ったのであった。

「は、初めまして。僕の名前は、テトと言います」


 緊張しまくりだな。

「初めまして、俺は東部連合軍元帥、佐倉 権大納言 清興だ。

 テト、緊張しなくて良い、ゆっくりと正確に、テト自身の言葉で良いから、何があったのか、教えてくれ」


「は、はい……」


 そう言ったテトは、深呼吸を一回して、話し出したのであった。

「僕は、親がいない孤児で、シクサ村の、北方教会の孤児院で育ちました。

 ある日僕は、そこの司祭様から、お前は貴族の養子になるんだと言われて、馬車に乗せられました。

 でも、到着したのは鉱山で、そこでは僕と同じぐらいの子供達が、働かされていました。

 大人からは、逃げたら残った者を全員殺す、何処までも追い掛けて、捕まえて殺す。

 保安隊は、俺達の仲間だから、助けを求めても、無駄だと言われ、無理矢理働かされてました。

 でもある日、ベリンダって女の子が、新しく連れてこられて、その子が言ってました。

 この帝国は、ザルツ王国って所と、何年も戦争をやっているって。

 だから僕達は、一斉に逃げてザルツ王国に行こうと考えました、そこなら帝国と仲が悪いから、追っ手は来ないと思いましたので。

 でも、途中で何人か捕まり、僕は他の人達とはぐれて……森の中で倒れた所を、お姉さんとおじさんに……ヒッ!」

 テトは、話の途中で、左近が尋常じゃ無い殺気を、放っているのに気が付き、怯えだしたのであった。


「大丈夫だテト。閣下はな、お前に怒っているんじゃ無くて、その鉱山の大人と北方教会に、怒っているんだ」

 そう言ったアミリアは、テトを優しく抱き締めて言ったのであった。


「アミリア、もしかしてその男が?」


「そ、追ってきたガストン商会の奴。後3人いたんだが、リンが殺しちまった」


 コイツは、俺の一番許せない奴だな。

「リン、その猿轡を取ってやれ」


 左近のその命令で、リンは男の猿轡を取ると、男は早速言い訳を話し出したのである。

「ま、待ってくれ!俺達は、そんな事をしていない。

 全てその子供の嘘だ!誰かに頼まれて、俺達をはめようとしているんだ。

 それに、こんな事をして、ガストン商会が、黙っていると思うのか?」


 左近はその言葉を聞いて、立ち上がると、テトの頭を撫でてアミリアに、言ったのであった。

「アミリア、このテトを連れて、ルゴーニュのドクの所で、身体を診察してやってくれ。

 ここから先は、子供には刺激が強すぎる」

 そう言った左近の顔は、戦場でも見なかった、初めて見る悪魔の様な,残虐な顔を、していたのである。


「ああ、分かった。ほら、テト行くぞ」

 そう言ったアミリアが、テトを連れて執務室を出た瞬間、跪いている男を左近は、ぶん殴ったのであった。


「おい、三下よ、一体誰に脅しをかけたと思っている?

