静夢のおねだり。
光「えっ!今??」
月「…うん、今。」
月「こーくんからしてもらったこと、無いもん。」
月「僕のことだけが好きだって、証明して!」
静夢はそっと目を閉じて、
薄くて紅い唇を差し出すように、僅かに顎を上げた。
嫉妬してキスのおねだり?!
俺、まだ夢見てる???
今まで緋美にそういう知識を遠ざけられてただけで、意外と興味あるのかな……
いやいや!!キスはただの愛情表現だろ!!
なんでいつもそっち方向にギアが入るんだよこの鬼童貞野郎!!
月「……まだ?」
光「あっ、ごめ……」
慌てて静夢の華奢な肩を両手で包むと、
静夢の体はピクッと小さく跳ねた。
ギュッと閉じられた瞼。
その長いまつ毛が、微かに震えている。
「はやくしてよ」
と急かしているかのように──
俺はもう一度大きく息を吐き
ゆっくりと目を閉じ
静夢の唇に
自分の唇を重ねた……
薄い唇から、静夢の体温が伝わると、
何故だか鼻の奥がツンとして
脳が音も立てずに蕩けていく……
ああ…幸せだなぁ……
!!!!!
光「ちょっ!静夢!!」
月「……あ。」
光「なんで今口開けたの?!」
月「ごめん、つい…」
月「食べたくなっちゃった!」
月「あははっ!」
光「えっ!食べっ…!?」
光「あっ、ビックリした…!血を、だよね…!」
光「噛むときは、心の準備させて〜」
月「ごめんごめん!僕って本当に食いしん坊だから〜」
ああーーー!!びっっっくりした!!
食欲が刺激されたんだって、すぐわかったけど
食べたくなったなんて言うし!
一瞬、舌入れようとしたのかと思った!!
静夢に限ってそんな可能性、ないないない!!
静夢に目を向けると、頬を林檎飴のように赤く染め、気まずそうに俯いている。
え?
もしかして可能性あったの……?
月「……二人とも心配してるだろうから、リビングに行こうか。」
光「そ、そうだね!」
月「その前に……」
静夢はギュッと俺を抱きしめた。
その瞬間、ドクン!と大きく跳ねた胸の音は、静夢にも聞こえてしまっただろうか。
俺は高鳴る胸を気にしながら
静夢の背中にそっと手を添え、
今朝こっそり頬擦りをした、そのサラサラの銀髪に──
まるで初めてのようなフリをして、顔を埋めた。
月「…ふふっ、僕の髪、好きなの?」
月「今朝も頬擦りしてたよね…?」
光「えっ、気付いてた??」
月「…うん」
光「ごめん、寝顔が可愛すぎて…」
光「髪だけじゃなくて、静夢の全部が好きだよ!」
月「こーくん、僕も……」
ドンドンドン!!
緋「しーちゃん!!先輩まだ起きない??起きてるんじゃないよね?!なんかしてないよね??」
母「ひーくん、そっとしておいてあげなさいよ…!」
痺れを切らした緋美の襲撃で、甘い雰囲気は一気にかき消された。
でも、これ以上は俺も心臓がもたないから、
緋美の襲撃が少しありがたくもあった。
俺たちは恋人になったばっかりだし、
ゆっくり進んでいこう…!




