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第二十四話

いつも読んでくれている方も新しく開いてくれた方もありがとうございます!

正直かなり支えになっています!

 賛成を得られることはわかっていたと言わんばかりに満足げに頷くと、ゆっくりとアリアの方へ視線を向けた。


「じゃあ、アリア」


 ロブは顔こそまだ笑ったままだが、その声色は先ほどまでの軽さとは違っていた。


「すまねぇが。あの実があった場所まで、案内できるよな?」


 ロブはにやりと笑った。

 そこに申し訳ないという要素はない。

 アリアに告げられたのは、有無を言わさない命令だった。


「え…?アリアが連れていくのかい?」


 ナタリアは道中のことは考えていなかった様子で男の言葉に戸惑っている。


「そりゃあ、そうだろ?俺には場所がわかんねぇからなぁ」


 アリアに対する接し方をしょうがない、と納得してはいるが、森は絶対に安全な場所ではない。

 危険な動物や魔獣だって現れる。


 先日はナタリアの知らない間に森に行くように言われていたアリア。

 本音を言えば出来るだけ危ないことはさせたくなかった。


「それに1人じゃ持ちきれないくらいあるかも知れねぇだろ?そうなったらアリアがいる方が助かるしよ」


 ロブの言葉には棘はない。

 しかしナタリアの脚では荷物を運ぶ際に助けにはなれない事実にロブに対して反対の言葉を飲み込む。


「…危険は、ないようにしておくれよ」


 せめて、そう声を掛けるしかなかった。

 わかってるぜ、と男は軽い調子で返事をする。


 そんなやり取りの一方でアリアはどうしよう、と焦っていた。

 ロブが案内するように言っているのはリリィの実を採った場所のこと。

 それはわかるが、肝心の場所については全く把握していなかった。


 家から森に入った方角はまだ覚えている。

 その先はロブに言われた通りにただ真っ直ぐ歩いて行っただけだ。

 そして本当に偶々、リリィの実の群生地に辿り着くことが出来ただけ。

 ロブの言うように案内なんて到底できるわけがないのだ。


(…場所なんて、わからない…もし見つからなかったら…)


 椅子に座っている男は、もうアリアに案内をさせる気でいるようだ。

 アリアには断ることも場所がわからないとも言えない。

 そんなことを言ったらどうなるかなんて想像したくなかった。


「よし、アリア。今から森に行くぞ」


 男の言葉に、少し間を空けるように重々しく頷くしかないアリア。

 少女の内心の焦りは誰にも届かなかった。


「覚えてるよな?」


 何が、とは言わないその一言が更にアリアを追い詰める。

 最早、上手く辿り着けるように祈るしかなかった。

 ただひたすらに成功することを考えながら。


―――――――――――――


 ロブの気が急いていたため、すぐに出発することになった。

 アリアも急いで、森に行くための準備をした。

 とは言っても大した装備は持っていないため、身につけたのは手袋と雪靴程度で時間は掛からなかった。

 それよりもアリアが戻ってきたと思ったグリモアを落ち着かせる方に時間を取られていた。


 何とか宥めて、倉庫から後にすると家の前でロブとナタリアが話をしていた。


「準備出来たみてぇだな」


 ロブはアリアに気がつくと手に持ったリュックを一つ差し出してきた。

 男もまた、自分用のリュックと魔獣などを退けるための弓や手斧を装備している。


 アリアはロブに近寄って、リュックを受け取る。

 横からナタリアが何かの包みを渡してくれた。

 首を傾げながらも、包みを手に取るアリア。


「…朝ごはん……後で食べるんだよ」


 多くは喋らないナタリア。

 まだ温かい包みは食べる頃には冷めてしまうに違いないが、その気持ちだけでずっと温かくなった気がした。

 アリアは強く頷くと包みを大切にリュックにしまった。


「じゃあ、行ってくるぞ」


 2人のやり取りを横目で見ていたロブは、早くしろとアリアを急かすように肩を叩いた。

 肩を跳ねさせて、ぎこちなく頷くとアリアは歩き出した。

 後ろを男が呑気に着いてきている。

 その顔は早くも大金が手に入った後のことを考えているようだった。


 程なくして、あの日の森の入り口に到達した。

 アリアが振り返るとロブは頷いた。


(かみさま…お願いします…)


 辿り着けますように。

 そう願い、祈るばかりのアリアは森への第一歩を踏んだ。


―――――――――――――


 あの日のロブの指示であった、まっすぐ進むを守りながら進む。

 積もっていた雪は溶け始めていて、所々、地面が顔を覗かせている。


 歩き易くて助かったが、足跡が残らないため、自分の歩んだ道がまっすぐのまま保てているかの補償が出来ずに焦る。

 それでも何とか見覚えがあるような道を選んでいく。


「おい、アリア!まだかよ!」


 2時間ほど進んだが、まだリリィの実の群生地に辿り着いてはいなかった。

 ついには痺れを切らし始めたロブがアリアに当たる。


「…まさか場所がわかってねぇなんて、言わねぇだろうな?」


 ロブの言葉に汗が吹き出したアリア。


 道は確かに把握していなかった。

 しかし、確証はないが、歩いているうちにこの道で正しいと肌で感じていた。

 風が吹き抜ける音や森に響く音が似ていたからだ。

 もしかしたら近くに目的の場所があるかもしれない。


 そのことを身振り手振りでロブに伝えようとしたが、上手く伝わらず余計に苛々させるだけであった。


「おい!馬鹿にしてんのか!」


 男が険しい顔で手を伸ばしてくる。

 アリアは必死に逃れようと手から離れる。


 抵抗も虚しく腕を掴まれたその時、微かに甘い香りが抜けた気がした。

 アリアは急いで周囲を確認すると、木々の隙間にチラチラと赤い色が見え隠れしているのを発見した。

 振り返ってそれをロブに示した。


「あぁ?」


 ロブは腕を振り上げた姿勢で、手が示す方向を目を細めて見た。

 赤い色を脳が理解した時、男はアリアを放り投げるように腕を離すと我先にそちらに走っていった。


(よ、よかった……)


 突然解放されたことで、尻餅をついたアリア。

 お尻が濡れるのも気にせずに殴られなかったことと奇跡的に辿り着けたことに安堵していたのだった。

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