 俺は、前の帝国とルタイ皇国の戦で、平気で虐殺をやった、前の左近衛大将だぞ。

 ガストン商会?上等だ、何なら今すぐガストン商会のある町ごと、皆殺しにしてやろうか?」


「そ、そんな事をしたら、戦争に……」

「戦争に?そんな事で戦争になるのなら、いつでも相手してやる……何なら、大陸全土を相手にしてもな。

 さてと、お前の言葉で、やってもやってなくても、ガストン商会の者の皆殺しは、確定した訳だが、問題はお前の処遇だ。

 普通に殺されるのと、拷問され気が狂って死ぬのと、どっちが良い?」


「そんな、帝国の法律で、拷問なんて認められては、いないはずだ!」


「残念だな、ここは帝国では無い……ルタイ皇国だ、喧嘩を売る相手を間違えたな。

 クロエ、パンドラとママ、そして小次郎とアデルを呼んできてくれ」


「分かりましたが、ここで殺すのは、止めて下さいよ。絨毯が汚れて、掃除が大変なんで」

 そう言いながら、クロエは出ていき、男は明らかに、血の気が引いていたのであった。


 すると左近は男の前に座ると、男を睨み付けて、言ったのであった。

「まぁ、脳に直接聞く方が、早いかも知れんが、最後に1度だけ聞いてやる。

 正直に話せば、考えてやろう。鉱山で子供を働かせていたのか?」


「……そうです」

 男はガックリと項垂れて、言ったのであった。


「ガストン商会の、他の鉱山も同じか?」


「……分かりません」


「では、お前はその鉱山で、何をやっていた?何人の子供が働いていた?捕まった子供はどうした?詳しく話せ」


「私は、ただの見張りでさぁ……子供は、何人か分かりませんし、捕まった子供も、どうなったのか、分かりません。

 私達は、まだ子供を捕まえて無かったから、こうして森の中を探してたんでさぁ」

 そう言った男は、悲痛な叫びで言ったのであった。


 本当かな?まぁママが来たら分かる事だし、どっちにしても殺すから、良いんだけどね。

 そう思った左近は、椅子にドカッと座り、リンに男に再び猿轡をさせて、全員が来るのを待っていたのであった。



 ―――――――――




 2時間後、左近に呼ばれたパンドラとママ、そして小次郎とアデルが集まり、集まった者に左近は、鉱山の事を話したのであった。


 ふぅん、大佐はこの話で、ガストン商会を潰そうって狙いか。

 これでガストン商会が潰れれば、その空いた縄張りは、私達が自由に出来る……考えたね、大佐。

 そう思ったママは、エリアスを見つめると、エリアスは目をそらしたのであった。


 何だ?何かあるのか?

 まぁ良いさね、これで堂々と左近を使って、ガストン商会を潰せるし、大義名分もこちらにある。

 ガストン商会の縄張りは、奪えるだけ、奪ってやるよ。

 そう思っているママに、左近が話し掛けてきたのである。

「まぁそんな訳で、ママは、この男の記憶を調べてくれないか?」


「良いけど……条件がある、ガストン商会の縄張りは、ハンザ商会に譲ってくれないか?」


「許可しよう。ガストン商会の所より、ハンザ商会の方が、そこまで酷い事をしないからな」


「ありがとうよ」

 そう言ったママは、猿轡をされて、唸っている男のうなじに、針を刺すと、そこから魔糸を入れて、記憶を探ったのであった。


 当初、平然としていたママであったが、次第に眉間にしわが出来て、男に虫を見るような、蔑む視線を向けるように、なっていたのである。

 そして、口を開いた第一声が、憎しみのこもった声で、言ったのであった。

「コイツは、クズだな。

 コイツの仕事は、ラボック鉱山での子供の見張りだ。だが、コイツは毎晩、色々な女の子を犯し、男の子は殴って、日頃の鬱憤を晴らしていた様だ。

 そして、死んだら次の補充を申請し……そうか、北方教会が孤児院をやっているのは、この補充の為。言うなれば、一時保管と子供を集める窓口って所か。

 ラボック鉱山では、40人近く働いていた様だな。

 逃げた子供は、30人ほど捕まえて、犯して殺しているね……そうかい、ラボック村や、残りの鉱山近くの村の保安隊は、既に買収済みって事かい。

 中々に、エグい事もやっているよ。

 鉱山の女の子を使って、無理矢理売春をさせて、金も稼いでいる。で、13歳になると全員殺しているね」


 ママのその言葉を聞いた左近は、次第に鬼の形相になっていき、言ったのであった。

「ママ、その殺した死体は、どうしている?」


「森の中に、棄ててくる様だね。まぁ魔物の餌にでも、するんだろう」


「コイツは本当にクズだな。リン、城の地下牢にコイツを入れておけ、コープス博士にでも言って、人体実験の道具にすれば良いし、博士が拒否したら、拷問でもして数年生かして、魔物の餌にでも、すれば良いだろう」

