シンプソン教頭、任侠語に落ちる
朝の国語の授業。
シンプソン教頭は、板書用のチョークを手に、いつも通りに教壇に立った。
「みなさん、今日は── "美しい日本語と、礼儀正しい言葉遣い"について学びます。」
子供たち、ピシッと背筋を伸ばす。
──でも。
「おうっス、ダンナ!!!」
「オレ、今日から敬語極めるッス!!」
「アニキィ、文字って読めんスかァァ!?(爆笑)」
どこかおかしい敬語が飛び交う教室。
しかも、ぜんぶ任侠ノリ。
シンプソン、笑顔を引きつらせながら黒板に向かう。
カリカリカリ。
【正しい挨拶】・おはようございます・こんにちは・ありがとうございます
──そこに。
後ろから、ちびっこの声。
「……おう、おつかれさまです、親分……!!」
シンプソン、手が震えた。
「親分じゃない、先生だァァァ!!!」
声が裏返る。
でも、どこか脳裏で、「……まあ、親分って呼ばれるのも、悪くは……」なんて甘い囁きが聞こえてきてしまう。
ぐらっ。
危ない。本気で危ない。
シンプソン、慌てて首をぶんぶん振った。
「違う!!!オレは教師だ!! 任侠街道を歩くわけにはいかん!!!」
自己暗示するが、教室の空気はもう、
ちっこい極道事務所。
子供たち、無邪気な顔で──
「先生、"杯を交わす"ってどんな字ィ?!」
「"シノギ"ってどう書くのー!?」
「"一家"って漢字、かっけぇ!!」
──学ぶ方向、完全に間違っている。
シンプソン、チョークを落としそうになりながら、ふらふらと座った。
「……神よ。」
「なぜ私は、 任侠学舎の教頭になってしまったのでしょうか。」
グレゴル校長、窓の外から見守りながらぼそりと呟いた。
「──もう、腹ァくくれや。」
満足そうに、にやり。
そしてアルは、一番後ろの席でノートにこう書き記していた。
【今日のまとめ】「言葉は、心を映す鏡」「でも、たまには映らなくてもいいや。たのしいし。」
──今日も、フォルティナは平和だった。
たぶん。