 左近は冷たい目でそう言うと、男は猿轡をされながら、何かを叫んでいたのであった。


 コイツは、まだ反省していない様だな。

 そう思った左近は、男のみぞおちを蹴りあげると、静かに怒りを押し殺して、男に言ったのである。

「お前達に殺された子供も、同じ事を思っていただろうよ。

 リン、早くこの男を連れて行け」

 左近に急かされたリンは、左近に一礼して、空間転移で移動していたのであった。



「さてと、事情は見ての通りだ、目標はガストン商会を潰す……いや、皆殺しだ。

 それも、徹底的に恐怖を叩き込んでの、皆殺しで、もちろん北方教会も例外では無い。」

 そう言った左近は、悪魔の様な表情で、言ったのであった。


「しかし、下手をすれば、北方連合(ノース・ユナイテッド)が黙っては、おりませんよ」

 エリアスがそう言うと左近は、言ったのであった。


「義父上、大丈夫ですよ。大義名分は我々にあり、この事を大々的に宣伝します。

 まぁ向こうは、デマだと言うでしょうが、その時はこちらも策を使って、奴等を人類の敵に仕立ててやり、経済をボロボロにして、生きるのも辛いほどに、してやりますよ」


 エリアスは、こういう時の左近が、一番恐ろしいと思っていた。

 本気になった左近は、本当に北方教会が人類、いや大陸全土の敵にする事も、簡単に出来そうだったからである。


「作戦を伝える前に、1つ皆に聞いておきたい事がある……パンドラと小次郎以外だな。

 この中で、北方教会を信仰している者は、いるか?正直に言って欲しい。

 決して罰したりはしないが、今回の作戦からは、離れてもらう。

 ママは、どうだ?」


「ハッキリ言って、私は北方教会には、個人的に恨みがある。

 北方教会を潰せるなら、金を支払ってでもやってやるよ」

 そう言ったママの目は、憎しみの炎が燃えていたのであった。


 ママは、最初から名字を持っていた……もしかして、その事に関係があるのかな?

「分かった、信じよう。義父上はどうですか?」


「私が信仰しているのは、ギリシス教だ。アミリアもそうだが、帝国の軍人は、ほとんどがギリシス教だな」


「では、帝国の軍人は、大丈夫と言う事ですね。アデルはどうだ?」


「神に祈って、何かが変わる等と言う事はありません。よって、神に頼るのは、愚かな者のする事です」


 あ、コイツは無宗教ってやつか。アデルらしいっちゃ、らしいな。

 そう思いながら、左近は執務室にある、大きな帝国領の地図を、テーブルに広げたのであった。

「義父上、北方教会の孤児院が在る、シクサ村の位置と、ガストン商会の、残りの鉱山の場所は、分かりますか?」


「シクサ村は、帝都ナリヤの北に1日の距離の、ここ。

 そして、私の知っている限り、ガストン商会の残りの鉱山は3つ。全て帝国の西側に集中しており、ここと、ここ。そしてここです」


 ラボック鉱山と、一直線に並んで鉱山が在る……って事は、鉱脈が続いているって事か。

 新しく鉱山を開発するにしても、このライン上に在る可能性が高い。

「小次郎。

 風間衆は、北方教会と鉱山の調査と、この線上に、他に鉱山が無いかを調べてくれ」


「承知した」


「アデル、お前はガストン商会のヘラルド・ガストンを、調べてくれ」


「承知」


「パンドラ、ジャックにヒメネスを見張らせろ、あいつは勘が良いから、気付くかもしれん」


「了解しましたが、もしも気付いた場合は、どうしますか?」

 そう言ったパンドラは、まるでエリアスの、心の中が分かるように、言ったのである。

 エリアスは、ここで左近は、ヒメネスの命は、助けてくれると、思っていたのだが、左近の答えは違ったのであった。


「計画の妨げに、なるようなら……消せ」


「なっ!」

 思わず言ったエリアスを左近は、しばらく見つめて言った。


「それと最後に、言っておく。

 今回の件は、義父上とアミリアと三好准将には、外れてもらう」


「何故ですか!」


「今回の件は、私情で動かれましたら、失敗の可能性があります。

 もしも、失敗すれば、子供達も助かりませんし、ガストン商会の会頭も、取り逃がす事になるでしょう。

 しかしその事は、義父上ならば、お分かりだと思いますが……」


「……クッ!」

 左近の言葉にエリアスは、何も反論出来ずにいたのである。


「どうやら、分かって頂けた様ですね。

 では、これより極秘で、ガストン商会と北方教会の調査を行う、期限は1ヶ月。

 1ヶ月以内に、全ての調査を終えて、報告しろ。

 俺は、それまでに、皇帝陛下と弾正府に、根回しをしておく。

 各自は作戦決行まで、担当の者を逃がすな、報告は通信兵を使い、秘書の蘭に連絡を入れろ」

 左近がそう言うと皆が頷き、エリアスも執務室から出て行こうとすると、左近に呼び止められたのであった。


「義父上、分かってるとは思いますが、ヒメネス1人の命と、大勢の子供の命、そして帝国に蔓延る膿を取り除く事の、どちらが大切か、考えて下さい」


「……理解してます」

 そう言ったエリアスは、唇を噛み締め、左近の執務室を後にしたのであった。



 ―――――――――



 閣下、貴方の言いたい事は、分かっている。

 でも俺は、両方助けたいんだよ……。

 そう思いながら、部屋を出たエリアスの前に、アミリアが立っていたのであった。

「エリス、どうなった?」


 そのアミリアの問いにエリアスは、拳を握り締めて言ったのであった。

「私とお前、それと准将は、この件から外されたよ」


「なんだよそれ!何で私達が外れなきゃ、ならないんだよ」


「閣下は、ヒメネスの命と、子供達の命、それに帝国に蔓延る膿の除去を、天秤にかけられた。

 俺だって、納得はしていないさ……だから、今からジャックに頼みに行くぞ」


「そんな事を、私が見逃すと思っているのか?」

 そう言って柱の陰から出てきたのは、ママであった。


「ママ……」

「レイヴンのソニア……」


 二人の前に出てきたママは、葉巻に火をつけると、その殺気を隠さずに言った。

「今回の件は、私の個人的な事も絡んでいるんだ、邪魔はさせないよ」


 個人的な事も?ガストン商会の縄張りの事か?

 しかし、それだけで、こんなにも殺気を出すか?もっと、憎しみも入っている様な……

 エリアスがそう思っていると、アミリアが前に出て、ママに言ったのである。

「ヴィシュク少佐、私達の階級は大佐だ、上官に向かって意見するとは何事だ!」


 ダメだアミリー、ママにはその言い方は、逆効果だ。

 まさにエリアスが思っている様に、ママの眼光が鋭くなり、アミリアに言ったのである。

「そんな事は、レイヴンの私には、関係無いね、私の上官は、姫さんだけだ。

 それにあんた達は、この件から外されたんじゃ無かった?

 命令違反は、どっちなんだろうね……まぁ良いさ、これは警告だ。もしも、この作戦の邪魔をする様なら……殺すよ」

 そう言ったママの目は、単なる脅しでは無く、本気だと言う事を物語っていたのであった。


 その殺気の塊の様な眼光に、二人は言葉を失って、何も言えずにいたのである。

「では、警告だけはしましたよ…大佐殿」

 そう言ったママは、振り返りそのまま、去って行ったのであった。



「何だよ、あの野郎は。

 レイヴンの中でも、あの女だけは、どうも好かん。何で閣下もあの女を、自由にしてるのかね。

 閣下の、昔からの知り合いの様だが、何者なんだよ」


 そう言ったアミリアに、エリアスがポツリと言ったのである。

「ソニア・ヴィシュク少佐、ナッソーの4人の権力者で運営している、4頭会のメンバーでハンザ商会の会長だ」


「それが、何でレイヴンになっているんだよ。

 それにあの目は、レイヴン独特の、血に餓えた狼の様な目だ……そんな商会の会長が、する様な目じゃ無い」


「ナッソーのタックス・ヘブンのオヤジさんに、前に聞いた事がある。

 僅か10歳の頃から、傭兵で各地の戦場にいて、伝説になった者らしいな……魔糸使いのソニア、踊る狂人のウォルター、氷の仮面のハンザ、傭兵指揮官トッド。

 この四人で、各地の戦場に傭兵で行って、勝利に導いたそうだが」


「おい、そのトッドってまさか……」


「ああ、前の聖龍騎士団の副団長のトッドだよ。

 でもトッドは、あの時の戦争で、ヴィシュク少佐に殺された様だがな」


「マジかよ……何で、仲間だった者を殺せるんだよ」

 そう言ったアミリアは、その声に怒りを込めて言ったのであった。


「それが傭兵って、生き物ですよ」

 その声を聞いた二人が振り返ると、そこにはハンザが、アリエルを背負って立っていたのであった。


「ハンザ……」


「何だ、エリスの知り合いか?」


 そうか、アミリーはハンザに会った事は、無かったのか。

「ハンザ、ハンザ商会の会頭だよ」


「おい、ハンザってもしかして……」


「どうもすみません、ウチの会長がご迷惑をかけた様で。

 お察しの通り、私は氷の仮面のハンザと、昔は呼ばれておりました。

 まぁどんな奴でも、命乞いしている者も、平等に殺していたんで、そんな二つ名を付けられたんですがね」


「何で、ハンザ商会の会頭がこんな所に?」


「営業ですよ、営業。

 たまには、元帥閣下に顔見せしておかないと、他の商人に、仕事を持っていかれるかも、知れませんからね。

 ええっと、こちらのお美しい御方は、魔女騎士団(ナイト・ウィッチーズ)の部隊章に大佐の階級章。

 そうですか、貴女が雷帝と言われた、アミリア・マクレガー大佐でありましたか。

 私は、ハンザ商会の会頭、ハンザと申します。この後ろの子は、私の養女のアリエルでございます、以後お見知りおきを」

 そう言ったハンザは、特徴的なシルクハットを脱いで、アミリアにお辞儀したのであった。


 そうだ、ハンザなら、何でママがこの作戦に拘るのか、知っているかもしれんな。

「そうだハンザ、何でママがガストン商会と、北方教会に怨みを持っているのか、知っているか?」


「……知っていますが、この話に幾ら出しますか?」


「おい、金を取るの……」

「200シリングでどうだ?」


「エリス!」

 思わずそう言ったアミリアにエリアスは、そっと手を出して制すると、ハンザはしばらく考えて、言ったのであった。


「それで良いでしょう。こちらからの条件もありますが、その条件を聞いて頂けるなら良いでしょう。

 何処か、人の居ない所は在りますか?」


「こっちだ、付いてこい」

 そう言ったエリアスは、不満そうなアミリアとハンザを連れて、聖導騎士団の詰所に行ったのであった。



 ―――――――――



「中々に、良い部屋ですな」

 そう言ったハンザは、聖導騎士団詰所のソファーにアリエルを寝かせて、言ったのであった。


「いや、まだ1人しかいないので、ただ広いだけだよ。

 所でまずは、その条件と言うのを聞こうか?」

 そう言ったエリアスは、団長の椅子に座ると言った。


「ああ、条件ですね。

 この話は、他言無用でお願いしたいのは、もちろんの事ですが、この先ママの邪魔は、止めて頂きたい。

 もしもそれに違反した場合は、それ相応の報いは受けてもらいますがね。

 どうします、止めときます?」


 ママの邪魔は、止めるか……これって、ヒースを…あれ?ちょっと待て、ママの目的は、今回の作戦の成功。

 何で俺は、今回の作戦を潰す事しか、考えて無かったんだ?

 ヒースを助けて、作戦を成功させる。これで良いじゃないか。

「分かった」

「エリス!」


「アミリー、大丈夫だ。両方成功させれば良いんだよ」


「どうやら、決まった様ですな」

 そう言ったハンザは、ニヤリと笑みを浮かべて言ったのであった。


「さてと、何から話せば良いか……まずはママの生まれから、話しましょうか。

 実はママは、デュラン王朝のヴィシュク伯爵家、御令嬢だったんでさぁ」


「だった?」


「ええ。

 知っての通り、デュラン王朝は、北方連合(ノース・ユナイテッド)の1つの国でして、その中でもヴィシュク伯爵家は、王朝内でも大きな領土を持っていました。

 そのママの父親である伯爵が、1人のミーア・キャットに惚れて結婚し、二人の間に生まれたのがママなんですよ」


「おい、それってかなり、大問題なんじゃねえの?」


「マクレガー大佐の言う通り、北方教会の教えでは、あってはならない事です。

 ママが4歳の時、その事がバレて、司祭に率いられた民衆に、悪魔の使いとして、伯爵家は焼き討ちにあい、背中に重傷を負いながら、ママだけが何とか生き残ったんでさぁ。

 何とかペスパードに逃げたママは、そこでダークエルフの夫婦に拾われ、背中を治療してもらったんですが、背中の傷跡は、そのままにしたそうで。

 今から思えば、幼いながらに、北方教会に復讐を誓ったんでしょう。

 ですがペスパードは、ダークエルフの国。

 ペスパード王朝は子供の間は、国に住んでも問題は無いのですが、大きくなると追い出されるそうで。

 特にヴィシュク家の強大な魔力を受け継ぎ、ミーア・キャット独特の強靭な肉体を持ったママは、恐怖の対象だった様ですね。

 10歳になると、ママはペスパードを出て、ケイングストンに行き、当時傭兵だったトッドさんに出会って、傭兵になったんですよ。

 元々が才能があったママに、ペスパードで魔力の使い方を学んだママは、独自の魔糸って武器を作り出し、戦場では有名になったんですが、トッドさんが帝国兵になるのを切っ掛けに、俺達は傭兵を引退したんでさぁ。

 そこからナッソーで、元傭兵達を集めて、マフィアの真似事をしていたんですが、最近は黒騎士団(ブラック・ナイツ)にいるのが楽しい様で。

 今回はどうやら、その北方教会が絡んでいるので、邪魔はして欲しくは無いんでしょう。

 お二人が邪魔をすると言う事は、自分の両親の敵討ちを、邪魔をする事になりますのでね」


 ハンザその話を聞いた二人は、何も言えずにいた。

 幼い頃に、両親を殺されたママの心の傷は、相当深い事だろう。

 そう言った意味では、この作戦は、ママの憎む北方教会を攻撃する事になり、まさに悲願とも言えるべき作戦である。

 それを失敗させる可能性がある、二人が取ろうとしている行動は、ママには到底許せる行動では、無かったのであった。

 だが、このエリアスとアミリアは、それで幼馴染のヒメネスを諦めるほど、往生際が良くなかった。


 二人は、ハンザに金を渡して詰所を出ると、ジャックの店である、ラビット・ショットに向かったのであった。


 ただ、このまま店に行けば、ジャックの元に向かった、パンドラからの使者に、出会うかも知れない。

 二人は、向かいの路地に隠れて、誰か出てくるのを待っていると、暫くして出てきたのは、ママであった。


 使者は、ママだったのか。

 そう思いながらエリアスとアミリアは、ママの姿が見えなくなると、店に向かったのであった。


「いらっしゃいませ」

 そう言って二人を迎え入れたのは、元スカーフェイスのメリッサであった。


 誰もいない静かな店内で、二人はカウンターに座ると、エリアスはメリッサに言ったのであった。

「すまんが、ジャックはいるか?」


「あ、マスターのお知り合いですか、少々お待ち下さいね」

 そう言ったメリッサが奥に行くと、暫くしてジャックが怠そうに、出てきたのであった。


「これはノイマン大佐、お久し振りですね。

 そちらの女性は、確かマクレガー大佐ですか。ケイングストン以来ですね。

 ……どうやら、客として来たのでは、無さそうですな」


「そうだ、ここにママが来ただろう?」


 そう言ったエリアスの言葉にジャックは、表情を1つも変えずに言ったのである。

「さぁ、なんの事ですかな?」


「ヒメネスの事を、ママに依頼されただろう……受けたのか?」


 そのエリアスの真剣な眼差しに、ジャックはポツリと言ったのであった。

「引き受けましたよ」


 やはり!

「では、お前に頼みたい事がある」


「ヒメネスを、殺すなでしょ?」


「ならば話は早い……」

「大佐、何か勘違いしてませんかね?私が命令されたのは、ヒメネスの見張りで、暗殺ではありません。

 それに、今は情報収集の段階です。この段階で誰かを暗殺すれば、気付かれます。

 まったく、アデルがいながら、そんな話になっているなんて、どうかしてますよ」


「では!」


「ええ勿論です、殺しは出来る限りやりませんよ」


「ありがとうジャック」


「すまない、本当に恩に着る」

 そう言ったエリアスとアミリアは、ジャックに頭を下げて、笑顔で出ていったのである。


 その一部始終を見ていたメリッサは、不安そうにジャックに言ったのであった。

「マスター、今の言葉は本当ですか?」


「本当さ……出来る限り、殺しはしないよ……出来る限りね。

 もしかしたら、事故でそのヒメネスが、死んじゃうかも知れないけど、あくまでも事故だからね」


 あ、マスター絶対に殺る気だ。

 そう思っていると、ジャックはメリッサに言ったのであった。

「メリッサ、後は頼む。

 俺のいない間に何かあれば、ソニアかクロエを頼れ」


 これは、ジャックがいない間に、武蔵守の配下の木工がやって来た時の事を、言っていたのであった。

 この頃、メリッサは何で自分がレイクシティにやって来たのかを、正直にジャックに話していたのである。

 勿論それは、ジャックとママに匿って貰う為だが、ジャックはメリッサの希望を、受け入れたのであった。


「少佐は分かりますけど、何でクロエさんですか?

 クロエさんって、確か秘書のはずですよね」


「アイツもレイヴンだ。鴉の斬り込み隊長クロエ・マイスナー少佐、それがアイツの二つ名だよ。

 まぁ本人は、女として見られないから、嫌がっているがね」

 そう言ったジャックは、珍しく笑顔で言ったのであった。


「あの人もレイヴン……ジャックさん、何でこんなにレイヴンの知り合いが多いの?」


 そのメリッサの言葉にジャックは、暫く考えて言ったのであった。

「メリッサ、お前にだけは言っておこう、俺もレイヴンだ。

 二つ名は黒き幻影……まったく誰が付けたんだか。

 とにかくだ、お前は最強のレイヴンに守って貰っているんだ、安心するが良い」


「あ、ありがとうございます。私、本当に心を入れ換えて、真面目に仕事を始めて良かったと思います」

 そう言ったメリッサは、ジャックに頭を下げて、心から感謝したのであった。


 まぁこれで、メリッサも我等の言う事はよく聞く、スパイになるだろう。

 そう思ったジャックは、メリッサの短い髪の頭を撫でたのであった。





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